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下水道整備会社が新人教育にVRを活用 - VR Inside

下水道整備会社が新人教育にVRを活用

     

下水道のイメージ

現場での仕事に慣れるには、実際にやってみるのが一番の方法だ。しかし、そのためにはコストがかかったり、危険が伴ったりする作業もある。

いくつかの企業では既に、VRを社員への教育プログラムに取り入れる動きが始まっている。VRならば現地に行かずに無重力空間のような再現が難しい環境での作業を練習できる。また、貴重な機械を傷つけてしまうようなリスクもないのでコストも削減できる。

ロンドンの下水道を管理する企業でも、新人トレーニングにVRを利用するようになったという。

Lanes Utilities

Lanes Utilities

Lanes Group plcの一部であるLanes Utilitiesは、下水道の管理を長年に渡って行ってきた歴史ある企業だ。現在は何千マイルにも渡るテムズ・ウォーターの排水管の管理も請け負っている。

同社がテムズ・ウォーターから請け負っている排水管の調査・管理業務は、1,500万人の顧客に影響する重要なものだ。その業務を適切に遂行するためには、技術を持った作業員が必要となる。

トレーニングは難しい

VRを使ったトレーニングができるようになるまで、Lanes Utilitiesは新人作業員のトレーニングに苦労していた。ある程度の技術がなければ、新人を実際の現場に連れていくことができないからだ。

技術が無いので現場で作業を体験することができず、現場に出られるだけの技術を身に付けるためには現場で体験するのが一番で…という状況に陥ってしまっていたのだ。最も効果的な現場の環境でトレーニングができないために、新人の訓練は困難だった。

Lanes Utilitiesでロジスティクスとネットワークの最適化を担当するDean Hansfordは、このことが原因で多くの新入社員が入社してすぐに辞めてしまっていたと語る。この状況はLanes Utilitiesにとっての損失であり、入社してくる社員にとっても良いことではなかった。

「私たちは新入社員の募集とトレーニングに多くの資金を費やしていました。しかし、彼らの多くは一度下水道に入るとこの仕事が嫌になるのです。

かつて、スタッフの入れ替わりは本当に激しいものでした。非常に多くのスタッフが、この仕事は自分に合っていないと感じて辞めていってしまいました」

下水道内は過ごしやすい環境ではなく、保守作業員は呼吸装置や保護具を着用する必要もある。彼らの安全を考えた装備だが、これは身体の動きを制限してしまうものでもある。Hansfordは、その状況を「厚着して洞窟に潜るようなもの」だと表現した。

下水道の空間は限られている。広い場所では歩くことができるが、直径1.2メートルしかない細い管の中を這って進まなければならない場所もある。こうした環境に、未熟な新人を放り込むわけにはいかない。だからこそ、現場に行く前に全ての訓練を終わらせる必要がある。

Lanes Utilitiesは、トレーニングプログラムの早い段階で下水道の環境を再現したいと考えていた。現場に近い環境を体験することで、応募者が必要とされている能力を理解し、自分にその仕事ができるかを考える助けとするためだ。

かつては研修中にパワーポイントで説明を行っていたが、体験するのと話に聞くのでは、全くイメージが違う。研修生がそれに集中するのは難しかったようだ。

そこで、Lanes Utilitiesはイギリスのテクノロジー企業Igloo Visionに研修生のグループが下水道を体験できる仮想環境の構築を依頼することにした。

没入型トレーニング

Lanes Utilitiesの依頼を受けたIgloo Visionは、15人が一度に入れる直径7メートルの円筒形の施設を作り上げた。内部には5つのスクリーンが設置されており、サラウンドシステムも採用されている。壁面には映像を投影することができ、360度体験を作り出す。

この設備が研修生のグループをトレーニングするのに利用されている。

Igloo Visionが制作した施設は、イギリスにあるスラウの中心部に設置された。この施設を使用したトレーニングの中で、映像を使って作業の手順が示され、広い下水道の中を歩くレクリエーションも提供される。作業時の脱出経路を確保する方法もここで伝えられる。

この施設を使えば、研修生に実際の作業を元にしたシナリオを体験し、問題を解決する経験をしてもらうことができる。その再現度は高く、目に映るのは本物さながらの暗くて気分の悪い環境になっているという。

従来のパワーポイントを使用する方法では、トレーナーの側もプレゼンテーションのやり方に苦心していた。丸一日かけてもその技術を習得できないこともあったほどだ。だが、この施設を使えば35分から40分程度のセッションを行い、その後は施設から出てコーヒーを飲みながら中で行ったことについての反省をする余裕があるという。

トレーニングは短縮され、しかも研修生の注意を持続させやすいものになっている。既に150人がこの施設を使った研修を受けており、評判は上々のようだ。

 

複数の研修生が同時に体験できる施設なので、VRヘッドセットを使用するのではなくプロジェクターを使って360度の壁面に映像を投影する。このトレーニングセッションによって仕事とイメージのギャップを埋めることができるなら、せっかく訓練を終えた作業員がすぐに辞めてしまうということも少なくなるのではないだろうか。

 

参照元サイト名:Computer Weekly
URL:http://www.computerweekly.com/news/450418221/Sewer-maintenance-company-uses-virtual-reality-for-training

参照元サイト名:Lanes Group plc
URL:http://www.lanesgroup.com/lanes-utilities/

参照元サイト名:Igloo Vision
URL:http://www.igloovision.com/

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。