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【連載コラム】毎日がVR元年(3)不可避なXRテクノロジーの進化システム〈前編〉 - VR Inside

【連載コラム】毎日がVR元年(3)不可避なXRテクノロジーの進化システム〈前編〉

        2017/04/10

連載コラム記事3回目にあたる本記事では、XRテクノロジー進化に関するシステム(仕組み)を明らかにします。

「これからインターネットに起こる『不可避な12の出来事』」p55より引用

「これからインターネットに起こる『不可避な12の出来事』」p55より引用

XRテクノロジーが属する進化ツリーを探し求めて

前回までのコラム記事において、テクノロジーにはヒトの思惑を超えて自律的に進化する方向性があることを確認しました。そして、この進化の方向性を視覚的に理解するアイデアとして、「進化ツリー」を解説しました。テクノロジー進化における進化ツリーとは、先行するテクノロジーの本質を継承しながら、現存のそれがまるで樹木の枝や葉のように位置づけられる「テクノロジー版進化系統図」を意味します。

今回の記事では、XRテクノロジーがどのような進化ツリーに属しているか検討します。XRテクノロジーが属する進化ツリーの特徴が明らかになれば、XRテクノロジーが「テクニウム史観から見て」どのような意義をもつモノであるかも明らかになるでしょう。

なお、以下で考察するのは、XRテクノロジーの市場的・業界的位置づけではないことに注意して下さい。すなわち、たとえばOculusがFacebookに買収されたというような市場的「歴史」、あるいはVIVEを製造しているHTCはもともとはPCの組み立てをメイン業務にしていたメーカーであったというようなデバイス業界的「歴史」が問題となっているのではない、ということです。

市場的・業界的「歴史」は、前回のコラムで解説した「テクニウム史観」から見ると「歴史的偶然性」の範疇にあるものです。これから考察するのは、「歴史」を形づくる原動力となる「構造的必然性」です。もっと言ってしまえば、XRテクノロジーが内包している不可避な進化の方向性を見定めるのです。

インターフェースの最新形態としてのXRテクノロジー

GUIデバイスの先駆となった1963年発表のSketchpad(左)とVRヘッドセットの先駆となった1968年発表のThe Sword of Damocles(右)

GUIデバイスの先駆となった1963年発表のSketchpad(左)とVRヘッドセットの先駆となった1968年発表のThe Sword of Damocles(右)

とは言うものも、XRテクノロジーの直接的な祖先を同定するのは、なかなか難しそうです。すぐにわかるのは、XRテクノロジーをゲーム機の進化系統図に属するモノと考えるのは適切ではない、ということです。というのも、Oculus RiftやVIVEは言うまでもなく、PSVRでさえもVRゲームをプレイするためにだけ設計されたものではないことは明白だからです。

前回までのコラムでも紹介したテクノロジー理論家のケヴィン・ケリーは、テクニウム史観を理論的に展開した著作「テクニウム」に続き、2016年(奇しくもVR元年と同じ年)、同書で論じたテクノロジーが進化する方向性を現在のテクノロジー・トレンドに即して検討した著作「〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則(原題:"THE INEVITABLE" 「不可避なるモノ)」を発表しました。

12章から構成されたこの著作には、XRテクノロジーについて論じた「INTERACTING」という1章があります。直訳すると「相互作用していく」となります。同章において、ケリー氏はXRテクノロジーをヒトとデジタル情報の相互作用を規定するシステムの最新形態と捉えています。そして、この「ヒトとデジタル情報の相互作用」は、伝統的に「ユーザーインターフェース」として論じられて来ました。

進化ツリーとしての「インターフェース」

「ユーザーインターフェース」とは、ヒトがコンピュータに情報を入力した後、その入力に基づいてコンピュータが処理した情報を出力(表示)するという一連の動作を設計する枠組みを意味します。そもそもユーザーインターフェースとは、原理的にヒトのように考え話したりはしないコンピュータと、ヒトがどのようにしてコミュニケーションできるか、という問題を解決するために生まれたモノです(以下、煩雑さを避けるため「インターフェース」とだけ表記します)。

現在において主流となっているインターフェースは、iPhoneやAndroidで採用されている「スマートフォン・テクノロジー」です。さらにその前に主流だったのは、PCとガラケーで採用されている「GUI」です。このようにして、インターフェースは、まさに「進化ツリー」を描くようにして歴史的に進化して来たモノです。

ケリー氏が主張するように、XRテクノロジーがインターフェースの最新形態だとするならば、そのテクノロジーの本質は、過去と現在のインターフェースとの比較において明らかになるはずです。

インターフェースの歴史を振り返る

XRテクノロジーとその他のインターフェースを比較するにあたり、ふたつほどあまり一般的ではない概念を導入します。

ひとつめは、「自由度」という概念です。この概念は、新しいXRテクノロジーを紹介する本メディアの記事で、ときどき目にするものです。例えば、「このハンドジェスチャー・コントローラーは6度の自由度を持っている」というように使われます。

「自由度」とは、入力デバイスが処理可能な情報の次元数を意味します。例えば、PCにつないで使うマウスは、縦方向と横方向に関する位置情報を処理するので、2度の自由度をもっています。

もうひとつの概念が「インタラクション次元数」です。この概念は、必要に迫られて完全に本記事執筆ライターが考案したものです。「インタラクション次元数」とは、ヒトとコンピュータが相互作用している時、その相互作用的体験がリアルな世界において形成する次元数のことです。例えば、PCをマウスで操作している時、ユーザーとPCを仲介するマウスは平面的な情報のみをやり取りするので、インタラクション次元数は2です。

