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ボーイング社、職能訓練にVR・ARを導入したことで訓練時間を75%短縮に成功 - VR Inside

ボーイング社、職能訓練にVR・ARを導入したことで訓練時間を75%短縮に成功

     

海外メディアLightReadingは、ボーイング社のVR・AR活用事例について報じた。

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バーチャルな配線で整備業務をシミュレート

同メディアによると、イギリス・ロンドンで2017年6月13日から15日まで開催されていたVR・ARに関するカンファレンス「VR & AR World」において、大手航空機メーカーボーイング社が自社のVR・AR活用事例について発表した。

同社の試みを発表したPaul Davies氏によると、同社は航空機の組み立て作業を訓練するのにVRを使っていると言う。

航空機の組み立て工程で最も重要なのは、配線である。航空機のような大規模な機械となると、配線が複雑かつ長大となる。その配線にひとつでもミスがあると故障の原因となり、その配線ミスを修正するのに時間がかかるので、結果的にひとつの些細なミスから膨大な人的・金銭的コストが生まれてしまう。

同社は配線作業でのミスを予防するために、訓練段階でVRによってバーチャルに再現された配線を使うようにした。このバーチャルな配線はリアルなものを厳密に再現しているので、訓練段階で配線の位置や形状を熟知することができるようになったのだ。

HoloLensで必要な整備情報をAR表示

また、従来の航空機の組み立て手順の習得は非常に人的・時間的コストがかかるものだった。同氏は従来の習得方法を次のように説明している。

かつては教室に用意した組み立て部品を使って、指導員が研修生に付きっきりで組み立て手順を教えていました。しかし、この方法ではひとつの組み立て手順を習得するのに2~3時間はかかっていました。

このヒトからヒトに教える方法に代わって、同社は組み立て工程にHoloLensを導入した。HoloLensを使えば、組み立て作業中にいつでも手順を確認することができるし、部品の組み合わせ方を3Dモデルで表示することもできる。この方法だと、極論すればHololensの使い方さえ知っていれば、組み立て作業が可能となる。

組み立て作業にHoloLensを導入したことによって、同氏が言うには訓練時間を一人当たり75%削減できた、とのこと。この数値に従うならば、訓練時間が従来の1/4になった、と言うことができる。

航空機を透視する試みも

訓練のほかにも、同社はHoloLensを使って航空機を透視することも試みている。

2017年6月19日から25日までフランス・パリで開催中の航空機の見本市Paris Air Showにおいて、同社はHoloLensを装着して航空機を外側から見ると、機内の構造が透視しているかのように見えるデモンストレーションを行った。

以上のデモは、実際の航空機の整備業務にすぐにでも応用できるだろう。滑走路上にいる整備員が機内の状況を直観的に確かめることができたら、整備業務がはかどるだけではなく、事故の予防にもなるだろう。

様々な業界で導入されるVRトレーニング

航空業界のほかにも、様々な業界でVRを活用したトレーニングが試みられている。以下に本メディアで紹介した事例を列挙する。

HoloLensを活用したエコー検査のARトレーニング

2017年4月10日に紹介したVimedixARは、HoloLensを装着して医療用のマネキンを見ると、マネキンに臓器がAR表示されるシステムだ。同システムを使えば、臓器の位置を確認しながら、マネキンを被験者に見立ててエコー検査のトレーニングができるのだ。

下水道整備会社によるVR新人教育

イギリス・ロンドンの下水道を管理する企業Lanes Utilitiesは、新人教育を目的としたVR下水道業務訓練シミュレーターを導入した。

従来のパワーポイントを使用する方法では、トレーナーの側もプレゼンテーションのやり方に苦心していたという。丸一日かけてもその技術を習得できないこともあったほどだ。だが、この施設を使えば35分から40分程度のセッションを行い、その後は施設から出てコーヒーを飲みながら中で行ったことについての反省をするほどの余裕ができた、とのこと。

「ブラックマンデー」をシミュレートするウォルマート

アメリカ大手小売業者のウォルマートは年末商戦のはじまる「ブラックマンデー」における店舗対応を訓練するために、VRシステムを導入した。

同社の関係者によると、VR教育を導入するメリットはコンピュータービジョンを使用することで、従業員がどこを見ているのか、文字通り正確に把握することが出来るだという。そして、従業員の視線を把握することで、即座に適切な指導をとって従業員に修正させることができるのだ。

職能訓練にVR・ARシステムを導入するとなると、その高額な初期投資を前にしてどうしても尻込みしてしまう企業が多いことだろう。しかしながら、ボーイング社やLanes Utilities社の事例が示すように、訓練の質の向上のみならず訓練コストの削減も期待できるとなると、VR・ARシステムへの投資は長期的には利益を生むことになる。それゆえ、VR・ARトレーニングへの積極的な投資は一考に値すると言えよう。

ボーイング社のVR・AR活用事例について報じたLightReadingの記事
http://www.lightreading.com/video/video-services/boeing-productive-vr-cuts-training-time-by-75-/d/d-id/733756

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吉本幸記

Writer: 千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com