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VRは肉体的ハンディキャップを持つ人の「世界」になれるか - VR Inside

VRは肉体的ハンディキャップを持つ人の「世界」になれるか

   

海と地球のイラスト

Back Channelが障害を持つ人々とセカンドライフの関わりを伝えた。かつてソーシャルの未来と目されたセカンドライフは、今も障害のある人々にとって大切な交流と生活の場となっている。VRも彼らにとって大切な世界となる可能性がある一方で、現在あるセカンドライフのコミュニティへの影響も心配されている。

セカンドライフの過去と現在

2006年のセカンドライフ

2006年、セカンドライフの会員数は世界110万人に達した。コミュニティは活発で、ゲーム内でものを売って現実に収入を得ているユーザも居た。メディアでも頻繁に取り上げられており、『The Office』や『CSI:Crime Scene Investigation』といったテレビ番組でも言及された。

セカンドライフがソーシャルメディアの最終形態であり、あらゆる人がそこで過ごすようになると考える人も居た。一方で、バーチャルな世界に夢中になることを心配する声もあった。だが、どちらも考え過ぎだった。

ゲーマーは、新たなプラットフォームに目を向けている。開発者も、3DVRに力を入れるようになった。

セカンドライフの会員数は横ばいである。それを尻目にFacebookが躍進した。

現在のセカンドライフ

現在では、多くの人がセカンドライフの存在をすっかり忘れてしまっている。セカンドライフを運営するLinden Labによれば、アクティブに活動しているユーザは月に80万人ほどだという。しかし、Facebookのアクティブユーザ18億8,000万人に比べると非常に少ない。

Facebookに比べてユーザ数は少ないものの、活発に交流が続いているコミュニティもある。障害のある人々のためのコミュニティだ。視覚障害や聴覚障害、自閉症やPTSDといった情緒障害、パーキンソン病や脳性麻痺、多発性硬化症によって運動能力に制限がある人のコミュニティがある。

障害者の割合に関する公式の調査は行われていないが、Wagner James Auはユーザの20%が障害を持っているのではないかと推定している。Wagner James Auはセカンドライフに関する複数の著作がある作家だ。もっと割合が多く、50%近いのではないかというアクティブユーザの意見もある。

セカンドライフには、一般的なゲームと異なる特徴もある。

オンラインゲームや箱庭ゲームではキャラメイクで外見を自由に決められるが、セカンドライフのアバターもカスタマイズ性が高い。ゲーム内で歩き、走り、空を飛んだりテレポートして移動できる。自分の家や島を1から作り上げ、仮想の店舗で様々な商品(乗り物のパーツから鳥の鳴き声や人魚のように泳ぐスキルまで)を売買できる。ゲーム内で結婚するのも、ロケットで月に行くのも、夜になったら寝るのも自由だ。

セカンドライフで一日に12時間以上を過ごせるような障害者の場合、重要な出来事はセカンドライフで起きる。交流もセカンドライフを使う。彼らにとっては、まさに世界そのものとなっている。

障害者コミュニティ

セカンドライフで最大の障害者コミュニティ(VAI)は、ゲーム内の五つの島からなる。この島には階段がなく、スロープのみでデザインされている。

VAIの本島には、ゲームを始めたばかりの人に操作方法やカスタマイズ法を教えるウェルカムセンターが用意されている。また、もう一つの島ではボイスチャットではなくテキストで会話する。これは耳が聞こえないユーザのためだ。障害者の芸術作品を展示する美術館もある。

現在のVAIには、1,000人のメンバーがいる。彼らは週に数十件のイベントを開催している。内容は、ゲームやダンスパーティーから自己啓発セミナーまで多岐に渡る。

ただ、こうしたコミュニティの動きを複雑に感じるユーザも居るようだ。障害者だけでコミュニティを作ってしまうのはもったいない面もある。セカンドライフでは相手に障害があることが分からないので、障害抜きに人との交流が可能な場としても利用できるからだ。

VRへの期待と不安

セカンドライフはかつて、名前の通りに「もう一つの人生」になるのではないかと話題だった。今度はソーシャルなVRが「もう一つの世界」になるのではないかと言われている。

セカンドライフを今も利用しているユーザにとって不安なのが、サービス終了の可能性だ。VRでセカンドライフに似たゲームが登場しても、単純にそちらに移動するのは難しい。

身体の麻痺があるユーザの場合、全身を使ってアバターをコントロールするのが難しい。聴覚障害者は音で周囲の状況を把握したり、ボイスチャットに参加したりできない。サービス開始から時間が経って、身体障害者のために補助ツールが多数作られているセカンドライフからの移民は、かなり慣れが必要だ。

VR機器のコストも馬鹿にならない。障害を持つユーザのほとんどは仕事が限られており、収入にも限りがある。もちろん、これまでにゲームに投資した時間とお金も帰ってこない。

一方で、VRに期待するユーザも居る。指先でキーボードを使うのが難しいユーザにとっては、セカンドライフよりもVRの方が向いているかもしれない。また、3Dで身体を動かすイメージができることで、2Dよりも高いリハビリ効果を期待できる。

2Dの仮想世界と、VR世界にはそれぞれの利点がある。上手く共存していってくれるのが望ましいが、タイトル同士の争いという面もあるので調整は難しくなりそうだ。

セカンドライフを運営するLinden Labによれば、収益は好調だという。すぐにサービスへの影響が出ることはなさそうだが、同社がVR版セカンドライフとも言えるSansarに力を入れるようになればどうなるかは分からない。

ユーザの事情も様々なので、全ての人を満足させることはできない。それでも、音声と文字両方のインタフェースを用意したり、コントローラーとキーボードに両対応したりといったことはできる。少しでも多くのユーザが楽しめるようなVRコンテンツができていくことを期待したい。

 

参照元サイト名:Back Channel
URL:https://backchannel.com/first-they-got-sick-then-they-moved-into-a-virtual-utopia-1dc6c165f3e9#.i1nedusyu

 

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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