地球温暖化による氷河溶解を体験させる360°動画「Greenland Melting」ヴェネツィア国際映画祭で公開 | VR Inside

VR Inside

VR/AR/MRの未来を創るビジネスニュースメディア

地球温暖化による氷河溶解を体験させる360°動画「Greenland Melting」ヴェネツィア国際映画祭で公開

2017/09/18 11:08

    今年のヴェネツィア映画祭では、地球温暖化によるグリーンランドの氷河溶解をテーマとした360°動画「Greenland Melting」が公開された。同動画では、フォトリアルなVRモデルで作られたNASAの科学者が案内役となって、過去の氷河のCGと現在の氷河が合成された景色を視聴することができる。

    海外メディアVRScoutは、360°動画「Greenland Melting」を紹介した。

    氷河が解けるのを「体験」させる「Greenland Melting」

    映画「不都合な真実」の系譜を継ぐ360°動画

    同メディアによると、2017年8月30日から9月9日まで開催されていた世界三大映画祭のひとつヴェネツィア映画祭において、360°動画「Greenland Melting」が公開された。

    地球温暖化をテーマとしたコンテンツで最も有名なのはドキュメンタリー映画「不都合な真実」だろう。この映画の画期的だったところは、グラフや数値といった科学的なデータに訴えるのではなく、過去の写真を参照しながら地球温暖化がまさに現在進行中の出来事であることを感覚的・直観的にわかるように視覚化したところにある。「Greenland Melting」も「不都合な真実」と同様に地球温暖化を視覚的に訴えることを試みている。そして、訴える手段としてVRテクノロジーを使っているのだ。

    うえの動画を見るとわかるように、「Greenland Melting」は単純に現在のグリーンランドにある氷河を360°動画で撮影したわけではない。過去の気象データを参考にして作成した過去のグリーンランドの氷河の3DCGと現在の氷河の景色と重ね合わせて、氷河が解けていく経過をまさに目撃することができる。映像フォーマットが360°動画なので、視聴者は眼前に広がる氷河を視線を動かして見渡すことができる。

    同動画は、解けつつある氷河を見る旅をするという設定で映像が進行する。その旅の案内役にはNASAの科学者のフォトリアルな3Dモデルが使われている。この3Dモデルは、フォトリアルなVRモデリング技術で定評のある企業8iの協力で制作されている。8iの技術は、360°動画のドキュメンタリー映像に多用されており、本メディアでも紹介したことがある。

    (参考記事)
    スミソニアン博物館、IntelらとコラボしたVRミュージアムを開発
    NASA、火星ミッションへ向けてVRを使ったコミュニケーションツールを開発中

    制作者のコメント

    同動画はCatherine Upin、Julia Cort、Nonny de la Peña、そしてRaney Aronson-Rathの4人で共同制作されたのだが、4人は共同で同動画に関して以下のようなコメントを発表している。

    VRとジャーナリズムを結合させることによって、わたしたちは気候変動を図解し、視聴者に北極海の美しさとその姿が急速に変化していることを目撃して欲しかったのです。

    動画を視聴することによって、視聴者は遠くにあるグリーンランドを訪れて、案内役のNASAの科学者とともにまだ始まったばかりではあるが深刻化する地球温暖化という問題に没入することができます。この没入感は、2Dフィルムでは実現不可能なものです。

    VRは視聴者をフィルムから解放しシーンに投げ込むのですが、(映画のすべてを支配するという)映画監督の特権をはく奪してしまいます。しかし、視聴者が見るものを選べるからこそ、気候変動という社会が直面している緊急の問題に視聴者を巻き込むことができるのです

    環境問題を「体験」させる360°動画

    「Greenland Melting」の制作者が述べているように、2D動画が出来事を「見せる」のに対して360°動画は「体験」させるという決定的な違いがある。そして、出来事を体験させる360°動画をジャーナリズムに活用したコンテンツはとくに「イマーシブ・ジャーナリズム」と呼ばれる。イマーシブ・ジャーナリズムには、内戦の続くシリアの惨状を伝えるものもあるが、「Greenland Melting」のように気候変動や環境保護を訴えるものもある。

    Under the Canopy

    360°動画制作と配信を手がけるJauntは、360°動画「Under the Canopy」を今年のサンダンス映画祭およびSXSWに出品した。

    同動画は、アマゾン河流域の自然とその住人、そしてアマゾン河における森林伐採の実態を題材としている。タイトルにある単語「canopy」は「樹冠」と訳すことができ、邦題をつけると「樹冠のもとで」とでもなろう。

    同動画を視聴すればわかるように、アマゾン河には神秘的ですらある鬱蒼とした熱帯樹林が広がっている一方で、毎年アメリカにあるイエローストーン国立公園の面積の1.5倍に相当する森林が失われている。ちなみに同国立公園の広さは8,980平方km、東京ドームは46,755平方mであり、文字通り桁はずれの広さである。

    Fish Avatars

    360°動画がヒトの心理に与える影響について研究しているアメリカ・スタンフォード大学は、海洋汚染を直接的に体験できるVRコンテンツ「Fish Avaters」を制作した。

    「ヒトに対する思いやり」とは何かと問われたとき、多くのヒトは「相手の立場になって考えること」と答えるのではなかろうか。

    「Fish Avaters」は、こうした「思いやり」を魚に対しても抱かせようとする。その「思いやり」を抱かせる方法とは、「実際に魚の目線で海底を体験させる」のだ。こうした魚の体験をするために、VRテクノロジーを使う。

    以上に紹介した教育的なVRコンテンツは、徐々に増えてきている。近い将来、教育的なVRコンテンツが学校の必修コンテンツになるかも知れない。

    360°動画「Greenland Melting」を紹介したVRScoutの記事
    https://vrscout.com/news/greenland-melting-vr-global-warming/

    吉本幸記


    千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com

    最新ニュースを読む