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HoloLensで頭痛の視覚化が可能になる - VR Inside

HoloLensで頭痛の視覚化が可能になる

     

脳の働きを視覚化する

偏頭痛の痛みは、どこかをぶつけたり、切ったりした怪我の痛みとは違う。もちろん原因も違うし痛みの感じ方も異なるのだが、大きな違いは痛みの原因が目に見えないことだ。

怪我をして血が出ている、あざになっているというのは素人でも分かることだが、他人の頭が痛いかどうかは分からない。病人を見慣れているベテランの医者や看護師ならばその程度が予想できるかもしれないが、結局のところ「痛み」は本人にしか分からないものだ。

見えない痛みの問題

頭が痛そうな人

本人にしか分からない痛みは、日常生活で、あるいは医療の現場でも厄介なものだ。

目の前に頭が痛いと言っている相手が居るとする。その相手に関する情報が無いならば、非常に具合が悪いのか、大げさに言っているのか、それとも本当は全く痛くないのに嘘をついているのかを断定することはできないはずだ。

日常生活でこれを見抜けなくても仮病で迷惑をかけられるくらいの被害しかないが、病院ではそれだけではない。最悪の場合命に関わる判断ミスが起きる可能性もあるのだ。痛みは疾患の状態を知らせる重要なサインであり、見逃しや誤解があればその影響は大きい。

患者に言語障害があるなど、意思疎通の難しい患者は痛みを訴えることができず、適切な治療を受けられないか、処置の開始が遅れてしまうかもしれない。痛みを感じやすい、あるいは大げさに言う傾向がある患者に対して、必要以上の薬剤を投与してしまうかもしれない。

偏頭痛を研究するAlexandre DaSilvaのHoloLensプロジェクトでは、患者の脳内で痛みを司る部位が活性化しているかどうかを見ることができる。脳の活動を測定する装置を付けた患者をHoloLens越しに見ると、脳内が色分けされて活動している部分が示される。

DaSilvaはリアルタイムに痛みの視覚化を行うために、専門家であるTed Hallとミシガン大学3D Labが使っているVRの視覚化技術を使っている。この技術と彼自身の神経工学の知識を組み合わせることで、脳の活動からリアルタイムに痛みを視覚化することが可能となっている。

痛みを視覚化する

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DaSilvaは痛みの視覚化が効果的な例として、脳の言語機能に障害がある患者を挙げる。

「脳にダメージを受けた患者は、しばしば本当に苦しいときに痛みを表現できないことがあります。この手法であれば、客観的に患者の苦痛の程度を評価し、理解することができます。痛みの程度が分かるため、必要であれば痛みを和らげるための処置を行い、ときには脳を直接刺激する方法を取ることも考えられます」

彼が「脳を直接刺激する」と言っているのは、彼の以前の研究結果を受けてのことだ。DaSilvaによれば、脳のある領域に電流を通すことによる刺激が偏頭痛、顎関節症、がんといった幅広い疾患による痛みの予防や緩和に効果的だという。

応用の可能性

偏頭痛に限らずがんの痛みにも応用可能であることから、疼痛ケアに使用する薬剤、特にターミナル・ケアにおけるモルヒネの使用量やタイミングの調整などにも応用できるかもしれない。痛みを適切に管理できれば、患者の苦痛をかなり抑えられるはずだ。

患者の脳が活動している様子を測定するために装置を取り付ける必要があるので、病院以外で使うのは少々難しい。それでも、患者と医療者の双方にとって便利で有効なツールとなるだろう。

頭痛以外でも、「痛みはあるのに器質的疾患は見られない」不定愁訴として扱われる患者にとっては救世主たり得る。原因不明の症状が続くのはそれ自体が患者にとって大きなストレスだ。

おまけに、原因が見つからないので治療もできない。精神的な問題として心療内科や精神科への通院を勧められるか、最悪の場合は仮病扱いである。

痛みを感じているかどうかという重要なポイントが直接確認できるようになることで、不要な精神科治療や患者へのストレスが避けられるようになるだろう。たとえ治療法が分からなくても、そういった症状を抱えていると正しく認識されるだけでも患者にとっては大きな一歩だ。

 

VR/ARはどちらもゲームやエンターテインメントだけでなく医療のような分野にも利用できる技術だ。VRPhysioが開発を進める、VRヘッドセットを使ってミニゲームをしながら楽しく肉体的なリハビリを行うプログラムやVRによって統合失調症の早期発見をするテストも開発されている。

痛みについて言えば、VRコンテンツによってリラックスすること、または注意をそらすことで痛みを軽減し、鎮痛剤の使用を減らせるかもしれないという研究結果も出ている。

今後も結果を裏付ける研究が必要ではあるが、いずれは普通の病院で医療者が診断にARを活用したり、患者への処置としてVRコンテンツを体験させるようになるのだろう。

 

参照元サイト名:Hour Detroit
URL:http://www.hourdetroit.com/Hour-Detroit/April-2017/Virtual-Reality-Check/

参照元サイト名:VR Room
URL:https://www.vrroom.buzz/vr-news/trends/seeing-your-pain-vr

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。