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世界最大の家具量販店「IKEA」が挑むVRショールームとは - NGC2016特集 - VR Inside

世界最大の家具量販店「IKEA」が挑むVRショールームとは - NGC2016特集

        2016/09/01

スウェーデンの家具大手 IKEAは、お客様に自社製品を知ってもらい、理解してもらい、感じてもらうために様々な施策を行ってきました。

それは店舗にあるショールームであったり、3Dグラフィックであったり、スマホアプリであったりと多岐に渡ります。

そんなIKEAが、次に仕掛けた施策がVRです。

今回、「Nordic Game Conference」のセッションにて、IKEAコミュニケーションズ社の開発オペレーションITマネジャーのMartin Enthed氏がその詳細について、説明していましたのでご紹介いたします。

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IKEAコミュニケーションズ社のMartin Enthed氏

<講演内容摘録>

こんにちは、Martinです。

今日は恐らく皆さんにIKEAがどんな会社かを説明する必要はないでしょうね。

しかし、今日こちらにご来場いただいたのは我々の製品が理由ではなく、我々がVRをリリースしたからでしょう。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=jyQOImwVbcc&w=560&h=315]

CNBCによるIKEA VRに関する紹介動画

IKEAが初めて3D技術を使い始めたのは2005年ごろでした。

その時は家具を3D画像にしてウェブサイトに置いてお客様に見せるという目的でした。

しかし、家具の量が多く、一つの国に9,500件の商品があり、我々は43ヶ国で商売をしているので、3D画像の製作だけで2006年から2009年の3年間を費やしました。

それだけではなく、表面の柄模様と材料のデータベースも作りました。

それで同じ柄模様や同じ材料が違う家具でも同じように見えるようになります。

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柄模様と素材のデータベース構築

しかし、一言で3Dモデルを作ると言っても、詳細をどこまで作るかという問題もあります。

我々は4つの基準を持っています。1メートルの曲線をいくつかの点で結ぶと何点が必要かという考え方です。

一番精度が低いのは1メートルに10点を設けることです。一番精度が高いのは5,000点で、他に100点と1,000点の精度基準もあります。

今構築した3Dモデルの総数は31,000個を超えています。

そして、構築したモデルを用いてパンフレットやウェブサイトで使われる家具や商品が置かれている家の写真を再現しています。

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3Dモデルによる様々なキッチンの再現

3Dモデルデータベースを自由に使えるように、モデル設置ツールも開発し、2011年から使っています。

示しているように右に3Dモデルのデータベースがあり、左に3Dモデルを置ける3D空間があります。

置きたいモデルをモデルデータベースから引っ張れば置けますし、コピー、回転角度、上下位置の調整など直感的に操作できる結構使いやすいツールです。その後、静止状態だけではなく、重力と衝撃の要素も加えました。

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配置ツールと3Dモデルデータベース

我々はこの技術を使って「本物に近しい写真を作りたい」と考えています。家具や物品はもちろん、調理中のシチュー、白い煙いに至るまでリアルに再現し、よりお客様が部屋をイメージしやすいようにして行きたいと考えております。

 

次はリアルタイムシステムです。

ユーザーがウェブサイト経由で商品の3Dモデルが見れるようなシステムを開発していました。

ユーザーは好きな家具や商品を選び、好きな場所に並べて色々な角度から見ることができます。

いい感じにできたのですが、サーバーの構築と維持が必要で我々のユーザー数を全部カバーするのは難しいと判断したのでこのプロジェクトをやむを得ず中止しました。

そして、2014年に新たな技術「VR」が現れました。Oculusが生まれ、ソニーもこの分野に参入すると発表しました。

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2014年の新技術

これら大きな潮流の変化を肌で感じた我々はこの時にVRを始めると決心しました。正式運用の開始を2019~2020年に狙っています。

なかなか長い道のりと我々も理解しておりますが、時が来たらフルパワーで行けるように今から準備しなければいけないです。

私個人的なターニングポイントがありました。

それが2014年にアメリカのシアトルにあるこの部屋に入り、これを頭にかぶりました。

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ターニングポイント:VR初体験の部屋

これがすべてを変えました。

私は25年間もシミュレーションの世界で働きましたが、このデバイスは初めて私をスクリーンの向こう側にある世界へ連れて行ってくれました。

2時間のVR体験を終え「このデバイスを手に入れる世界最初の企業グループに入りませんか」と聞かれ、何も考えずに自然反射で「はい!」と言いました。

それで2015年の1月にVRデバイスが手に入りました。

我々はフランスの企業に手伝ってもらい、このアメリカのIKEAパンフレットにあるキッチンの写真をVRにしてみました。

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最初に構築したVRコンテンツとテスト

そして、IKEAのデザイン部門のトップマネジャーを誘い、テストしてもらいました。彼は電子レンジの内部を何か驚異的な景色があるようにずっと見ていました。

彼は自分の目を疑うほど、完全にVR世界に入り込んでいました。

テストが終わったら、彼は「このプロジェクトを始めてほしい」と言いました。私にとっては、完璧に成功した営業イベントです(笑)その後、正式なプロジェクトが始まりました。我々はそれを「IKEA VR」と呼んでいます。

