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北欧最大級のゲームカンファレンス(NGC 2016)でみたVRの現状と未来 - VR Inside

北欧最大級のゲームカンファレンス(NGC 2016)でみたVRの現状と未来

        2016/09/01

先日2016年5月18~20日に渡り、スウェーデン南端に位置し、デンマーク首都コペンハーゲンから電車でわずか30分の町「マルメー」でヨーロッパ屈指のゲームカンファレンスNordic Game Conferenceが開催されました。

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レンガ作りの会場で独特な雰囲気を感じさせます。

Nordic Game Conferenceは2004年にスウェーデンのゲーム会社「Nordic Games」がゲーム産業の交流を促進するために始めた活動ですが、12年の歳月が経ち、今はヨーロッパ内ゲーム産業の重要なイベントの一つとなりました。

今回カンファレンスのテーマは「知識」、「感情」、「ビジネス」です。講演や交流に通じて知識を共有し、産業全体の底上げを目論み、ゲーム展示を用いて情熱や刺激を広げていき、ビジネスの場を設けることで効率的に産業全体の価値を更に生み出すことを中心に行われました。

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三日間に渡って常ににぎやかに交流しているヨーロッパゲーム産業の方々

スマホゲーム、PCゲーム、コンソールゲームはもちろん、VRは未来性の溢れるテーマとして多くのセッションが行われました。

初日にVRの現状をヨーロッパの著名な6社代表が語り合い、そのまま「VRの現状」(The State of VR)をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。今回はその内容をご紹介します。

登壇者は業界著名の7名:(下記写真左より)
Annika Gustafson(BoostHbg社 エグゼクティブ・ディレクター)
Thomas Bärtschi(Audiokinetic社 音声エバンジェリスト)
Katie Goode(Triangular Pixels社 クリエティブ・ディレクター)
Dario Luis Sancho Pradel(Crytek社 首席プログラマー)
Ville Kivistö(Mindfield Games社 CEO兼共同設立者)。
Olivier JT(Synthesis Universe社 設立者)
Heather Kelley(Kokoromi社 メンバー)

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ヨーロッパ著名なVRパイオニアたち

Annika(MC):我々はスウェーデンを本拠地とするインキュベーターで、主にVR企業や双方向メディア関係の企業をサポートしています。それでは、軽く皆様に自己紹介をして頂きましょう。まずはDarioからお願いします。

Dario:私は「Crytek」でプログラミングをしています。今まではいくつかのゲームを開発してきて、今は「The Climb」を中心に開発しています。

Katie:イギリスから来ています。業界の経験は8年で、現在は「Smash Hit Plunder」というGear VRゲームを開発しています。ARの開発も少しやっています。

Ville:私はVille、「Mindfield Games」のCEOです。我々はVRゲームを開発しており、「P.O.L.L.E.N」というゲームを作っています。

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会場ロビーに掲げる北欧5ヶ国の国旗

Heather:私は「Kokoromi」という会社を代表しています。設立から10年が経ちましたが、VRの開発は2008年から始まっています。今は「HyperSuperCube」というパズルゲームを開発しており、今年の10月にPSVRで発売する予定です。

Olivier:私は主にフランスとアメリカのシリコンバレーにいましたが、過去の数年間3D音声を中心にやってきました。VRにおける3D音声は非常に奥が深く、知らなければいけないことがたくさんあり、開発をずっと続けています。

Thomas:我々はゲーム及びVRに最も適切な音声効果や技術を提供しています。我々のメンバーはスマホゲームの会社出身であったり、Oculusから来たりしています。私自身は業界に10年ほどいて作曲や音声技術などを中心にやっています。

 

Annika(MC):VRにおける音声は非常に大事ですが、後程にこのテーマに戻るとして、まずVRに関する開発やコンテンツ制作において皆さんが直面しているチャレンジは何でしょうか

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=ppc7HHliOA8&w=560&h=315]

Crytek社最新作の「The Climb」

Dario:もちろん、目まいなどは我々が気を付けている問題点ではあるが、我々の直面しているチャレンジではないです。我々がチャレンジだと思っているのはプレイヤーがVRの世界に入り、その世界を真実の世界に近づければ近づけるほど、「これはおかしくないか?」と思う箇所が増えてくるんじゃないかということです

我々が開発している「The Climb」ではプレイヤーが色んな場所に行って色んなことができ、縦軸の移動もできます。色んなことができるからこそ、ちょっとした音の角度がおかしかったり、動きが変になったりするとプレイヤーの体験が一気にVRの世界から離れてしまいます。プレイヤーを常にVRの世界にいてもらってリアルな体験から離れないようにするのが我々が現在直面しているチャレンジです。

Katie:我々が開発しているVRコンテンツではプレイヤーが体を動かさず、座って操作するので、動くことによる問題はないです。しかし、VR世界内の移動や動作は全てプレイヤーの両手とキーボードで行わなければいけないので、そんな状態でプレイヤーは本当にゲームを楽しめることができるか、というチャレンジに直面しています。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=sf2L2ruYDDc&w=560&h=315]

