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FacebookがVRアバターをリアルにしない理由

2017/07/31 10:30

Facebook Spacesのアバター

リアルとは言い難い『Facebook Spaces』のアバター

VRを使った旅行体験やVRゲーム・VR映画といったエンターテイメントコンテンツでは、まるで本当にその場に行ったように感じられるリアルさが重要視されている。

しかし、Facebookが提供するコミュニケーションアプリ『Facebook Spaces』のVR体験はリアルなものではない。

背景となる空間は現実を切り取った風景からCGで描かれた家具のみで構成されるカラフルな部屋まで自由に選ぶことができるが、いずれにしてもユーザの操作するアバターは漫画チックにデフォルメされたキャラクターだ。

決して実写と間違うようなリアルさはない。

Business Insiderによれば、これは「不気味の谷」を避けるために下された決断だったという。

デフォルメされたキャラクター

Rec Roomアバター

人気VRゲーム『Rec Roon』のアバターもリアルとは言えない

『Rec Room』の例

上の画像は、HTC ViveとOculus Riftに対応する無料のVRゲーム『Rec Room』のものだ。

無料ということもあって評価の高いこのVRアプリはコミュニケーションを重視しているので、ゲーム内で入手した衣装やアクセサリによってアバターをカスタマイズして個性を出すことが可能だ。

だが、やはりアバターにリアルさはない。Facebook Spacesのアバターよりもさらに抽象的になり、LEGOの人型ブロックにも似ている。

Facebookの決断

Facebook SpacesのVR空間で利用されるアバターはユーザの写真を元に生成されたキャラクターで、頭・胴体・手のみが描かれるRec Roomのアバターと違ってきちんと首や腕が存在している。

よりリアルで人間に近い外観にすることもできたはずだが、そうはならなかった。

FacebookでソーシャルVRの責任者を務めるRachel FranklinがBusiness Insiderに語ったところによれば、「不気味の谷」と呼ばれる現象が発生するのを避けるために現在のようなデザインが採用されるに至ったという。

不気味の谷

人間は、より人間らしいものに親しみを感じる。リアルな動物のキャラクターよりも、二足歩行で言葉を話すキャラクターの方が人気があるのもその一例かもしれない。

しかし、「人間によく似ているが人間ではないもの」に対しては不気味さや奇妙さ、さらには恐怖を感じてしまうという。

人型ロボットやVR空間のアバターを人間に似せてリアルに作ってしまうと、この現象が起きることが考えられる。

不気味の谷ははっきり確認された事実というわけではなく、理論の一つだ。ロボット工学の教授が人間の好みを説明するために用いた理論である。

不気味の谷への対応

理論でしかないとは言いながら、ロボットを開発するハイテク企業は真剣にこの問題を捉えている。

使用者とコミュニケーションを取るロボットのほとんどは、人間らしくないデザインだ。フレンドリーで無害そうで、人ではなく機械だということが分かりやすいデザインになっている。

あえて人間から遠い外見にすることで、不気味だと感じさせることを避けているのだ。

バーチャルリアリティのキャラクターやアバターも、ロボットと同様の段階に来ている。リアルすぎるCGのキャラクターは、ユーザに親しみを感じさせるどころか、不快な気分にしてしまうかもしれない。

Facebookはそれを避けるために、Facebook Spacesのアバターをデフォルメされたものにした。

コミュニケーションを重視

Facebookはそもそも、リアルなVR体験を追求するためにFacebook Spacesを開発しているわけではない。Spacesは、Facebookの友人とVR空間でのコミュニケーションを楽しむためのアプリだ。

あえてアバターを非現実的な漫画調のキャラクターにすることでユーザを不安にすること避け、コミュニケーション機能に集中させることができる。

先日のアップデートでVR空間からのライブ配信も可能となり、Oculus Riftを持たないFacebookユーザもフレンドの放送に参加することができるようになったFacebook Spaces。

ユーザがまだVRという新しい技術に慣れていないことも考慮すると、Franklinが言うようにVRが「楽しく、魅力的で、開かれたものである」と彼らに感じてもらうことが重要となる。

誰もがVRを使う時代になればリアルなアバターを使ったコミュニケーションアプリが広まるかもしれないが、Facebook Spacesのアバターがいきなりリアル志向になることはなさそうだ。

 

参照元サイト名:Business Insider France
URL:http://www.businessinsider.fr/us/facebook-virtual-reality-avoids-realistic-avatars-uncanny-valley-2017-7/

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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