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Microsoft Research、より「自然に見える」ARグラスのプロトタイプを発表 - VR Inside

Microsoft Research、より「自然に見える」ARグラスのプロトタイプを発表

     

Microsoft Researchは、同研究所のブログ記事において、より「自然に見える」ARグラスのプロトタイプを開発したことを発表した。

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「普段使い」ができるARグラスを目指して

同研究所が発表した「より自然に見える」ARグラスは、大別するとふたつの目標を達成している。ひとつは「デバイス自体が自然に見えること」、もうひとつは「デバイスが実現するARホログラムが自然に見えること」である。後者の目標は、さらに4項目に細分化される。

以下では、合計して5つの達成した目標について解説していく。

デバイス形状の改善

将来的にARグラスを「普段使い」するためには、既存のメガネとさほど大きさと形状が変わらないことが望ましい。こうした観点から見ると、現在開発版がリリースされているHololensは「最先端ガジェット」然としたデザインなので、とても普段使いできるようなものではない。

一般にARデバイスの大きさは、実装しようとする視野角によって大きく左右される。例えば、かつてのGoogle Glassのようにメガネ型を採用した場合、そのレンズの大きさによる制約から水平方向に20°程度の視野角を実現するのが限界である。反対に視野角を80°以上確保しようとすると、もはやメガネ型では不可能でHololensのようなバイザー型あるいはヘルメット型となる。しかし、バイザー型やヘルメット型のARグラスは業務用としては使えたとしても、とても「普段使い」できるようなものではない。

発表されたARグラスは、メガネ型でありながら80°の視野角を確保することに成功した。また、視野角の範囲内であれば、細かい文字列を視認できるほど視界が「良好」である(トップ画像参照)。トップ画像にあるような形状ならば、「普段使い」に耐えれそうである。

描画機能の向上

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Hololensのデモ動画を見ればわかるように、既存のARデバイスが描画するホログラムは、例えばOculus RiftやVIVEのようなハイエンド型VRヘッドセットが実現するグラフィックに比べれば、低解像度かつ低コントラストであり、ぼんやりとした印象を受ける。

同ARグラスはグラフィック性能の向上も図られ、上の画像のように高解像度かつハイコントラストな画像の描画を実現した。もっとも、このグラフィック性能はPCと接続してグラフィックカードを使用しければ実現しない(ちなみに上の画像にはNVIDIA GeForce GTX 980 Tiを使用)。また、グラフィックボードを使う限りではあるが、90〜260 Hz(1秒間に90〜260回描画)も実現している。

「収差」の改善

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ARグラスの「収差」も改善された。「収差」とは、簡単に言うとレンズの焦点が合う性能のことだ。「収差」がよいレンズは、1点に光が集まりやすく、反対に「収差」が悪いと光の焦点が合わないため、レンズから見える像がぼんやりしてしまう。

上の画像のうち左上のものは、既存のARグラスを使って格子をホログラム描画したものである。収差があまりよくないので、格子が微妙にぼんやりと見える。

右上の画像が、改善されたARガラスを使った格子を描画した画像である。収差が改善された結果、1ピクセル単位での焦点合わせが可能となったので非常にクリアに見える。

以上に説明した画像の下にある画像は、改善されたARグラスでドラゴンをホログラフィック表示したものだ。描線がくっきりとしているのがわかる。

「自然な」焦点移動

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収差が改善されたことに伴い、焦点移動時の画像処理もより自然になった。

本来のヒトの視力では、視線の焦点を合った場所の周辺はクリアに見え、焦点から離れるにつれてぼんやりと見える。対して、従来のARグラスではこの焦点を中心とした段階的な描画処理が困難で、ホログラフィック・オブジェクトのどこを見ても「クリア」に見えてしまう不自然さがあった。この不自然さが解消されたのだ。

上のホログラフィックなドラゴンの画像は、手前から奥に向かってドラゴンの胸部、胴体、尻尾とユーザーからの距離の異なる3点に焦点を合わせた時の描画を示している。各箇所に焦点が合っている場合は「In Focus」の画像が示しているようにクリアに見える一方で、焦点の合っていない他の箇所は「Out of Focus」のようにぼんやり見える。

ちなみに、こうした焦点移動の機能は、最近Oculus社の研究所Oculus Reserchが「Focal Surface Display」という機能で発表している。ただし、この機能はARグラスではなくVRヘッドセット向けのものである。

視力矯正機能

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「自然な」ARグラスとは、視力矯正用メガネを使用しているヒトも「自然に」使えなければならない。つまり、ARグラスを通常のメガネに「重ねがけ」するようでは「不自然」極まりないのだ。そのため、ARグラス自体に視力矯正機能が求められる

ARグラスに実装された視力矯正機能を説明したのが、上の画像である。

まず、上の画像の左側は、正常な視力のヒトから見えるホログラフィックなドラゴンの画像である。細部までクリアに見えていることがわかる。中央の画像は、乱視のヒトから見えた画像である。ちょうど「収差」がよくない画像のように、微妙に焦点が合っていないため、ドラゴンが「ブレて」見える。右側の画像が、乱視による「収差」のずれを補正したドラゴンである。この画像を見ると、正しい「収差」によって見える左側の画像と差がないことがわかる。

以上がMicrosoft Researchから発表された「最新」のARグラスの性能である。同ARグラスは、直接的にはHololensの開発とは関係を持っていない。しかしながら、プロトタイプではありながら「自然な見え」を実現しているARグラス開発のノウハウが、将来リリースされるであろう「製品版」Hololensに生かされるであろうことは想像に難くない。

なお、以上の説明をまとめた動画も存在するので以下に引用する。

ちなみに、同ARグラスは2017年7月30日から8月3日までアメリカ・ロサンゼルスで開催されるSIGGRAPHで発表される予定だ。

より「自然に見える」ARグラスのプロトタイプを開発したことを発表したMicrosoft Researchのブログ記事
https://www.microsoft.com/en-us/research/blog/holograms-future-near-eye-display/?ranMID=24542&ranEAID=TnL5HPStwNw&ranSiteID=TnL5HPStwNw-Fd0L9l0z5D5eZ8_9mI4FzQ&tduid=(aea1598da0d44ade2607787dd49ced9a)(256380)(2459594)(TnL5HPStwNw-Fd0L9l0z5D5eZ8_9mI4FzQ)()

上記ARグラスのプロジェクトページ
https://www.microsoft.com/en-us/research/project/holographic-near-eye-displays-virtual-augmented-reality/

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吉本幸記

Writer: 千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com