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VR&ARにおける3D音響の科学的背景と3D音響を効果的に使ったアプリ事例

2017/10/27 16:13

海外メディアVRScoutは、VRとARに使われている3D音響を科学的に解説する記事を掲載した。

3D音響は「頭部伝達関数」に基づいて設計される

VR&ARアプリにおいては、画像だけではなく音響も重要な要素である、という主張は誰もが納得するものだろう。適切な音響効果があれば、没入感がいっそう増すからである。

ところで、VR&ARアプリには音の大きさや高低だけではなく、バーチャルな音源がある方向や距離まで再現する3D音響が採用されている。この3D音響は、よく考えて見ると不思議なものである。というのも、ユーザはヘッドフォンをつけているだけなのに、体験しているのは遠くの音であったり、後ろを横切る音まで聞こえるのだから。いったい3D音響とは、どのように設計されているのだろうか。

3D音響を科学的に支えているのが、「頭部伝達関数」という概念である。この概念は、耳殻、人頭および肩までふくめた周辺物によって生じる音の変化を伝達関数として表現したものである。簡単に言うと、音源から発せられた音が、実際にヒトの耳を伝わって鼓膜を達するまでの経路を関数=数式で計算可能にする概念だ。

一般に、音は鼓膜に達するまでにいろいろな障害物にぶつかって、音波が変化する。さらに耳たぶや外耳道(いわゆる耳のあな)でも反射を繰り返して、変化を被る。頭部伝達関数は、こうした音波が複雑に反射しながら鼓膜に達するまでの変化をモデル化したものであり、その研究には音の反射を可能な限り抑えた無響室が使われる。

無響室の様子

3D音響とは、以上のような頭部伝達関数にもとづいて、本来はリアルに存在しているわけではないバーチャルな音響を人工的につくりだす技術なのだ。

3D音響を活用すると、バーチャル体験の没入感が高まる効果のほかに、もうひとつ異なった効果を実現できる。その効果とは、バーチャルな音源をユーザに聞かせることによって、ユーザの注意を誘導することだ。

ヒトの聴覚は、耳が頭部の両側についているという解剖学的な特徴から、頭部の前方に広がる30°の円錐形の範囲がもっともよく聞こえる。そのため音を聞くと、このよく聞こえる範囲に音源が入るように、自然とカラダを動かしてしまうのだ。こうしたヒトの聴覚的特徴を生かせば、3D音響を使って、ユーザの行動をある程度は制御できることになる。

3D音響を効果的に使ったVR&ARアプリの事例

以上のような特徴をもつ3D音響を使って、ユーザの行動を制御することを強く意識したVR&ARアプリというものも存在する。以下のそれらを紹介する。

HoloGuide

「HoloGuide」は、AR表示された音源を追いかけることで、ユーザの移動を制御するHoloLensアプリだ。

同アプリには、ユーザに移動して欲しい経路をあらかじめ地図とともに入力しておく。上に引用したデモ動画では、オフィスの通路を入力してある。

つぎに同アプリを起動すると、入力しておいた移動経路が赤い線でAR表示され、その赤い線の上に青色の音源が現れる。ユーザは、この青色の音源の方向に動くと、音源は移動経路に沿って移動する。つまり、音が聞こえる方向に動き続けると、設定された移動経路上を移動できるようになっているのだ。

もしも移動経路上に障害物があったとしても、音源がその障害物を検知して、回避する経路上を動くように設計されている。

以上のような「HoloGuide」の活用シーンとして、すぐに思いつくのは聴覚に障がいがあるヒトの移動をアシストすることだ。

そのほかに応用シーンとして、火災時の救助活動が想定される。火災救助時にあらかじめ救助場所までの移動経路を入力しておけば、移動経路が煙で見えなくなっていても、音を頼りに救助場所まで行くことができる。

結局、同アプリにおいて重要なのは、赤色のコース表示や音源の青色ではなく、音源の移動なのだ。

Raising a Rukus

「Raising a Rukus」はJonasとAmyという兄妹、そして彼らのいたずら好きなペット、Rukusの三人がビューワーを冒険の旅に連れ出す、アニメーションVRアドベンチャーシリーズだ。

同アプリを開発したのは、映画「アバター」を手がけたRobert Stromberg氏が設立したVRスタジオVirtual Reality Companyなのだが、同アプリの開発に関して、音響を手がけたGuy Primus氏は、以下のようにコメントしている。

「Raising a Rukus」の多くのシーンにおいて、ユーザがどこを見てもよいように作りました。

そうは言っても、3D音響自体は、コンテンツへの没入感を高めるために、ユーザが見る方向をガイドする音源を配置するように作っています。

同アプリのようなストーリー性が重視されるコンテンツにおいて、3D音響によるユーザの視線誘導は重要である。というのも、ストーリーを理解するためには、ユーザに作り手の意図したモノを見てもらう必要があるからだ。そのため、ストーリーを理解するためにぜひ見てもらいたいモノに関しては、音響によってユーザの視線を誘導して、自然と見てもらいたいモノが目に入るようにするのだ。

以上のように3D音響を効果的に使うと、没入感が高まるだけではなく、ユーザの行動まで制御できる。今後も、3D音響を効果的に用いたVR&ARアプリが開発されるだろう。

ソース:VRScout
https://vrscout.com/news/sound-secret-sauce-immersive-experiences/#


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