Triangular Pixels社の開発中タイトルGear VR Gameplay Trailer (Feb 2015)">「Smash Hit Plunder」デモビデオ

もう一つは、VR世界に入ったプレイヤーは基本的に一人の世界を楽しんでいます。それで友達や家族との交流が減るんじゃないかというチャレンジです。我々今後はVRの世界にいても人間と交流できるように開発していきたいですね。

 

Heather:我々が思うチャレンジはいかにプレイヤーにVRゲームの中で集中してもらうことができるかです。VRの世界の中ではプレイヤーはどこに行ってもいいですし、何をやってもいいです。それで次はプレイヤーに何に集中してもらうことが問題になるかもしれません。物語をゲームプレイのベースにして導いていくか、何か標示を作って明確に示すかなどが必要かもしれません。

Thomas:プレイヤーの集中力を維持することや体験を高めることに関して音声は非常に重要だと感じています。音声においてデバイスが非常に重要で、今のヘッドフォンなどのデバイスでVRの世界が必要としている音声効果をもたらすことにはまだ足りないが、今後どんどんいいデバイスが出てくることを期待しています。

例えば、VRでは音声の来る方向がプレイヤーの体験を維持や高めることには非常に大事なことです。音声の来る方向をプレイヤーが認識することでVR体験の没入感が上がります。今のヘッドフォンはまだその力が足りないと思いますね。

 

Ville:我々が直面しているチャレンジは市場の不確定性です。もちろん、我々はゲームを作っているので、ゲームを買ってくれる人がいなければ我々は生き残れません。果たして2年後の市場にVRの機器はなんでセットあるのかがわかりません。1万セットしかないのか、100万セットあるかによって話が全然変わりますね。

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約600席もある会場のメインステージ(写真は休憩中の様子)

Annika(MC):VRの今後の可能性についてどう思われますか?

Katie:コンテンツやソフトウェア開発がハードウェアの発展に追い付かない可能性がありますね。我々は今キーボードを操作インターフェースとして開発してきましたが、今はすでに色んなコントロールシステムが開発されました。このままいくと近い将来にさらに多くの種類のコントロールシステムが開発されるでしょう。その時にどう対応していくかは考えるだけでちょっと怖く感じてしまいます。もちろん、色んな特徴の持つハードウェアが開発されることでVRの世界がどんどん豊かになっていくのは嬉しいことに違いないですが。

Heather:私の思う未来ではVRが様々な分野に応用され、治療分野に応用される可能性もあります。例えば、人の前で話すことが心理的な障害となっている人にはVRを用いて練習することや慣れることでそのような心理的な障害を克服することも期待できるのではないかと思います。

もう一つは誰もがVRのハードウェアを買えるようになることですね。今はまだ全然高いので、今後は家庭ごと一台を持つ時代が来るともっと手軽にVRを楽しんでもらえるといいですね。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=ZOuzAEvBPa0&w=560&h=315]

Kokoromi社最新作SuperHyperCube

Olivier:私は今後VRはコンテンツの開発に重心を置くことになるのではないかと思います。VRハードウェアの開発はまだ早期とはいえ、既に十分機能性の高い製品が開発されました。これからはいかにコンテンツのレベルを上げていくのが重要です。

数年前のVRハードウェアの値段を考えると今は既にかなり安くなっています。数年前にVRゴーグルだけで千ドル弱の値段がしたのに今はほぼ同じ値段でVR装置のフールセットを買えます。そのため、今後はどんどんVRのコンテンツを世に出し、ノウハウを累積してより良いコンテンツを作っていくべきと思います。

 

Dario:未来にできるようになる可能性があることの一つは体の動きを追跡することですね。ゲームの中で自分の体の動きを目で見れないのでVR体験から遠ざかる原因になります。自分の体も見れればより素晴らしい体験になるでしょう。

また、VRの世界で人と交流するときに相手の体の動きが見れないとやはり変な感じがするでしょう。そういう意味でも体の動きを追跡できる技術がほしいですね。

また、今後はVRの世界で共同作業したり、一緒にゲームプレイしたりすることもできるようになるのでしょう。

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展示エリアの一隅

Annika(MC):ありがとうございます。45分でVRを語るのは本当に何も話していないような気がしますが、是非また会場でたくさん話して交流を深めてください。

―――

このようにヨーロッパでVRを最前線で開発・製作している方々が自分の経験、感想と考え方を共有して頂きました。

まだ始まったばかりのVRだからこそ期待も高く、夢の広がるパネルディスカッションでした。

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KenCheng

Writer: Sidora Marketing株式会社CEO。台湾生まれ台湾育ちの台湾人。2006年に来日し、8年間に渡り、留学や就職を経験したのち、2014年にフィンランドに移り、2015年に創業。現在多国を跨ぐゲーム関係ビジネスを運営しながら、なかなか日本に入らない海外現地の最新情報をお届けします。