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没入感を生み出すのは空間設計力!VR業界の先駆者を目指すGREE VR Studio徹底インタビュー

2017/09/12 19:30

2016年はVR元年とも言われ、Facebookが買収した事でも話題になった「Oculus Rift」を筆頭に、スマホ向けHMD「Google Cardboard」や、SAMSUNGの「Gear VR ...

2016年はVR元年とも言われ、Facebookが買収した事でも話題になった「Oculus Rift」を筆頭に、スマホ向けHMD「Google Cardboard」や、SAMSUNGの「Gear VR」。

他にも、HTCとゲームプラットフォーム「Steam」でお馴染みのValveが共同開発した「HTC Vive」に、ソニーから発売される「PlayStation VR」など多彩な新デバイスが生まれ始めている。

GREE社にてゲームを体験する筆者

ただ、「Oculus Rift」などの専用機はハイエンドPCが必須のため、海外に比べ、日本での普及は2~3年先とも言われており、市場としては圧倒的に規模が小さい。

スマホ向けHMDに関しても、開発ノウハウや事業としての成功事例が限りなく少ないため、VRに投資する企業も少なく、コンテンツの数もまだまだ少ない。

そんな中、先陣を切ってVR事業を推進しているのがグリーだ。

なぜ、今この市場で攻めの姿勢を見せているのか?その本音を探るため、事業推進担当の清末 太一郎氏と開発プロデューサーである渡邊 匡志氏にお話を伺ってきた。

左が開発プロデューサーの渡邊氏、右は事業推進担当の清末氏

左が開発プロデューサーの渡邊氏、右は事業推進担当の清末氏

 

VR業界の先駆者を目指す

----他の企業に比べ、VR事業に早く参入されたきっかけはありますか?

清末氏:一昨年あたりから事業として検討は開始していましたが、ある企業のHMD体験会にご招待いただき、実際に体験することが出来たのが一番のきっかけですね。

その時取締役である荒木も一緒に体験し、そこからグリーとしてどんな事ができるのか具体的な検討に入り、プロジェクトとしてスタートしたのが、2015年の4月頃になります。

まずは、東京ゲームショウ(TGS)2015への出展を目指して動き始めました。

 

----期間が半年とかなり短いスパンで開発したのですね。

清末氏:はい。始めは荒木、渡邊、開発者もう1名、あと私という4名だけでスタートしました。

TGS向けの出展タイトルである「サラと毒蛇の王冠」は、ほぼ渡邊が作りました。

 

----今までお話を聞くと、意思決定から実際に形にするまで、かなりスピーディーだと思いますが、何か理由があるのですか?

清末氏:元々グリーは、スマートフォン向けのブラウザゲームを事業の中核としてきましたが、昨今のネイティブアプリへの移行の流れには、正直乗り遅れたと感じておりました。

だからこそ、次のゲーム事業のプラットフォームの波は何か考えた時、一番可能性を感じたのがVRでした。

日本のVR市場が成熟するには、恐らく3年程度の時間が必要と予想しています。市場が立ち上がってきた時点で会社として大きな挑戦ができるように、今は開発者の育成をメインに考えて取り組んでいます。

また同時に、我々が重要だと思っているのが、「どうやって一般のお客さまにVR体験を届けていくのか」という点です。

HMDを持っている人は現段階では圧倒的に少ないですし、そもそもVRって一体どんなものなのかを知らない人がほとんどだと思います。

だからこそ、グリーは、デバイスを提供している企業とパートナーシップを組みながら、VRを手軽に体験できる機会を増やしていきたいと考えています。

GREE BizDev 清末氏

 

----協業先はある程度、絞られているのですか?

清末氏:いいえ、基本的には特定の企業に絞らず、マルチプラットフォームでコンテンツを提供していきたいと思っています。

私たちが作るコンテンツは、老若男女、幅広いお客さまに遊んでいただきたいという思いがあるので、幅を狭めるような事は考えておりません。

各デバイスもそれぞれ特徴があるので、その特徴をうまく活かしたコンテンツを作って行く予定です。

 

----開発の立場だと、大変ではないですか?

渡邊氏:昨年、VR事業をスタートしたばかりの段階では大変でしたが、エンジンが出来ていたり、スペックも向上していたり、周辺機器が手軽に手に入るようになってきたりと、以前と比較すると開発しやすい環境にはなって来ています。

 

----そういう点では、既に早期参入した意味は出てきている?

清末氏:そうですね。日本ではVR事業に参入しているパブリッシャーはまだ少ないので、開発ノウハウで先行している弊社にご相談をいただくケースも最近では多いですね。

 

----人財の確保という点では、いかがですか?

清末氏:採用視点でもプラスになっていると思います。現在、GREE VR Studioでは積極的にVR開発者を募集しています。渡邊のようなVR開発をリードできる人材が増えてくると開発ラインも増やせますので、今年~来年にかけてそういった実力のあるエンジニアを増やしていく予定です。

 

没入感は違和感との闘い。求められるのは「空間設計能力」

----今、どのぐらいの人数で開発されていますか?