以上の概念にもとづいて、XRテクノロジーとその他のインターフェースを比較すると、以下の図のようにまとめることができます。

インタフェース 代表的デバイス 自由度 インタラクション次元数
パンチカード 初期コンピュータ 0 0
CUI メインフレーム・PC 1 1
GUI PC 2 2
スマートフォン・テクノロジー iPhone・Android 6 2
XRテクノロジー VRヘッドセット・ARバイザー 6x 3

以上の表は、「パンチカード」から「XRテクノロジー」まで発明された順番に並べたものです。

インターフェースを「自由度」と「インタラクション次元数」で比較する

パンチカード

パンチカード

「パンチカード」とは、1950年代の発明さされた初期のコンピュータに採用されていたもので、今日でいう「(0あるいは1の)ビット情報」を厚紙にあけた穴によって表現していました。パンチカードは、現在から見るとヒトが直観的には理解できないとても「不自然な」インターフェースなので、自由度・インタラクション次元はともに「0」です。

ついで現れたのが「CUI」(Character User Interface)です。CUIは、文字情報を介してヒトとコンピュータが相互作用します。今日ではマイナーなインターフェースですが、サーバー制御等の業務では今でも使われています。文字情報を入力する時に使うキーボードは、「キーが押下されているか否か」という1次元の情報を処理するので自由度は「1」です。また、インタラクション次元数は、(多くは左右に連なる)文字列を介して相互作用体験が為されるため、横軸のみから構成される体験の次元数である「1」です。ちなみに、「改行」は文字列に(可読性向上のために)「区切り」を挿入しているに過ぎないので、複数行の文字列であってもインタラクション次元数は変わりません。

「CUI」の次に登場したのが「GUI」(Graphical User Interface)です。PCで採用されているような、今でもよく使われているモノです。「CUI」と「GUI」の大きな違いは、「GUI」は「平面」と「画像」を主な要素として相互作用することです。操作にはキーボードに加えてマウスが加わり、相互作用体験もディスプレイを介したグラフィカルなものとなります。それゆえ、自由度は「2」、インタラクション次元数も「2」となります。

現在主流である「スマートフォン・テクノロジー」は、改善されたGUIと見ることができます。改善された点は、デバイスが物理空間における位置情報を処理できるようになったことです。つまり、スマホにジャイロセンサーが実装されたことにより、ユーザーの物理的な位置、さらにはデバイスの傾きをも入力情報として処理できるようになったのです。それゆえ、自由度は位置情報の「3」(タテ・ヨコ・高さ)とそれぞれの軸における傾きを加えて「6」と増えます。しかしながら、情報の入出力は依然として平面的な「タッチスクリーン」を介して実行するので、インタラクション次元数は「2」に留まります。

最新のインターフェースであるXRテクノロジーでは、位置情報を取得するデバイスが増加します。例えば、Oculus RiftとVIVEは、最低でもVRヘッドセットと左右のコントローラーの3箇所で位置情報を処理しています。さらに、VIVE Trackerのようなアクセサリーの存在を加味すると、明確な上限は決められません。それゆえ、自由度は「6x」(6の倍数)です。さらに、XRテクノロジーによって初めて、ユーザーは平面的なディスプレイから解放され、(バーチャルな、あるいはホログラフィックな)空間内で相互作用する体験が可能となったので、インタラクション次元数は「3」になります。

SUIを可能とするXRテクノロジー

空間的に絵を描くTilt Brush(左)と空中のオブジェクトと相互作用するHololens(右)

空間的に絵を描くTilt Brush(左)と空中のオブジェクトと相互作用するHololens(右)

インターフェースの歴史的変遷をまとめていくと、その歴史は自由度とインタラクション次元数を増やそうとして進化してきたと解釈できます。このふたつの尺度の増加は、インターフェースがより物理世界のヒトの挙動とシームレスになる過程だと見ることもできます。

ケリー氏によれば、こうした「インターフェースの自然化」という傾向性こそ、インターフェース・テクノロジーに認められる不可避な進化の方向性なのです。そして、XRテクノロジーとは「インターフェースの自然化」の途上において現れるべくして現れた運命的なテクノロジーだと言えます。

「インターフェースの自然化」においてXRテクノロジーが画期的なのは、相互作用体験を「平面」から「立体」に拡張したところにあります。その革新性は、インターフェースがCUIからGUIに移行する契機となったスティーヴ・ジョブズ発明の「AppleⅡ」の登場に匹敵するものなのです。というのも、XRテクノロジーが引き起こしたインタラクション次元数の増加は、直近ではCUIからGUIの移行時に起きているからです。

以上のようにXRテクノロジーを考察すると、このテクノロジーの本質は「空間的にデジタル情報と相互作用することを可能とすること」となるので、「SUI(Spacial User Interface)」を採用した初めてのテクノロジーと表現できるでしょう。

次回予告

次回のコラム記事では、「インターフェースの自然化」の途上に現れたXRテクノロジーがもっている進化の方向性をさらに詳細に考察します。

考察する際には、本メディアで過去に報じた事例を引用しながら、その進化の方向性が架空のものではなく、現実に起こっていることも実証します。

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吉本幸記

Writer: 千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com