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ARコンタクトレンズの可能性

2017/05/25 18:18

ARコンタクトレンズの研究は10年前から行われている。しかし部品の小型化や電力の確保といった問題が解決できておらず、各企業も特許を取得するのみとなっているようだ。ARとの相性が非常に良いスマートコンタクトレンズだが、実用化にはかなり長い時間がかかるとみられる。

ソニーの特許にあるコンタクトレンズ

ソニーの特許にあるコンタクトレンズ

AR技術を使ったデバイスやスマートフォン用のアプリケーションは多数開発されているが、情報が表示されるのはディスプレイである。スマートフォンならば手に持ったディスプレイだし、メガネ型のデバイスだとしても目から数センチ先のディスプレイに情報が表示される。

だが、ARコンタクトレンズならばほとんど目の中に情報を入れていると言っても良い。ユーザがどこを見たとしても、世界の手前に情報を表示する新しいレイヤーが加わることになる。

未来を見たウサギ

実験に使われたコンタクトレンズ

実験に使われたコンタクトレンズ

コンタクトレンズにディスプレイを組み込むという発想自体は、さほど新しいものではない。SF映画や小説だけの話ではなく、今から10年近く前の2008年にはウサギを使って実験が行われている。

目の中の64ピクセル

このとき、ウサギは現在に至るまで人間が誰ひとりとして見たことのない世界を見ていたことになる。ウサギの目には、64ピクセルの表示が可能なコンタクトレンズがはめられていたのだ。

この実験を進めたのは、Google Xのディレクターだった(そして現在はAmazonの副代表となっている)Babak Parvizだ。彼は2015年のインタビューで、「通常見ているものの上にもう一層のレイヤーを重ねることができる」コンタクトレンズの持つポテンシャルの大きさを語っている。

「私に見えるものと、あなたに見えるものが違う看板を町中に設置することもできるようになります。

これは、私たちが身の回りにあるものを見ることを全く異なるものにしてしまいます。本当にエキサイティングな技術です」

インターネット上の広告では、ユーザの閲覧履歴などから年代・性別といった属性や好みを解析し、ユーザに合わせて広告の内容を変える仕組みが使われている。無作為に広告を見せるよりも、ユーザの興味を惹く可能性の高いものに絞って見せたほうが効果的だからだ。

もちろん現実の看板ではこんなことはできないが、誰もがARコンタクトレンズを付ける時代になればこれが可能になる。ある人には最新のVR映画情報が見え、別の人には近くの飲食店の看板に見える…ということもあり得るわけだ。

実現は遠い

Parvizの想像する未来は、まだまだ遠そうだ。彼の実験から10年近くが経った現在でも情報を表示できるコンタクトレンズは実用化されておらず、ユーザに合わせて内容を変える看板も作られていない。

コンタクトレンズに血糖値の検出を行えるセンサーを搭載するスマートレンズプロジェクトはあるものの、AR表示が可能な「スマートコンタクトレンズ」が作られているわけではない。

小さなコインと同じか、それよりも小さいくらいの表面積しか持たないコンタクトレンズにディスプレイを取り付けるのはやはり技術的に困難だ。

特許を取得する企業

瞳のイメージ

彼らが積極的にARコンタクトレンズの開発を行っているかどうかはともかく、スマートなコンタクトレンズの特許を取得している企業はある。

サムスンの特許

サムスンが昨年特許を取得したのは、見ているものを撮影できるコンタクトレンズだ。

処理にはスマートフォンを使用するようだが、レンズにカメラや通信のためのアンテナ、そしてまばたきを検知するセンサーと小さなディスプレイが内蔵されている。ディスプレイは目の中に直接画像を投影する方式だ。

まばたきで操作するという点を除くと、機能はスマートグラスに期待されていたものとほとんど同じだ。スマートグラスをさらに小さくして、コンタクトレンズサイズに落とし込んだものと言えるだろう。

コンセプトは良いのだが、サムスンがこれを実際に研究しているという情報はない。

ソニーとGoogle

サムスンだけがコンタクトレンズにカメラを組み込もうとしているわけではない。ソニーやGoogleも同様に、コンタクトレンズにカメラやセンサーを組み込む特許を提出している。

ソニーが昨年提出した特許は、瞬きでカメラを制御する方法と、その制御部に関するものだ。

Googleはカメラ内蔵コンタクトレンズの特許を取得している。また、コンタクトレンズのセンサーで血糖値を測定するスマートグラスの研究も行っている。これはARコンタクトレンズではないが、その開発に繋がる技術が見つかるかもしれない。

ARコンタクトレンズの困難

コンタクトレンズはメガネよりもはるかに小さいため、あらゆる部品を大幅に小型化しなくてはAR機能を組み込むことができない。通常電子部品に使われている素材とコンタクトレンズを組み合わせることはないため、レンズと部品を正しく組み合わせるだけでも特別な作業が必要だ。

その上、コンタクトレンズは目に直接入れるものなので安全性も大切になる。使っているうちに内部の尖ったパーツが露出した、などということになればユーザが危険だ。

こうした問題の解決には時間がかかるだろう。加えて、現在最も難しいと考えられているのが電源の確保である。

考えられている方法には、瞬きの運動エネルギーを利用するものや涙の化学エネルギーを利用するものがある。しかし、これらの方法で得られる電力はディスプレイや複雑な電子機器を動作させられるほど強くはないとParvizは言う。

低消費電力のLEDが期待されている他、さらに高度な方法でこの問題を解決しようと研究を続けているチームもあるが、実現はいずれもかなり先の話になりそうだ。

特許を取得している企業はあるものの、目の中にARという時代はまだしばらく来そうにない。

 

参照元サイト名:Inverse.com
URL:https://www.inverse.com/article/31034-augmented-reality-contact-lenses

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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