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「バーチャルなオブジェクトに触れるため」指にはめるタイプの小型ハプティックデバイスが研究される - VR Inside

「バーチャルなオブジェクトに触れるため」指にはめるタイプの小型ハプティックデバイスが研究される

     

指先にはめる指輪型デバイス

指輪型デバイスでVRオブジェクトに触れる

VRは見て、聞いて、コントローラーでキャラクターを操作して遊ぶだけの空間ではなくなってきている。ユーザの身体に取り付けるタイプのハプティックデバイスが開発されており、各種デバイスを使えばVRコンテンツに登場するオブジェクトに触れることもできる。

ARも同様だ。ポケモンGOで登場するキャラクターは現実の風景の上に重ねて表示されるだけだったが、ハプティックデバイスを使えばユーザの動作に直接反応するような動きを作ることも可能になる。

ただ、多くのハプティックデバイスは大ぶりでゴツいのが難点だ。手袋型のデバイスで手を覆ってしまうと上手く手が使えないので、ARでは不便になる。

小型で、手の動きを制限しないようなデバイスの研究が進められている。

リアルとバーチャルに触れる

AxonVRのシステム

AxonVRのシステムは、「外骨格」で身体の動きを制限してしまう

本格ハプティックシステムの例

上の画像は、VR空間の温度までも感じられるフィードバックのプラットフォームを構築しようとしているAxonVRのシステムだ。AxonVRは圧力の再現からさらに一歩先を行く。全身を覆う外骨格によって場所による地面の硬さの違い、物体に触れたときの熱さや重さまで感じることを目指している。

こうしたフィードバックシステムが開発されれば、VRと現実の境目すら曖昧に感じられるだろう。VR用途のデバイスとしては、一つの完成形と言えそうだ。

だが、このシステムを使っていると完全にバーチャルリアリティに入り込んでしまう。ARを使いながらリアルの世界で何かをするためには、もっと小さくて扱いやすいデバイスの方が適している。

小型ハプティックデバイスの研究

イタリア、シエーナ大学のロボット工学者であるDomenico Prattichizoがチームのメンバーとともに研究しているのは、指先にはめるタイプのハプティックデバイスだ。

彼らが研究しているデバイスは小さく、身体を覆ってしまうことがない。そのため、リアルのオブジェクトとバーチャルなオブジェクト、両方を同時に意識することが可能だ。

論文の執筆に向けて、彼らは二種類のデバイスを開発した。

一方は、指先にフィットするタイプだ。ちょうど指サックのようにはめて使う。

三つの微小なモーターと連携して指を押すための非常に薄いパッドが付いている。パッドは非常に薄く、指にはめたままものをつまめるほどだ。だが、存在しないオブジェクトに触れていると感じさせられるくらいには存在感がある。

もう一方は、指輪のように指にはめるタイプだ。当然指先はフリーになるので、自由に実在するものに触れることができる。

リング部分にはモーターが搭載されており、これが指の皮膚をひっぱる。モーターによって指をひかれる感覚と、視覚からのフィードバックが組み合わさることで物体に触れているという感覚を作り出す。

デバイスを用いたテスト

彼らは二種類のデバイスを使って三つのテストを行った。

一つ目のテストは、リアルでチョークを握り、バーチャルな黒板に文字を書いてもらうものだ。被験者は何も付けない状態、サック型デバイスを付けた状態、リング型デバイスを付けた状態で同じ動作を行った。

どちらかのハプティックデバイスを着用すると、何も付けていない場合に比べて75%もトラッキングの誤差が減少した。参加者からの報告でも、「デバイスがある方が上手く動かせる」という感想が出た。

追加試験では、これらのデバイスより上手くチョークをコントロールできる方法も見つかった。メカニカルアームを使う方法がそれだが、このアームはウェアラブルデバイスではないので別な不便さがある。

二つ目のテストでは、リアルなブロックの上にバーチャルなブロックを配置し、それを移動させるという動作を行ってもらった。このときも、ハプティックデバイスを使うと30%のスピードアップがみられた。

最後のテストでは、四角形の厚紙を持ち、その上に乗ったバーチャルなボールを指定された場所に転がすという動作を行った。

ボールの重量を感じさせるハプティックフィードバックが存在する場合、45秒の制限時間内により多くのターゲットへとボールを当てることができた。この実験に限っては、リング型よりも指サックタイプの方がわずかに優れているという結果が出ている。

論文への声

本棚

この論文に対しては、マドリードのレイ・フアン・カルロス大学でコンピュータ科学を研究するMiguel Otaduyが「バーチャルでのタッチに関する革命」だとコメントしている。

これまでのハプティックフィードバックを与えるデバイスと違って、Prattichizoが実験に用いたデバイスならばリアルな物体にも同時に触れることができる。これによって、医師がARデバイスで情報を表示しながら実際に手術を行うといったことも可能になる。

触覚を含めて思い出を記録・再生することもできそうだ。これは高齢者向けのリハビリプログラムなどに活用されるかもしれない。

Prattichizoは、ウェアラブルデバイスに振動機能を追加することで物体の質感までも再現しようとしている。また、オブジェクトの重さを感じさせるための別なデバイスの開発にも取り組んでいるという。

こうしたアイデアのいくつかは、彼の会社であるWEARTから形になるかもしれない。

 

VR用のハプティックデバイスならば、リアルを遮断できるのは優れた点と言える。しかし、ARをより現実的にするためのハプティックデバイスはリアルとバーチャルを同時に扱えることがポイントになるようだ。

動画などもなく、Prattichizoが実験で使っているデバイスがどれほど本物らしい感覚を再現できるのかは不明だ。だが、彼は製品化も狙っているようなので続報を待ちたい。

 

参照元サイト名:Science
URL:http://www.sciencemag.org/news/2017/04/finger-devices-let-users-touch-objects-virtual-reality

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。