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アメリカ・イリノイ大学、「目が疲れない」VR・AR対応レンズを開発する技術を発表 - VR Inside

アメリカ・イリノイ大学、「目が疲れない」VR・AR対応レンズを開発する技術を発表

     

海外メディアPhys.orgは、目が疲れないVR・AR対応レンズを開発する技術を紹介した。

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VR・ARデバイスを使うと目が疲れる原因は?

同メディアは、アメリカ・イリノイ大学のLiang Gao氏が発表した「目が疲れない」VR・AR対応レンズを開発する技術に関する論文「正しい深度を伴う接眼三次元ディスプレイにおける光学的マッピング」について、その概略を紹介した。

VRヘッドセットでVRコンテンツを一度でも体験してみたら分かることなのだが、VRヘッドセットのレンズを通してモノを見続けていると、見ているモノが目まぐるしく動いていなくても、「目が疲れて」しまうのである。この「目の疲れ」はVRオブジェクトの動き方に関係する「VR酔い」とは別の現象である。

この目の疲れの原因として考えられるのが、「適合的眼球離反運動の不一致」(英語表記:Vergence-accommodation conflict)と呼ばれる現象である。この現象は、実のところ、本来ディスプレイという平面的なモノに表示されたオブジェクトがレンズを通して見ることによって、立体的なモノのように見える現行のVRヘッドセットの根本的な仕組みに根ざしたものである。

もう少し具体的に説明すると、現在のVR・ARテクノロジーにおいて、リアルなオブジェクトが存在しないにもかかわらず、奥行きのあるバーチャル・オブジェクトが見える仕組みとは、左右の目の焦点が合うより遠方に「ズレ」に関する視覚情報を生成して、目の焦点があう距離にバーチャルなオブジェクトが現れるように脳に錯覚させている、と説明できる(下の画像参照)。

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こうした仕組みは、VR・ARに限らず、紙に印刷された模様を目の焦点を外してみると立体的な図形が浮かび上がる現象にも共通している。

上述のような仕組みだと、両眼が知覚している視覚情報がもっている奥行きと、脳が立体視するバーチャル・オブジェクトがもつ奥行きは原理的に一致しないことになる。この不一致こそ「適合的眼球離反運動の不一致」である。

この不一致がVR・AR体験時に伴う「目の疲れ」の原因だとすると、バーチャルオブジェクトを立体的に見えるようにしている現行のVR・ARテクノロジーを根本的に変えなくてはならないことになる。

画像の光学的マッピングとは?

Liang Gao氏が発表した新しい方法では、「適合的眼球離反運動の不一致」の回避と立体的なバーチャル・オブジェクトの知覚を両立させるために、画像の光学的な分解と再構成を行う。この分解と再構成こそが「光学的マッピング」である。

画像を奥行の異なる部分に分解

光学的マッピングにおける分解処理は、まず平面的なディスプレイに表示されたバーチャル・オブジェクトを複数の奥行の異なる画像に分解することによって実行される。分解する際、後で画像を再構成することを見越して、各分割画像の中心がユーザーの視線に揃うように整列する。

以上のような画像分解処理を図示したのが、本記事のトップ画像である。この画像において、いちばん奥に見える4ヵ国の国旗が組み合わさった画像が分解前のモノ、図解画像なかほどにある整列した4つの国旗が分解画像である。

この画像分解処理によって、目で見ている平面的知覚と脳が構成する立体的知覚の奥行情報が異なることで生じる「適合的眼球離反運動の不一致」を回避するのだ。

分解された画像を再構成

だがしかし、分解された画像のままでは本来ユーザーに見せたいバーチャル・オブジェクを見せることはできない。分解した画像を再びひとつの画像に再構成しなければならない。だがしかし、奥行きが異なる画像をどのようにしてひとつの画像に戻すのか。

奥行が異なる画像の再構成には、同氏が実験によって得たヒトの視覚に関する性質を利用する。その性質とは次のようなものである。

例えば視界に手前から奥に向かって自動車が並んでいるとしよう。その自動車の列を実験用のレンズを通して見ることにする。このレンズはピントを自由に変えることができる。レンズを調節して、手前の景色がぼけやるように見せると、ヒトは自然と奥の自動車に目の焦点が合うようになる。反対に奥の景色がぼやけると、ヒトの目の焦点は手前の自動車に合うようになるのだ。

以上の現象から分かることは、レンズの焦点を変えることでヒトの目の焦点を意図的に変えることができる、ということである。

Liang Gao氏は、こうしたレンズを用いたヒトの焦点変化を奥行の異なった画像の再構成に応用したのだ。その結果、元々はひとつの奥行情報をもっていたバーチャル・オブジェクトを奥行の異なる画像に分割しても、元の状態のように見せることに成功したのだ。

もっとも現時点では、以上のような「光学的マッピング」を活用してVRヘッドセットを開発する段階には至っていない。しかしながら、こうした基礎技術に関する研究が蓄積されることによって、一般消費者の使うVR・ARデバイスがより「リアル」かつ「自然」な体験を提供できるようになるのだ。

目が疲れないVR・AR対応レンズを開発する技術を紹介したPhys.orgの記事
https://phys.org/news/2017-06-d-eye-fatigue-virtual-reality.html

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吉本幸記

Writer: 千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com