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ARとは「環境におけるシンギュラリティ」と考えられるのではなかろうか

ARに関する著名な論客であるJay Samit氏によると、ARとは「環境的なシンギュラリティ」である、とのこと。ARは、ヒトとリアルな世界の関係を決定的に変え、ヒトの生活や知識を根本的に変革するポテンシャルがあるのかも知れない。

海外メディアNextRealityは、Jay Samit氏に対して行ったARに関するインタビューを掲載した。

普及が予想されるARグラス

同メディアは、現在テクノロジー・コンサルティング企業Deloitte Digitalで副議長を務めているJay Samit氏に、ARに関するインタビューを行った。最近、同氏は「AR:3兆ドルの機会」という記事を発表し、ARの論客として注目を集めている。

以下では、同メディアが行ったインタビューの要点を紹介していく。

インタビュアー:私たちは、あなたが考えてられるように、ARを活用したマーケティングを至るところに見るようになるんでしょうか?

Jay Samit氏:昨年、アメリカ人は$100(約¥11,000)以上のメガネを8,000万本買いました。もし、今のメガネにAR機能が追加されたとしたら、そのメガネが8,000万本売れたとしても驚くには値しません

スマートフォンが登場した10年前を思い出してみてください、当時はスマートフォンを買っても実際に使うアプリはひとつかふたつ程度でした。それでも夢中になったのです。ARグラスは、ちょうどスマートフォンが普及したように普及するでしょう

生活を一変させるAR

インタビュアー:なぜ、企業はまだARの採用に及び腰なのでしょうか?

Jay Samit氏:企業がARを活用したソリューションを確立するためには時間が必要なのです。しかしながら、今後12ヶ月のあいだに、とくに小売業に関してARを活用した画期的なソリューションが次々と現れるでしょう。

そんなソリューションの事例を、家の修理に関して挙げてみましょう。

例えば、あなたは壊れた家のスプリンクラーの部品の名前を知らないとしましょう。そんな時は、スマホを手にとればよいのです。

スマホは、スプリンクラーの破損個所を認識し、部品名を教えてくれるでしょう。その部品が近所のホームセンターにあるかどうかも教えてくれるでしょう。そして、その部品が家に届くのを待っていればよいのです。

...部品が家に届いたら、ARグラスを装着してスプリンクラーの修理方法を解説したビデオを見ながら、実際に修理するのです。こうしたことが、もうすぐ実現します。

Hyper Reality、あるいは過剰なAR体験に関する寓話

インタビューでは、未来のAR体験を風刺した動画「Hyper-Reality」が話題になった。

インタビュアー:「Hyper-Reality」は、ARに関して何か警告を発しているように思われますが?

Jay Samit氏:「Hyper-Reality」では、まるで世界全体が点灯しているかのようになっているので、途方に暮れてしまうのです。しかし、ARとは本来、あなたの世界のライフセイバーのような存在であるべきです。

誰だって、世界全体があなたにアドバイスしたり、情報を提供することを望んではいません。バスの後部座席に座っている時、もしも、世界全体がAR体験として押し寄せてきたら?「Hyper-Reality」とは、そんな過剰なAR体験の寓話なのです。

...過剰なAR広告は、騒音のように感じられることでしょう

「環境におけるシンギュラリティ」としてのAR

同氏は、インタビューの最後に、自身のARに対するスタンスとして、以下のようにコメントした。

私がARについて考えていることで強調したいことは、ARとは「環境的なシンギュラリティ(environmental singularity)」であると誰も言っていないことです。

ARが「環境におけるシンギュラリティ」と言えるのは、およそヒトの知識と言えるものはすべて、どんな環境に属しているかによってその価値が決まる文脈依存的なものだからです。

ARが普及すれば、例えばレストランで外国人と通訳なしで話せるようになるでしょう。というのも、ARグラスが相手の言葉に字幕をつけてくれるようになるでしょうから。こうしたAR体験は革命的なものなのです。

以上のコメントで言及されている「シンギュラリティ」とは、「技術的特異点」とも訳される言葉である。この言葉は、一般にはAIがヒトの知能を上回る時に訪れる決定的な変化を論じる時に言及される。

同氏が言う「環境的なシンギュラリティ」としてのARとは、AR体験が普及することによって、ヒトとリアルな世界の関係が決定的に変わる、という意味のように解釈できる。

そして、およそ知識というものが「環境依存的」ということに言及しているのは、知識の価値を決定づける環境をARは決定的に変えてしまうことを示唆しているのだろう。

ARが秘めているポテンシャルが同氏が言うようにヒトと環境の関係を決定的に変える「環境的なシンギュラリティ」であるならば、これからARが普及する過程で起こる出来事とは、極めて「歴史的な」ことになるのかも知れない。

Jay Samit氏に対して行ったARに関するインタビューを掲載したNextRealityの記事
https://augmented.reality.news/news/q-a-with-jay-samit-future-ar-could-be-world-times-square-acid-0178972/

吉本幸記


千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com

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