清末氏:VR専属で開発しているのは10名程度です。

事業面を担当しているのが3~5名で、残りのメンバーはエンジニアとアーティストで構成されています。

また、プロジェクトの規模に応じて、追加で必要な人員のアサインを行っています。例えば、「サラと毒蛇の王冠」を制作していた際は、20~30名のチームで開発を進めました。

GREE ゲームプロデューサー 渡邊氏

 

----スマホと比較した時、技術的に大きく違う点はどんな所でしょうか?

渡邊氏:大きく違うのは、カメラワークやライティング、インターフェイス部分ですね。

あと、スマホVRって複眼なので、レンダリングコストがかなりかかるんですね。通常であれば普通のスマホゲームよりグラフィックが劣化してしまうところ、いかに綺麗に表現するか、という点はかなり苦労しています。

グラフィックが粗いとお客さまの期待と乖離してしまいますので。

 

----他にはどんな技術が必要ですか?

渡邊氏:「没入感」がVRで重要なキーワードになるので、ゲームテーマに説得力を持たすことを可能にする、建築士のような「空間設計能力」が必要だと思います。

カメラワークは、映画のようなダイナミックなアングルではなく、固定アングルなので違和感のないライティング設計が必須となります。

加えて、まるでそこにいるかのような環境音や効果音の配置も重要で、見えていない部分に対しても音響によって臨場感を出すことができます。

またインターフェイス面では、従来の貼り付きのUIをVRで採用すると、途端に違和感につながるので、その点も考慮しながら実装する必要があります。もし、貼り付きのUIを採用するのであれば、3D空間上のディスプレイ上に映すなど、現実世界で存在するものに転換する事で表現し、説得力を生み出さないと没入感を損ねる事につながってしまいます。

 

----既存のUI/UXの考え方がまるっきり変わりますね。

渡邊氏:そうですね。他にも人間の腕の可動域や指の長短も違和感につながってしまう。

頭の中のもっともらしさをVRで表現しなければいけないため、「いかに違和感をなくすか」にかなりの時間を割いています。

 

----ゲームをプランニングする際に重要な事は何ですか?

渡邊氏:世界観設定は重要だと思います。例えば、VRでFPS視点のシューティングを作る場合、アクティブな移動は危険なので、短銃ではなく、あえてスナイパーライフルで遠くの敵を狙うゲームにするなど、動かない・動けないことに対する理由付けをすれば、違和感は解消されると思います。

 

----新たなコンテンツの予定はありますか?

清末氏:いくつか開発を同時進行していて、近日中に1本リリースする予定です。

 

----コントローラーを使ったゲームを作る予定はありますか?

渡邊氏:今後はデバイスの普及につれて必須になっていくと思うので、もちろん対応するつもりです。

ただし、各社コントローラーを発売する予定はありますが、現段階だとHMDとセット販売されない可能性もあるため、なくても遊べるように作る必要がありますね。

 

市場拡大に貢献するJapan VR Summit

----現在、VR事業は研究開発という立ち位置で動いているのですか?

清末氏:いえ、事業のひとつとして着実に収益を出しながら活動していきたいと考えております。

グリーの強みである開発力を活かして、他社との協業や受託案件の開発などで事業として進めながら、VR関連事業会社の皆さまとパートナーシップを組んで、リスク分散しつつ、市場を作っていきたいと考えています。

jvs

その一環として、日本のVR市場の拡大を狙い、VR業界の第一線で活躍する国内外のプレーヤーをゲストに迎えたカンファレンス「Japan VR Summit(JVRS)」を開催する予定です。

狙いとしては、2点あります。

1つ目は、国内外の有力なキーマンと、日本で既にVR市場に参入しているもしくは、参入予定企業の経営者や幹部、開発責任者などに集まっていただき、ビジネスマッチングを促進する事。

2つ目は、海外から日本のVR市場を見たときに、窓口となる人や場所が存在しないため、そういった位置付けのコミュニティを作っていく事。

まずは「市場を作る事」が最重要ですので、このイベントを通じて、市場拡大に貢献していきたいと考えています。

 

VRの雄として既にその存在感を示しつつあるグリー。

今後の市場拡大は、グリー社が先導していく可能性が高いので、今後もっとも注目すべきVR企業だと言えるだろう。

Japan VR Summit開催情報

開催日 2016年5月10日(火)
・9:00~受付・開場
・10:00~19:00セッション・デモ
・19:15~懇親会
会 場 The Grand Hall(品川)
主催 Japan VR Summit事務局
(グリー株式会社 / 一般社団法人VRコンソーシアム)
問合せ先 jp-gi-vr@gree.net

※お申込みは、3月中旬頃から受付予定。

     

     

Ryohei Watanabe


2012年よりスマホゲーム専門メディア「アプリ★ゲット」で記事執筆・編集・メディア運用・アライアンスなどを担当。