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Google VR部門リーダー発言「VRとARの違いはデジタル・イメージがユーザーに感じられる範囲の違いに過ぎない」

2017/07/26 19:00

海外メディアRecodeは、Google VR部門リーダーのVRとARに関する発言を報じた。

質的差異はないVRとAR

同メディアが毎週配信しているポッドキャスト「今さら聞けない(英語原題:「Too Embarrassed to Ask」)」に、このほどGoogle VR部門リーダーのClay Bavor氏が出演した。

同ポッドキャストにおいて、同氏は自らの現在位置をVRの最終バージョンに到達するまでの長い旅の始まり、と規定した。

「VRの最終バージョン」という表現で、度々問題となるのはVRとARは将来的にひとつのものとなるかどうか、という疑問である。この疑問は、しばしば「VRとARでは、どちらがより市場的に成長するか」という疑問に関連して問われるものである。というのも、VRとARが将来的にひとつのものになるのであれば、そもそもVR・AR比較論はあまり意味のない議論となるからだ。

同氏は、VRとARの違いについて、以下のように発言した。

VRとARの違いとは、ある同一の範囲における違いなのです。私は、その範囲のことを「没入的コンピューティング(immersive computing)」と呼んでいます。

そもそも、VRとARのレッテル貼りには興味がありません。VRとARの違いはデジタル・イメージがユーザーに感じられる範囲の違いに過ぎないのです。

VRでは、ユーザーが体験する全てがコンピュータによって生成されます。対してARでは、ユーザーがいるリアルな環境にデジタル情報が部分的に付加されるのです。

同氏が言わんとしていることは、次のように解釈できるのではなかろうか。VRもARも、ユーザーに何らかのデジタル情報が与えられる点では等価な体験である。VRとARの違いは、その与えられたデジタル情報がユーザーの体験全体に占める度合いだと考えられる。そのデジタル情報がユーザー体験に占める度合いのことを、「没入的コンピューティング」と呼んでいるのだろう。

VRは、没入的コンピューティングの度合いは100%、すなわちユーザー体験の全体にわたってデジタル情報が与えられている。対して、ARにおける没入的コンピューティングの度合いは、体験ごとに可変な値をとる。ほんの少ししかデジタル情報がAR表示されていないのならば、没入的コンピューティングは数%といった低い値となる。反対に、デジタル情報がリアルな環境をほぼ覆いつくしてしまうようなケースでは、100%に近い値となりVR体験に似たものとなるだろう。

以上のような見解をGoogle VR部門のリーダーが示していることが意味するのは、GoogleがVRとARを対立的に捉えてはいない、ということである。事実、同社はARプラットフォームTangoも開発しており、同社にとって「VRとARはどちらが成長するのか」という疑問は愚問であり、「どちらも成長する(成長させる)」というスタンスであると見て間違いないだろう。

Tango開発リーダーが考えるVRとAR

本メディア2017年1月16日付の記事では、Tango開発リーダーであるJohnny Lee氏の発言を紹介したのだが、同氏もVRとARを対立的に捉えていないことが明白である。

同氏は、今年初頭に開催された世界最大の家電見本市CES 2017において、TangoとDaydreamの両方を実装した世界初のスマホ「ZenFone AR」のリリースに関連して以下のように発言した。

(Tango開発を率いている)私自身、ARゲームはとても好きだし、ARエンターテインメントも楽しんでいます。

しかし、TangoとDaydreamの同時使用が本当に意味することは、MR的なショッピングアプリやユーティリティアプリが現れ、人々のお金と時間を節約することを可能とすることなのです。

「TangoとDaydreamの同時使用」に言及していることから、同氏にとってVRとARは対立するものであるどころか、いずれはひとつに融合するテクノロジーという見解を抱いているように思われる。

ザッカーバーグが考える「フルAR」

FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏も、VRとARは将来的にはひとつに融合するものと考えている。

同氏は、今年4月に開催された同社年次総会「F8」でモバイルARプラットフォーム「Camera Effects Platform」を発表した時に、「ライトAR」と「フルAR」という対概念を披露した。

「ライトAR」とは、スマホを活用した現在体験可能なARのことを意味している。対して「フルAR」とは、HoloLensのような専用のARデバイスを活用した現在のAR体験よりリッチなそれを指している。

同氏によれば、フルARが普及するのは20〜30年後と予想される。フルARにおいては、ARデバイスを使って、現在のVRヘッドセットによるバーチャル体験がリアルな世界にいながら体験できるので、現在のVRとARの区別はもはや意味をなさなくなる、とのこと。

以上のようにGoogleやFacebookといったVR・ARプラットフォーマーのリーダーたちは、VRとARを対立的に捉えてなく、将来的にはひとつに融合するとさえ考えている。そうであるならば、VRとARの優劣を論じるのは了見が狭いと誹りを受けても仕方のないことだろう。

Google VR部門リーダーClay BavorのVRとARに関する発言を報じたRecodeの記事
https://www.recode.net/2017/7/21/16006726/vr-ar-virtual-augmented-reality-clay-bavor-google-cardboard-kara-swisher-lauren-goode-recode-podcast

吉本幸記


千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com

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