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ビョークのVRミュージックビデオ「NotGet VR」制作の舞台裏

2016/12/21 11:21

    海外メディアThe Creators Projectは、2016年12月18日の記事において、ビョークのVRミュージックビデオ「NotGet VR」制作の舞台裏を紹介した。

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    ビョークは、VR元年と言われる2016年、自らの楽曲を音源として制作したVRミュージックコンテンツを披露するワールドツアーを行っていた。そのワールドツアーの開催地には日本も含まれていて、2016年6月29日から7月18日まで日本科学未来館で「Bjork Digital」展が催されていた。

    同展示会では、Gear VR対応のVRミュージックコンテンツに加えて、VIVE対応ミュージックコンテンツ「NotGet VR」が披露された。同コンテンツが従来の2Dミュージックビデオならびに360°動画と決定的に異なるのは、ルームスケール内での視聴者の移動に連動して、コンテンツがインタラクティブに変化することである。視線の移動だけでなく、視聴者の身体移動ともインタラクションすることによって、同コンテンツは見るだけの「動画」から歌い手と空間を共有する「(VR)体験」となったのだ。

    ただ、ビョークは当時の同コンテンツの出来に不満だったため、その後も制作を継続し、2016年11月2日新たな「NotGet VR」のティザー動画が公開された。

    現代アートの情報を発信している海外メディアThe Creators Projectは、この新たな「NotGet VR」の制作の舞台裏を紹介している。

    技巧の限りを尽くした「超現実的な」VR空間

    制作を依頼されたイギリスに拠点をおくデジタルコンテンツ制作スタジオAnalogは、まずビョークがパフォーマンスを繰り広げるVR空間の素材作りから始めた。

    同コンテンツの基本コンセプトは、「暗闇のなかで踊る歌い手が光り輝きながら、絶え間なく変身を繰り返す」という極めてシュール・リアリズム的なものであった。

    基本コンセプトに沿った幻想的なVR空間を作り出すため映像クリエイターたちは、Houdini、Maya、ds Max、vray、Zbrushといったツールを使って作業を進めていった。

    こうして出来上がったオブジェクトは、(後の工程に関係するのだが)何種類もの異なるバージョンが用意された。

    リアル・パフォーマンスとデジタル素材の融合

    何種類も用意されたビョークのVRスーツ

    何種類も用意されたビョークのVRスーツ

    VR空間が用意された後は、今度はリアルな存在であるビョークのパフォーマンスをデジタル化する工程となる。

    ビョークのパフォーマンスはモーションキャプチャーでサンプリングされた後、VIVEで視聴できるようにVR映像化した。

    クリエイターたちは、このVR動画を何度も見ながらパフォーマンスに対して最適なオブジェクトを多数用意しておいたなかから選び出し、さらにディテールを作り込んでいった。

    なお、オブジェクトの合成と制御にはUnityが使用された。

    ゲームでもなく、動画でもないVR映像体験

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    変身するビョークのために用意された頭部のオブジェクト

    変身するビョークのために用意された頭部のオブジェクト

    「絶え間なく変身する歌い手」を映像作品として完成させるのであれば、ビョークのパフォーマンスとオブジェクトを合成すれば事足りる。しかし、今回制作しているのはVRコンテンツである。

    VRコンテンツとするためにクリエイターたちが出した答えは、「ランダム性のあるインタラクション」である。

    同コンテンツ内で変身するビョークの姿は、見る度に変わるようにプログラミングされている。つまり、変身するパターンが一定ではなく、VRコンテンツを起動する度に異なった変身を行うのだ。こうした文字通り「変幻自在な」変身に加えて、VIVEコンテンツ特有のルームスケールによるとインタラクションが加味されると、視聴者の挙動によってもコンテンツが変化する。

    こうして完成した「NotGet VR」は、一度たりとも同じ体験ができないVRコンテンツとなった。

    同コンテンツは「幻想的な空間で絶え間なく踊り変身する歌い手」というストーリー性=映画的要素と、「視聴者の挙動とランダム性によって内容が変わる」インタラクティブ性=ゲーム的要素を両立させた作品になったと言える。

    制作に参加したArvid Niklassonは「この作品の制作に参加できたいちばんの喜びは、コンピュータゲームでも映画でもない映像体験を追求できたことです」と述べている。

    「NotGet VR」を含むビョークのVRミュージック・アルバムのリリース日等は現時点では不明であるが、VRによるアート表現の可能性を拡張するモノであることは間違いない。

    「NotGet VR」制作の舞台裏を紹介したThe Creators Projectの記事
    http://thecreatorsproject.vice.com/blog/bjork-vr-music-video-notget


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