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ARを用いたストーリーテリングは、従来の映画を大きく変える - VR Inside

ARを用いたストーリーテリングは、従来の映画を大きく変える

     

VRを活用した映画作品が多く登場する昨今、ARを映画に活用する取り組みも行われている。

先日アップルが発表したAR開発キット「ARKit」でのデモで披露されたARストーリーテリングのデモを制作したピーター・ジャクソン氏は、現在ARを用いた新しい映画表現を追求すべく、専用スタジオを立ち上げて開発に取り組んでいる。

ARを取り入れた新しい映画表現

WWDCで披露されたデモでは、iPad Proをかざすと机の上に映画のセットが登場し、リアルなグラフィックによるストーリーが展開されるものだが、同コンテンツをひとつの画面に収録した動画が公開された。

ピーター・ジャクソン氏について

ニュージーランド出身の映画監督であるピーター・ジャクソン氏は、これまでに「ロード・オブ・ザ・リング」や「ホビットの冒険」、「キングコング」などの制作で知られている。

また、プロデュースや脚本執筆もこなす彼は、最新テクノロジーにも強い関心を抱いており、これまでにも特殊効果やダイナミックなCGを駆使した作品を制作してきた。

彼が現在関心を抱いているのはARであり、同氏は専門スタジオを立ち上げて、ARが映画やストーリーテリングにもたらす可能性を追求している。

ジャクソン氏は現在、同氏が設立、運営する映画制作会社、WingNut Filmsに新部門「Wingnut AR」を新設して、ARによってこれまでに体験したことのない映画体験をもたらそうとしている。

WWDCのデモにて披露

ジャクソン氏とWingnut ARは数年にわたって研究を行い、アップルのARKitを用いたAR映画の制作を進めてきた。

そして今年6月に開催されたアップルの開発者イベント「WWDC」において発表されたARKitのデモにおいて披露し、AR映画がもたらす新体験の可能性を示した。

披露されたのは約1分30秒ほどの短いデモだが、AR映画の可能性を示すには十分なものであり、iPad Proをかざすと机の上に映画のシーンが3Dデータとして机の上に重ね合わさり、スムーズで遅延のないコンテンツが展開される。

内容はSF作品であり、地球に襲来したエイリアンの船団が地上に爆撃を行い、地上にいる人々が逃げ惑うというものだ。

WingnutのクリエイティブディレクターであるAlasdair Coull氏は、ジャクソン氏のARに対する高い情熱と、ARを用いたコンテンツの可能性について以下のように語っている。

ピーター・ジャクソンと、彼のパートナーであるFran Walsh氏がはじめてAR技術のデモを見たとき、それが持つクリエイティブな可能性に興奮していました。(中略)ARはこれから主流となる技術であり、2人はこの新技術と、彼らが持つ優れたストーリーテリング技術を融合することを望んでいました。

ARKitとUnreal Engineを使用

今回WWDCで披露されたデモはARKitと、ゲームエンジンのUnreal Engine 4を融合して制作したものであり、ジャクソン氏は作中に登場する人物の動きを、実際のアクターに演技をさせて、その様子をモーションキャプチャーによってデータ化し、これを3Dデータと融合することでリアルなARコンテンツに昇華した。

人間の動きやエイリアンの乗るガンシップの動き、爆発する建物の様子などが、フレームレート60fpsの高精細なグラフィックによって描かれている。

地上を攻撃するエイリアンのガンシップと、逃げ惑う人々の様子がリアルに描かれているが、デモの1分08秒辺りには、エイリアンの空襲から逃げようと机から飛び降りる人も登場する。

VRを用いた映画が高い没入感をもたらすのに対して、ARを用いた映画は、映像を現実世界に重ね合わせることによって、まるでストーリー内の出来事が現実世界で起きているかのように感じることができる。

ARは、VRとはまた違った形で、従来の映画表現を大きく変える可能性を秘めている。

VRを取り入れた映画

VRはARに比べて映画の表現手段に取り入れられたのが早く、現在、多くのクリエイターや映像作家がVRを映画に活用した作品を制作している。

一般視聴者向けの作品もあれば、実験的なものもあるが、代表的なものをいくつか挙げてみる。

Hovering

「Hovering」はVR実験アニメーションで、ジャンル横断して活動するレーベル、79 Ancestorsがプロデュースしている。

アニメーターConor GrebelとミュージシャンShigetoとのコラボレーション作品である"Hovering"は、荒廃した惑星の破壊と創造をテーマにした360度コンテンツで、描かれるストーリーは抽象的だ。

音楽はミュージシャンShigeto制作によるトラック"Hovering"をフィーチャリングしており、ダークで無機質で、しかしユニークで幻想的な雰囲気が特徴だ。

本作はWihinの公式サイトから視聴できる。

Raising A Rukus

Raising A RukusはVirtual Reality Companyが制作したVRアニメーションで、ファミリー向けのアクション、アドベンチャー作品だ。

主人公である双子の兄弟、AmyとJonas、そして彼らのペットであるやんちゃな性格の犬、Rukusが有史以前の恐竜時代にタイムスリップする。

Raising A Rukusには、"Branching Narrative"といい、ユーザーの選択によって物語の進行が変化する、という新しいストーリーテリングの手法が採用されている。

RPGなどで選択肢によってゲームの展開が変わるように、Raising A Rukusのストーリーも視聴者のインタラクションによって展開が変化する。

本作はGear VRで視聴可能で、Oculus Storeからダウンロードできる。

攻殻機動隊 新劇場版 Virtual Reality Diver

攻殻機動隊ARISEの世界観をVRに移植した本作は、流麗なグラフィックと激しいアクションが特徴的なVRコンテンツだ。

約15分間の本作の中で、ユーザーは荒れ狂うロボットや地上めがけてダイブする草薙素子や、攻性防壁の電脳迷路を激しくループするので、VR酔いしてしまう人がいるかもしれないが、VR映画の可能性を極限まで突き詰めた本作は、是非体験してほしいタイトルだ。

視聴はiPhone、Androidスマホ両方から可能で、公式サイトからダウンロードできる。

参照元:VRScout

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daisuke

Writer: ライター兼翻訳家。2016年12月にプレイステーションVRを体験したことをきっかけにVRに関心を持つ。ARやドローン、AIなどの先端テクノロジー全般に興味があり、SF化する世の中にワクワクしています。