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形成される「VRアート」の市場 - VR Inside

形成される「VRアート」の市場

     

La Apparizione

VRアート作品『La Apparizione』

絵画や彫刻といったアナログのアート作品は通常「一点もの」であり、優れた作品には高額な値が付けられることもある。

有名なアーティストの作品や人気の作品は複製が作られることもあるが、どんなに本物そっくりだとしても複製の価値は本物と比べ物にならないほど低い。

これは、工業的に作られた製品にはない特徴だ。

VRで芸術作品を創造するアーティストも出てきているが、この新しいアートの世界には価格を巡る困難が待ち受けている。

値段を決めるもの

La Apparizione

10万ドルで販売されるVRアート

製品の値段は一般に素材の希少性や加工の手間暇などを考慮して決定されるが、最も大きな影響を与えるのは需要と供給だ。

どんなに珍しいものでも欲しがる消費者がいなければ値札は付かず、ありふれたものであっても需要が大きければ値段が高騰することもある。

だが、芸術作品の値段というのは一般の消費者には理解しにくいものだ。

VRアートの値段

Christian LemmerzのVRアート作品『La Apparizione』は、5つのエディションが作られ、それぞれに約10万ドル(1,100万円)の値が付けられた。

この例では既に知られたアーティストの作品だったのでかなり高い値が付いたが、VRアート作品を売買するのは売り手と買い手の双方にとって難しい。

ギャラリーが芸術作品に値段を付けるときには、そのアーティストが過去に手掛けた作品を参照するのが一般的だ。だが、VRアートは生まれたばかりの新しいジャンルで先例がほとんど存在しない。

さらに、VRの特徴によって他の芸術作品との価格比較はほとんど意味がない。La ApparizioneはVR空間にしか存在しないバーチャルな作品なので、壁に飾ることはできないのだ。

Lemmerzは彫刻家として活動しているが、彼が2013年に発表したイエスの像とこのVR彫刻はどちらが高価なのだろうか?

彫刻はモノだが、VRアートは体験だ。彫刻は芸術の一形態として何千年も前から作られてきたが、VRアートが作られるようになったのはここ数年のことである。

調整中の市場

VRアートのマーケットはまだ調整を行っている段階だとKhora ContemporaryのSandra Nedvetskaiaは説明する。

同社は、Lemmerzが最新のVRアートを制作するのを助けたプロダクションカンパニーだ。

「現時点で比較できる対象となるのは、ビデオアート作品のみです。

しかし彫刻と関連付けて考えるコレクターもいます。入り込むことのできる、動く彫刻というイメージでしょうか」

ハードウェアという要素

VRアートを考える上で無視できないのが、ヘッドセットの存在だ。

モノが存在する芸術作品と違って、VRアートを見るためにはVRヘッドセットが必須となる。そのため、多くのVRアートには作品の値段としてVRヘッドセットが含まれている。

Nedvetskaiaは、Khora Contemporaryが販売する全てのVRアート作品にはHTC Viveと生涯サポートが付属しているという。

「更新サービスが含まれているので、作品が『もう見ることができないビデオテープ』のようになってしまうことはありません」

と彼女はCNNに対して説明している。

しかし、VR技術の急速な変化がアーティストにとっては問題になるかもしれないと2011年にMoving Image(動画を使ったアートフェア)を立ち上げたEdward Winklemanは指摘する。

「新しくてホットなヘッドマウントディスプレイの登場を待つべきかどうか、というのは常に問題であり続けています。

待つことでアーティストたちは新しいデバイスの利点を活用することができますが、自分の作品を発表するチャンスを逃してしまうこともあるのです」

値段の違い

Moving Imageを立ち上げたメンバーの一人、Murat Orozobekovによれば、若いアーティストたちがVRの世界で「実験」をしているという。

彼はまた、そうしたアーティストたちの作品の全てがLa Apparizioneのように10万ドルクラスの値が付くわけではないことも指摘した。

Orozobekovによれば、若いアーティストの作品は2,500~6,500ドル(28万~72万円)程度だという。

VRアートの市場にはこうした(芸術作品としては)安価な作品が存在する一方で、30万ドル(3,300万円)の値が付く作品もある。

これほど大きな価格の差が生まれる理由は何だろうか?

ロンドンのZabludowicz Collectionでディレクターを務めるElizabeth Neilsonは、アーティストの評判の差だけが価格を決めているわけではないと説明する。

「開発コストの違いも関係しています。

あるアーティストは、自身で開発工程の多くを担当します。一方で、別のアーティストはほとんど技術的な作業を行いません。

後者はその作業をハリウッドの専門家に委託するのです。

ご想像の通り、外注には高額のコストがかかります」

海賊版の不安

Tokyo Red Eye (Massage Chair)

Jon Rafmanの作品『Tokyo Red Eye (Massage Chair)』

海賊版の脅威

VRアート作品の価格は、販売される数を制限することで高く保つことができる。

絵画や彫刻と同様に、供給される数を制限することでVRアートの市場が形成されるのだ。

だが、VRアートはデジタルなファイルなので簡単に完全なコピーを作ることができ、市販されているVRヘッドセットを使えば本物と同じ体験ができてしまう。

コピーされた海賊版が出回ってしまえば、VRアートは市場として成立しなくなるかもしれない。

量産のメリット

音楽やビデオゲームなど劣化のない完全なコピーを作ることのできるデジタル作品では特に、著作権を無視した海賊版が脅威となる。

しかし、簡単に量産できるというVRアートの特徴は他にない強みになる可能性もあるとNedvetskaiaは語った。

将来は誰もがVRヘッドセットを持っていて、安価に販売されているVRアート作品を個人が購入できるようになるかもしれないというのだ。

一点ものの彫刻や絵画のように高い値段を維持することは諦め、低価格で多くの消費者にVRアートを届けるというのも一つの方法ではある。

この若い市場がどのように成長していくのかは不透明なままだが、これまでのイメージとは異なる新しい芸術の一分野になっていくのかもしれない。

 

参照元サイト名:CNN
URL:http://edition.cnn.com/2017/07/25/arts/oliver-giles-vr-art/index.html

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。