我々が重視しているポイントは、VRだけではなく「真実性は足りているか」というところです。これが最も大事なことです。

他にもどうやってものを動かしたりするか、どうやって真実の世界を見るようにVRの世界を見れるか、VRにおいても、ものの寸法を正確的に表現するかというのも重要なポイントです。

我々が作ろうとしているものは実にすでに存在しています。

IKEAストアの2階に必ずあります。そう、ショールームです。ショールームは実に大昔から存在している擬似現実/VRです。我々はVRのショールームを作ろうとしています。ゲームじゃないですよ(笑)

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VRキッチンモデル

それで、いろんな企業の助けによって我々は去年の8月に静止状態のVRキッチンを作り、その後、ものを動かせる機能も加えました。我々が最も誇りに思ったのは大規模テストを行ったことです。

IKEAの社員1,000名を招集したテストです。一人15分の体験。

本来の予想は30%か15%くらい一部の人からいい反応をもらえるといいかなと思いましたが、まさかのほとんど誰も悪い反応を示さなかったです。

このような結果を受け、このコンテンツをリリースしていいかとチーム内で検討した上、GOが出たのでリリースに至りました。

更に驚いたところで、リリースしたら非常に大きいな反響がありました。

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スチームにリリースしたIKEA VRコンテンツ

リリース、3時間後にこのビデオを見つけました。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=IZKmY_j563A&w=560&h=315]

EurogamerによるIKEA VRコンテンツのテストビデオ

今後も社内のテスト、ユーザーインタビュー、外部からのフィードバックなどを踏まえ、3つのことに重心を置いてやっていきたいと思います。

 

またIKEAが考えるゲーマーではないユーザーに対し、最高なVR体験をもたらすには次の3つが必要だと思います。

一つ目は部屋ごとの活動スペースです。精度が高く、死角もないように作ることでその空間にいる体験がはるかによくなります。

二つ目はハンドコントロールです。今はハンドコントローラーにあるボタンの操作に慣れる時間が必要ですが、慣れたら問題はほぼないです。

最後はVRにあるものと現実世界にあるもののサイズが完全に一致していることです。

これらさえできればゲーマーではないユーザーにはかなり高いレベルのVR体験をもたらせると思いますので、この辺にはこだわって作っていく予定です。

 

話は変わりますが、我々のVRコンテンツをSteamに出したら、多くのユーザーから「ミートボールがほしい」との要望をもらいました。難しくないだろうと思い、追加しました(笑)

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ユーザーの要望に応え、VRコンテンツにミートボール追加

そうしたら、このYoutuberはミートボールを44分間も遊んでいました!

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=wEYn3DNkadg&w=560&h=315]

ユーザーによるミートボールプレイビデオ

まあ、VRでミートボールを投げると自動的に戻ってくるので拾わなくてもいいというメリットはありますね(笑)現実世界にもこんな機能がほしいです(笑)ところで、なぜIKEAはこのゲームのイベントで話をするのでしょうか?

それはIKEA VR開発に必要な要素はVRゲーム開発の要素の多くと一致しているからです。

我々にはあなたたちの知恵と経験が必要で、色々なことを共有していきたいし、してほしいです。それで色んなことを共有・共用できるので一緒にVRの発展に貢献できるのではないかと思いました。

これからはまたまたやらなければいけないことがたくさんあります。

 

一つは、やわらかいものです。

IKEAにやわらかいものを売らないでほしいと思うくらい難しい課題です。

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柔軟なもののシミュレーションは非常に困難

シミュレーションプログラムを組めばできなくないですが、材料の弾力係数など多くのデータが必要でシミュレーションのプログラムもそれほど簡単ではないです。

でもこれは避けて通れない課題でいつかは解決しなければいけないです。

もう一つはすべての商品のモデルをいかにVRに転換するかです。できれば転換を自動化したいですが、また模索中です。

更にに関して真実の世界とVRの世界でどう変わるかです。

最後は精密な寸法です。

寸法はIKEAにとって非常に重要です。

いかにVRの世界でも正確にサイズを表現するかは継続して取り組んでいきます。

最後のIKEAの創立者の言葉でこのVRセッションを締めたいと思います。

「やるべきことはまだたくさんある。輝かしい未来が待っている」

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IKEA VRチームと創立者の言葉

<以上講演内容摘録>

VRゲームはVRコンテンツ開発の主軸と思われてきましたが、IKEAは非ゲーム応用の代表例を作り出してくれました。

想像が膨らむ一方でVR今後の多様多種な応用展開にも期待したいと思います。

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KenCheng

Writer: Sidora Marketing株式会社CEO。台湾生まれ台湾育ちの台湾人。2006年に来日し、8年間に渡り、留学や就職を経験したのち、2014年にフィンランドに移り、2015年に創業。現在多国を跨ぐゲーム関係ビジネスを運営しながら、なかなか日本に入らない海外現地の最新情報をお届けします。