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戦闘機パイロットのための技術を使ったサイクリスト用スマートグラス - VR Inside

戦闘機パイロットのための技術を使ったサイクリスト用スマートグラス

     

EverysightのARグラス「Raptor」

イスラエル企業Elbit Systemsは、イスラエル最大の防衛システム企業だ。Elbitとそのグループ企業は航空、宇宙、陸海軍で使われる通信・指令システムや無人航空機システムやトレーニング・シミュレーションに使われるプラットフォームの開発を行っている。

そのElbitが四半世紀近い企業の歴史の中で初めて、消費者向け製品のリリースに向けて動いている。それがサイクリストのためのARグラス「Raptor」だ。Raptorには、戦闘機パイロットのヘルメットに搭載するために開発された技術が転用されているという。

Raptor開発の情報は昨年末にも報じられたが、今回BloombergはElbitのCEOにインタビューを行い、同製品の話を聞いている。

安全に情報を提供する

視界に情報を表示する

RaptorのようなARグラスが役立つのは、手を離したり視線を落としたりすることなく情報の確認が可能だからだ。ARグラスに表示される情報ならば、まっすぐ前を見たままでも確認できる。

サイクリスト向けのガジェットはたくさんあり、スマートフォン用のアプリやハンドルに取り付ける小型のデバイスでも走行距離と時間、速度などの情報を確認することが可能だ。腕や耳に取り付ける心拍計を使えば、自分の心拍数を合わせて表示することもできる。

細かな情報をチェックすることは健康維持に役立つ。また、走行距離が伸びるのを見るのはそれだけで楽しいものだ。しかし、走行中にスマートフォンのような機器を確認するのは危険すぎる。レース用自転車の巡航速度であれば、一瞬目を離しただけでも周囲の風景は大きく変わってしまう。

Raptorは透明度の高いサングラスに、はっきりと情報を表示してくれる。これならば注意を取られることなく情報の確認が可能だ。

ここに戦闘機パイロットのために開発された技術が活かされている。技術の最終的な目的は全く異なるが、使われる状況は似ているのだ。

Elbitと消費者市場

Raptor

初の消費者向け製品

Elbitは歴史ある企業だが、一般のコンシューマ市場に向けた製品は作っていない。新会社Everysightを設立して初の消費者向け製品を開発しているのは、戦略の一部だという。

「我々の戦略の一部には、商業市場への参入があります。防衛市場から技術を輸入し、消費者向けの市場を含むコマーシャルマーケットに参入したいと考えています」

CEOのBezhalel Machlisは、このようにBloombergのインタビューで答えている。

Elbitの年間収益は、昨年5%増加している。また、同社の株式価格は過去半年で16%上昇している。

Bloombergがまとめたその他のデータからも、その成長は順調なように見える。このような状況で、同社がコマーシャルマーケットへの参入を狙う目的はどのようなものなのだろうか。

ウェアラブル市場

Elbitの売上は、大部分が軍事関連システムによるものだ。しかし、Machlisによれば昨年の売上の10%が民間からもので、主に航空システムによるものだという。また、自動運転車関連のシステムにも軍事技術の転用を進めている。

2016年には自動車産業で存在感を示し始めた同社が次に狙うのは、ウェアラブルデバイスの市場だという。Raptorのように、軍用の技術を民間向けに利用した製品をさらに開発するつもりのようだ。

この方針について、Citiのアナリストは技術を売上に変える合理的な方法と評している。他の分野で利用できる技術を持っているならば、それを使って出来る限りの収益を上げるのが効率的な方法だ。既に持っているものを利用すれば、新技術をゼロから開発するよりも少ない投資で資金を得ることができる。

軍と民間の差

この点については、懐疑的な見方も存在する。軍と民間では、必要とする技術の精度や内容も大きく異なる。そのため、単純に軍事技術を民間に転用するのは失敗することも考えられるからだ。

株式調査サービスを提供するExcellence Nessuah Brokerageの外国株式部門の責任者は、その難しさを指摘しつつも「失敗するとは限らない」とコメントしている。

 

軍事目的で研究された技術が普及している例は非常に多い。現代の生活は特に第一次・第二次の世界大戦中に開発された技術に大きく依存している。調べていけば、それ以前の戦争がきっかけで研究・開発された技術も多数ある。

戦争が技術開発を促進させることは事実だ。Elbitが軍と民間の間にあるギャップを超えられれば、そこから未来を変えるような製品が生まれてくることも考えられる。

Elbitの新しい挑戦を示すEverysightだが、MachlisはEverysightが将来的に売却される可能性を否定していない。「これはElbitのメインビジネスではない」とコメントしており、今後民間向け製品の開発と、その売却を繰り返していく可能性もある。

 

参照元サイト名:Bloomberg
URL:https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-05-03/coming-soon-biker-goggles-with-fighter-pilot-helmet-technology?cmpid=socialflow-facebook-btechnology

参照元サイト名:Everysight
URL:https://everysight.com/

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。