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映画チェーンAMCが投資するDreamscape ImmersiveのライバルとなるVRアトラクション

2017/10/02 11:52

施設向けのVRアトラクション

施設向けのVRアトラクション

VRデバイスは個人で購入して娯楽用に利用するだけでなく、商業施設でVRアトラクションを提供するために利用されている例も多い。そしてVRアトラクションを提供する施設は、VRのためだけに建設されたVRアーケードばかりではない。映画館のような既存の施設に顧客を呼び込むための新しい要素としてVRを利用する例もある。

アメリカ最大の、そして世界でも最大規模の映画チェーンAMCは、Dreamscape Immersiveに対する戦略的投資を発表した。Dreamscape Immersiveは商業施設向けのマルチユーザに対応したVRアミューズメントを開発する企業だ。

AMCはAMCの映画館やそれ以外の施設で提供するVRアトラクションを開発するため、同社に対する2,000万ドル(22.5億円)の投資をリードしている。また、特別なVRコンテンツの制作のために1,000万ドル(11.2億円)を投資してもいる。

Dreamscape Immersive

Dreascape Immersive

9月の末にAMCとのパートナーシップを発表したDreamscape Immersive。Dreamscape Immersive自体は今年の1月に設立されたばかりとまだ歴史の浅い若い企業だ。現在はロサンゼルスを拠点にロケーションベースのVRアトラクションを開発しているVRエンターテイメントのスタジオである。

Artanim

同社のVRアトラクションにおいて重要となる技術を提供しているのが、スイスのジュネーブに拠点を置くArtanimだ。Artanimはモーションキャプチャーの専門企業であり、同社の技術によってDreamscape ImmersiveのVRアトラクションではユーザの全身をトラッキングすることが可能となっている。

全身を覆うようなモーションキャプチャースーツを着用する必要はなく、ヘッドセットやバックパック型のパソコン、コントローラーをトラッキングしてユーザの動きを推測する。

ワイヤレスVR

家庭用のハイエンドVRヘッドセットが共通して取り組んでいる課題が、ワイヤレス化だ。

HTC ViveやOculus RiftといったPCベースのヘッドセットはパソコンと、PSVRはPS4との有線接続が必要となる。Viveをワイヤレス化するアダプタなども一部の国で発売されているが、まだ一般的ではない。販売される国が拡大したとしても、約3万円という価格を考えるとすぐにワイヤレスVRが普及するのは難しいだろう。

HTCとGoogle(Vive Focus)やFacebook、マイクロソフトといった有名企業がケーブルの問題も解決することのできるスタンドアロンタイプのヘッドセット開発に取り組んでおり、ワイヤレスVRや外部機器を使わない独立型のVRは2017年の終わりから2018年にかけて業界における一つのトレンドになるとみられる。

現行のVRヘッドセットで質の高いVRを体験しようと思うと有線接続が必要だが、Dreamscape Immersiveのアトラクションではケーブルに煩わされることがない。同社のシステムではVRヘッドセットとしてOculus Riftが使用されているが、バックパック型のPCと接続しているので自由に歩き回ることが可能だ。

マルチユーザVR

もう一つ、Dreamscape ImmersiveのVRアトラクションを特徴付けているのが複数人で利用できる点だ。

家庭用のVRデバイスは一人で使用することが前提となっており、孤独な体験になってしまいがちなことが指摘されている。しかし、Dreamscape ImmersiveのVRはオンラインマルチプレイではなくローカルでのマルチプレイが可能になっている。

最大6人のプレイヤーが広いプレイエリアで同時にVR空間にダイブできる。家庭用デバイスでも対応できそうなワイヤレス化と異なり、ローカルマルチプレイはまだしばらくVR施設の特権となりそうだ。

Dreamscape Immersiveのライバル

Dreamscape Immersiveは家庭用のVRデバイスだけでは不可能なVR体験を提供することができる。AMCから大規模な投資を受けているので、開発に充てる資金も十分だ。オリジナルのVRコンテンツを開発するため、タイトルやキャラクターの権利を持つ企業との交渉も進められているらしい。

しかし、安泰というわけではない。同社のようにロケーションベースのVRを提供する企業は他にいくつも存在している。

The Void

この分野での先駆者的存在であるThe Void。昨年の7月にニューヨークに初めての施設をオープンし、ゴーストバスターズをテーマとした『Ghostbusters: Dimension』が人気となっている。現在はニューヨークだけでなくトロント、リンドン、そしてドバイでも同じコンテンツを体験できる。

このタイトルでVR Awards 2017のBest out of home VR Entertainment部門にもノミネートされている。VR Awards 2017の発表は10月9日(ロンドン時間)に迫っているので、あと一週間ほどだ。

また、8月にはスターウォーズをテーマとしたVRコンテンツ(施設)を開発することも発表された。アナハイムのディズニーランド・リゾートとベイ・レイクのウォルトディズニー・ワールドリゾードに施設を建設し、ホリデーシーズンのオープンを目指すという。

最大4人のプレイヤーがワイヤレスでVRを体験できる施設になる予定だ。プレイヤー数はDreamscape Immersiveの6人よりも少ないものの、技術面が高く評価されたThe Voidの制作する人気作品をテーマとするVRアトラクションということで人気が出るのではないだろうか。

建設場所がカリフォルニアやフロリダのディズニーランドに近い(パーク内にVRアトラクションを作るわけではない)ことも、人気に拍車をかけそうだ。

Zero Latency

The Voidと同様にロケーションベースのVRアトラクションを早い時期から提供しているのがZero Latencyだ。同社のコンテンツは日本でもお台場JOYPOLIS(ジョイポリス)で体験可能となっている。

240平米という広いスペースを使い、Dreamscape Immersiveと同じ最大6人でのVR体験が可能だ。

過去には第一弾コンテンツの『ZOMBIE SURVIVAL』が体験可能だったが、7月15日からは第二弾の『SINGULARITY』が提供されている。ゾンビものから一転SF作品となっているので、グロテスクな表現が苦手なユーザにも安心だ。

このZero Latencyも、The Voidと同じくVR Awards 2017にノミネートされている。もちろん部門も同じBest out of home VR Entertainment部門で、このどちらかが部門賞を獲得する可能性もある。

Nomadic

全てのロケーションベースVRを提供する企業が既にサービスを開始しているわけではない。

後発の企業としては、2018年の初めにサービス開始を目指して動いているNomadicもある。Nomadicの特徴は、導入やコンテンツの変更にかかるコストが小さいことだ。

他のロケーションベースVRを提供する企業では、ゲームに合わせて専用の建物を建設している。それに対してNomadicではモジュール方式を採用し、既存の施設や建物の中にVRゲームのプレイエリアを作ることができる。

過去に香港のショッピングモールで体験イベントが行われた時点ではマルチプレイに対応していなかったが、おそらく正式リリース時にはマルチプレイも可能となるだろう。サービスの開始が遅いだけに、ライバルの優れている点は取り込んでいると思われる。

Presence Capitalなどから投資を受けており、6月には600万ドル(6.7億円)の資金を獲得したことを発表している。

 

AMCという大きな後ろ盾があるDreamscape Immersiveだが、先行するThe Voidやサービスの開始を目指すNomadicのようなライバルもいる。ロケーションベースのVRでも、コンテンツの楽しさやトラッキングの精度を含めた総合的なクオリティが求められるようになっていくだろう。

Dreamscape Immersiveはコンテンツの権利を持つ企業との交渉も行っているようなので、The Voidのスターウォーズに対抗できるような超有名作品のVRアトラクションが発表されるかもしれない。

 

参照元サイト名:Road To VR


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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