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ジョイスの古典小説『ユリシーズ』がボストン・カレッジの大学生によってVRコンテンツに

2017/03/21 17:57

    Joycestick

    Joycestick

    名作文学を題材にしたゲームは多く、伝奇小説がそのままシミュレーションゲーム化されたものや、作品中のキャラクターのみが利用されたものなどがある。ストーリーがしっかりした作品ならば、そのまま主人公の行動を辿るようなロールプレイングゲームを作ることも可能だ。

    それに対して、場面間の繋がりが希薄で散文的・詩的な小説はいわゆる「ゲーム」にするには不向きな題材だ。ストーリー主導のゲームとするのは困難だし、大きく改変すれば作品そのものが持つ雰囲気が失われてしまう。それではファンを満足させるようなゲームにならない。

    そんな料理するのが難しい小説の代表的存在とも言える『ユリシーズ』。ボストン・カレッジの学生たちは、この作品をVRゲームにするプロジェクト『Joycestick』に取り組んでいるという。

    紙からVRへ

    上のトレイラーで、作品のイメージがつかめるのではないだろうか。作品中のシーンやオブジェクトが豊富に用意され、そのそれぞれが作中の文章と結びつくという。

    このプロジェクトは、ジョイスを研究するJoseph Nugentが担当する講座「ジョイスとデジタル人文学」から生まれた。昨年の春にNugentとRyan ReedeがVRにおけるジョイスの受容について話したことがきっかけだ。

    美術、英語、コンピュータサイエンスといった分野を専攻する学生の助けと大学からの助成金によって、ゲーミフィケーション、むしろゲームフィクション(チームメンバーがゲーミフィケーションをタイプミスしたことから生まれた表現)とでも呼ぶべきJoycestickプロジェクトは始まった。

    ユリシーズは、「意識の流れ」と呼ばれるテクニックが使われている上に、実験的な散文になっている。そのため、従来のゲームで用いられるストーリー・テリングの技法にはふさわしくない。

    そこで、彼らは一本のストーリーを語る方法を放棄した。代わりに作中に登場する複数の場面をVR空間に再現する。各シーンには多数のオブジェクト(真っ赤なクリケットボールや、レモン石鹸、悲しいニュースを伝える電文)が配置された。オブジェクトに触れると、本文を録音した音声とSEが物語を伝える。

    Nugentは、全てのオブジェクトはきちんと調査されて、本文と結び付けられなければならないと指摘する。ゲームを作成する作業には、作品の舞台となったアイルランドでの撮影も含まれていた。

    メンバーが考えるJoycestickの意義

    VRは共感を呼び起こす

    このプロジェクトを、Nugentはリベラル芸術の一種と捉えているようだ。プレイヤーは、自分の経験以外のものに基いて考え、知らないことを理解するための挑戦に直面する。Joycestickはコンピュータゲームの形をとてはいるが、ユーザがポイントその他のゲーム的な報酬を目当てにプレイしてもその本質は変わらないという。

    「私たちは、VRを究極の共感を呼び起こすシステムだと考えています。VRは読者(あるいはユーザ)を単に楽しませるだけでなく、本の中にある感情や出来事と結びつけることができます」

    VRの可能性とジョイスの革新性

    全てのメンバーがユリシーズやジョイスの他の著作に詳しかったわけではない。例えば、新入生のEmaad AliはジョイスやユリシーズではなくVRに興味を持っていた。彼はVRの可能性を感じていたのだ。

    「私は、VRが持つポテンシャルとこうした作品への可能性を試してみたかったんです。VRゲームはまだまだ主流になっていません。ですから、Joycestickはアカデミックな人々、それ以外の人々が将来VRをどのように活用していくかを知る助けとなるでしょう」

    しかし、彼はプロジェクトに関わるうちにユリシーズに惹かれるようになったという。

    「私は、ジョイスの作品があまりに革命的であることに驚きました。彼は『普通の人がどのように思考しているか』を表現したんです。Joycestickはユリシーズの精神に合っていると思います。Joycestickは、プレイヤーにユリシーズを読んだときと全く同じような経験を提供していますから」

    価値があることは理解している

    Reedeはこう述べている。

    「私は全文を読破しました。そして、正直に言えば、まだこの作品を読み切れてはいません。しかし、このプロジェクトを通して私はユリシーズとジョイスによる他の著作が持つ影響の大きさと意義を知りました。このプロジェクトを実施する意味は分かっています」

     

    プロジェクトの成果は、6月16日にダブリンで公開される予定だ。1904年の6月14日に登場した小説が、100年を超えてVRで再びダブリンを描く。

     

    文学作品のVRゲーム化とは言いつつも、作っているのはゲームデベロッパーではなく大学の研究チームである。いわゆるテレビゲームではなく、VRでストーリーを語る新しいタイプの作品に仕上がってきそうだ。

    ユリシーズはとてもゲームの原作には向いていない作品である。このJoycestickが上手くいけば、過去の名作小説をVR化した商業作品が続けて出てくるかもしれない。

    発行が古くて著作権が切れているので、原作としては使いやすいからだ。同じ理由で、プロジェクト・グーテンベルクで本文が無料で公開されている。もちろん英語しかないが、そこまで難しい文章ではないので内容が好みに合えば苦にならないだろう。

     

    参照元サイト名:Boston College News
    URL:https://www.bc.edu/bc-web/bcnews/humanities/literature/joycestick-ulysses-nugent.html

    参照元サイト名:UploadVR
    URL:https://uploadvr.com/boston-students-turning-classic-novel-ulysses-vr-experience/

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