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Valveから始まったARデバイスはプロトタイプのまま終わる? - VR Inside

Valveから始まったARデバイスはプロトタイプのまま終わる?

     

CastARのプロトタイプ

CastARのプロトタイプデバイス

VRやARといった最新の技術は急成長を続けており、ゲームやエンターテインメントはもちろん医療、教育、不動産、工業といった分野で利用の拡大が予測されている。

最近では野球やフットボールのようなプロスポーツのトレーニングツールとしてVRを取り入れる例も出てきており、技術の発展とともに応用範囲はさらに拡大していくだろう。

この分野のスタートアップ企業に投資を行う投資企業や、クラウドファンディングを行うプロジェクトを応援する個人も多い。だが、闇雲に投資しておけば儲かるわけではない。

過去にValveで研究されていたARデバイスが元になったCastARは暗礁に乗り上げている。詳細ははっきりしていないが、ほとんど沈没してしまっていると言って良いのかもしれない。

CastARの出発

CastARの最初のプロトタイプデバイス

CastARの最初のプロトタイプデバイス

メガネ型のARデバイスを研究するCastARは、元はValveの社内でボツになったハードウェアのプロジェクトから生まれている。

その後にクラウドファンディングで資金を集めて開発を進めていたが、順調には進まなかった。

Valveから独立

CastARの原型が誕生するきっかけとなったのは、今を遡ること5年前の2012年だ。その年、Valveが後にCastARを設立するJeri Ellsworthを雇用したのだ。

Valveは、自社の実験的なハードウェアを研究するために彼女の持つハードウェアに関する専門的な知識を求めていた。

そのプロジェクトで、Ellsworthは小さなプロジェクターを使って平らなシートの上に「飛び出すARオブジェクト」を投影できるメガネ型のデバイスを研究していたようだ。

この研究成果はValveによって製品化されることはなく、同社は別のプロジェクトに注力した。その結果生まれたのがSteamVRだ。

Valveは彼女のアイデアを採用しなかったが、それを独占しようともしなかった。彼女がValveを離れ、自身の発明を追求することを認めたのだ。

Kickstarterキャンペーンの成功

Ellsworthが彼女自身のアイデアを追いかけるためにValveを離れると、ほどなくRick Johnsonも後を追った。彼は後に、EllsworthとともにCastARを設立することになる。

彼らが設立したTechnical Illusions(のちのCastAR)は、2013年にKickstarterでのクラウドファンディングをスタートさせた。

「最も多彩なAR&VRシステム」として紹介されたCastARには多くの支援者から多額の資金が提供された。具体的には、3,863人が1,052,110ドル(1.2億円)を提供することを申し出ている。

当初の目標金額は40万ドル(4,500万円)だったが、その金額はキャンペーンの開始から56時間後には達成されていたという。

彼らはクラウドファンディングで得た資金によってデベロッパーキットを作成し、資金を提供した支援者やデベロッパーにキットを届けている。

資金の獲得

Valveから離れたCastAR(当時はTechnical Illusions)には資金がなかったため、クラウドファンディングサイトで集めた資金を開発費に充てていた。

彼らの技術に可能性を感じたのがPlayground GlobalのAndy Rubinだ。彼はファンドの創設者であり、同時にAndroidを作ったメンバーの一人もある。

Playground Globalは1,500万ドル(16.8億円)の資金を提供し、Technical Illusionsが支援者から集めた全額を返金するように促した。

その結果返金が行われたので、支援者たちは無料でCastARのデベロッパーキットを手に入れたことになる。

CastARの失速

CastARを通してみる

CastARのARオブジェクトは存在感が希薄だ

1,500万ドルもの資金を獲得し、前途洋々だったCastAR。しかし、その後は開発が上手く進まなかったようだ。

CastARの現状

CastARは、2017年の後半に独立動作するARグラスを発売するとされていた。現在も、公式サイトでは2017年に製品が登場するとされている。

だが、今回解雇された元従業員によれば社員は解雇され、社内スタジオが閉鎖され、ついにCastAR自体も閉鎖されたという。70人にはならないというが、それでも多くの社員が解雇されたようだ。

Polygonによれば、中心メンバーは既存の技術を販売しようと動いているという。

失敗の理由

VRデバイスやARデバイスはここ数年で一気に発展している。CastARにとって、そのスピードが早すぎたのかもしれない。

同社は2015年に開催されたイベントでARグラスのプロトタイプを展示しているが、上の画像でも分かるようにそのARオブジェクトはHoloLensのものほど鮮明ではない。

リフレッシュレートの低さやジェスチャーで操作するコントローラーの精度が良くないことも指摘されていた。

これらの点を改善できなかったことで、同社に投資する企業がなくなってしまったことが失敗の理由として挙げられるだろう。

過去に多額の資金を提供したPlayground Globalは先週、CastARに対してこれ以上の投資を行わないと決めている。また、他の投資家からの資金調達にも失敗したという。

 

ARデバイスのような最新技術を使った製品の開発は大きな賭けだ。成功すればその業界を代表する存在になれる可能性もあるが、他社に追い抜かれて投資家から失望されてしまえばそれまでである。

2017年にデバイスが発売されることはなくても、CastARの技術がどこかで生き残っていくのだろうか?

 

参照元サイト名:Polygon
URL:https://www.polygon.com/2017/6/26/15877804/castar-shut-down

参照元サイト名:CastAR
URL:http://castar.com/

参照元サイト名:Kickstarter
URL:https://www.kickstarter.com/projects/technicalillusions/castar-the-most-versatile-ar-and-vr-system

参照元サイト名:Ars Technica
URL:https://arstechnica.com/gaming/2017/06/report-valves-former-augmented-reality-system-is-no-more/

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。