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イギリスのホスピスでVRが試験中 - VR Inside

イギリスのホスピスでVRが試験中

     

ホスピスの入所者がVRを使う

VRヘッドセットを使うホスピスの入所者

病院や高齢者のための施設では、VRを利用する例が増えてきている。身体が不自由な患者でも、VRならば気軽に旅行の体験ができる。認知症の患者にVRコンテンツを見てもらうことで、気分が安定したり過去の記憶が呼び覚まされたりという例もあるようだ。

こうした効果が期待できるのは、ホスピスで過ごす利用者たちも同じである。イギリスのホスピスでは、終末期の患者にVRを使って仮想世界を体験してもらう試みが行われている。

LOROSホスピスの取り組み

The London Economicでは、レスターのLOROSホスピスが行っている取り組みを『ブラックミラー』のサン・ジュニペロのエピソードのようだと例える。ブラックミラーは、Netflixで公開されているSFドラマである。

LOROSホスピスでは、VRゴーグルを使って重い病を負った患者をビーチや森、あるいは彼らの思い出の場所に連れ出す試みをしているのだ。

体験者の声

John Leeは、Motor Neurone Disease(MND/運動ニューロン病)の患者だ。MNDにはルー・ゲーリッグ病とも呼ばれる筋萎縮性側索硬化症(ALS)などがあり、運動ニューロンが正しく信号を伝えなくなることで身体が動かせなくなってしまう。

70歳の彼は、LOROSで初めてVRゴーグルを使用した患者となった。彼はVRゴーグルを使って、かつて訪れたことがある地元レスターの公園を訪ねた。彼は360度映像の中で公園を「散歩する」ことができたという。

Leeはその体験を説明する。VRで公園を訪れるとすぐにリラックスでき、実際にそこに居るかのように感じられたという。彼は、通り過ぎていく人に手を振るのも現実とほとんど同じくらい素晴らしい感覚だと表現した。

「MNDと診断されてからも、外に出られないわけではありません。しかし、長時間車椅子から離れて過ごすことはできません。

VRゴーグルを使ってこうした経験ができるのは、本当に素晴らしいことです」

経営者の考え

LOROSホスピスのCEO、John Knightは
「LOROSは親しみやすい地域の映像を治療ツールとして利用する、国内で初めてのホスピスだ」
と語った。

「研究によれば、脳は最初の20秒でVRを受け入れます。その後は、全ての経験が現実と同様に認識されるようです。

ホスピスの入所者には病気によって行動を制限されている方が多くみえます。そういった方に仮想現実を通して制限の無い生活を楽しんでもらいたいと考えていました」

ホスピスを運営するKnightは、外出が難しい入所者や寝たきりの入所者を多く見てきたはずだ。こうした入所者のために取り入れたVRだったが、その反響は想像以上のものだったようだ。

「Johnを含む体験者からの感想は、驚くべきものでした。ブラッドゲートパークを歩く、それだけの経験が彼にとってどれほど大きな意味を持つのかを知ることができます。

それは、彼が病気と診断されてから二度とできないと考えていたことなのです」

最後の時間をよく生きる

彼岸花

LeeはLOROSホスピスがあるレスターの公園をVRで散歩していた。コンテンツはレスターを舞台にしたものだけに留まらず、さらに拡充される予定だ。

ビーチを散歩するVR映像なども作成が予定されている。こうしたコンテンツのライブラリは、他のホスピスでも利用されることを想定して作られる。現に、国内の他のホスピスでも利用されているコンテンツがあるようだ。

サリー州ケーターハムにある高齢者施設Glebe Houseの管理人、Kim DalvarezもVRゴーグルを優れた存在だと考えている。

「私はVRゴーグルが高齢者施設で利用されるようになることを期待しています。それは人々を元気づけるものになるでしょう。

不快で恐ろしいものだと考える人もいるかもしれませんが、全ての人がそうであるわけではありません」

ホスピスや高齢者施設で暮らしている人々にとっては、近所の公園を歩くことさえも「二度と出来ないはずの経験」になることがある。VRによってバーチャルであってもそれを体験できるならば、彼らの生活を大きく変えることができるはずだ。

ホスピスは怪我や病気が治れば退院する病院とは異なり、「死ぬまでの時間をより良く生きるための施設」という面がある。入所者が少しでも快適に、楽しく最後の時間を送るための道具としてVRゴーグルが活用されていくことだろう。

このVRプロジェクトはTS Shipman Trustの資金提供を受けており、LOROSは他のホスピスや高齢者施設向けのコンテンツも制作したいと考えている。

 

参照元サイト名:The London Economics
URL:http://www.thelondoneconomic.com/must-reads/uk-hospice-trials-black-mirrors-san-junipero-concept/02/05/

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。