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NomadicのVRゲームが香港のショッピングモールで体験できる

2017/07/04 18:08

    ショッピングモールにVRゲームを取り入れる

    日本ではオンラインショッピングサイトを使って買い物をする消費者が増えているが、それは他の国でも同じのようだ。

    香港のショッピングモールでも、大規模なショッピングサイトの勢力拡大に伴って売上が低下しているという。あるショッピングモールでは、無料で利用できるVRゲームによって消費者を呼び込もうという試みがなされている。

    ネットショップと実店舗

    Amazonロゴ

    国内で利用者の多いショッピングサイトと言えば、お急ぎ便の即日配送でおなじみのAmazon、サービスを横断してポイントが利用できる楽天市場、人気が上昇しているJoshinといったあたりだろうか。

    小売店やショッピングモールは、こうしたサイトに利用者を奪われつつある。

    オンラインショッピングのメリット

    オンラインショッピングサイトを利用すれば、時間や休日を気にせずに買い物ができる。一般的な小売店が開いていない夜間の利用はもちろん、天気が悪くて外出したくないときや仕事の合間に日用品を注文しておくことも可能だ。

    しかも、同じ商品であればオンラインショッピングサイトの方が実店舗に比べて価格が安い場合が多い。これは、店舗の土地や店員の給料にかかるコストを削減できるためだ。

    また、ゆっくり買い物ができることも利点となっている。誰に気兼ねすることもなく複数のサイトを開いて価格と性能を吟味したり、とりあえず保存しておいて値下がりを待ったりといったスタイルで買い物ができるのはオンラインショッピングならではだ。

    実店舗のメリット

    実店舗で買い物をする最大のメリットは、パソコンやスマートフォンを使わなくても良いということだろう。ITに疎い、あるいは仕事以外でまでテクノストレスに晒されたくないという消費者にとっては非常に重要なポイントだ。

    他にも、在庫があれば即日商品を持ち帰れる点や試着が可能な点が実店舗で買い物をするメリットと言える。だが、このメリットは即日配送や試着後返品OKといったサービスによって潰されつつある。

    商店街やモールでイベントを開催したり、スタンプカードを用意したりといった客足を伸ばすための工夫は行われているが、工業製品のようにどこで購入しても同じものであればインターネット販売を利用する消費者も多くなっているのが実情だ。

    NomadicのVR

    Nomadic

    実店舗の苦境を背景に、ショッピングモールに足を運んでもらうためのアトラクションとして期待されているのがVRゲームだ。

    家庭でVRヘッドセットを購入して気軽に遊べるゲームではなく、広い空間をVRのプレイエリアとして使うロケーションVRである。

    ロケーションVRの欠点

    The VoidのようなロケーションベースのVRは、各VRゲーム専用に設計された現実の建物を使うことで非常に没入感の高い経験を可能としている。

    ウリとなるのは体験の質が高いことだが、高品質なVR体験と引き換えに施設を建設するコストが高額になってしまうのが欠点だ。The Voidは一年前に初めての施設をオープンした人気のロケーションVRだが、高コストのためか施設数は少ない。

    また、一つの施設は一つのコンテンツにしか利用できず、異なるVRコンテンツに対応させるためには内部の改装でまた時間や必要になり、費用も発生してしまう。

    NomadicのVR

    Nomadicは、先月600万ドル(6.8億円)の資金を獲得したことを発表したVR企業である。

    同社のVRは、モジュール方式が採用されているのが特徴だ。専用の施設を建設しなくても既存の建物や施設を流用できるため導入の初期投資が小さくなり、おまけにコンテンツに合わせた構造の変更も容易だ。

    一般公開されるNomadicのVR

    資金の獲得を伝えた先月の記事では、2018年の第1四半期に初めての施設をオープンさせる予定だとされていたNomadic。

    同社は以前にラスベガスで開催されたCinemaConでプロジェクトを紹介していたが、一般に公開したのは初めてのことだ。

    正式サービスの開始予定は変更されていないようで、複数の製品を並行して開発中であり、来年の始めに最初のプロジェクトをローンチ予定であると発表している。

    無料のロケーションVRキャンペーン

    VR施設の内部(イメージ)

    ショッピングモールでのキャンペーン

    香港にあるショッピングモール「Wonderful Worlds of Whampoa」では、6月29日から7月9日までの期間限定でNomadicのVRゲームを無料で体験できる。この11日間で、5,000人がVRゲームを体験すると見込まれている。

    TaobaoやTmallといった強力なショッピングサイトの影響で離れてしまった消費者を、モールに呼び戻すことができるだろうか?

    今回のキャンペーンは、モールを所有するLi Ka-shingの投資ファンドHorizo​​ns VenturesがNomadicの主要投資家であることから実現した。

    Horizons VenturesのJonathan Tamは、NomadicのVRが消費者を惹き付けるユニークで魅力的な体験だと考えている。

    「既存のVRゲームは、ほとんどが立ち止まって遊ぶものです。しかし、自由に移動できるVRでは全く別の世界に浸ることが可能です。

    このユニークな特徴により、このようなVR体験は小売店に多くの消費者が足を運ぶ理由となり得ます」

    NomadicのKalon Gutierrezも、モールに消費者の目を向けさせるための手段としてロケーションVRが有効だと考えている。

    「小売業者は、消費者を再び店舗に呼び込むための革新的で楽しい方法を模索しているところです。

    私たちは、家庭ではなく施設に行って遊ぶロケーションベースのVRが一つの答えになると確信しています」

    ショッピングモールとNomadicの相性

    オンラインショッピングサイトの台頭などでショッピングモールを訪れる消費者が減少し、売上も前年に比べて落ち込んでいる。その結果、モールから撤退するテナントも出てきた。

    テナントの撤退によって空きスペースのできたモールにとって、既存の空間を再利用してアトラクションにすることのできるNomadicのVRは非常に都合の良い存在だ。

    建物を再利用すればコストを抑え、短い工事期間でオープンできる上に広告効果は大きい。

    特に今回は利用料も無料なので、多くの消費者がWonderful Worlds of Whampoaを訪れてVRゲームを体験するだろう。このキャンペーンが成功すれば、Nomadicに集客の相談をするショッピングモールが多数出てくるのではないだろうか。

    香港の事情

    施設を訪れて利用するロケーションVRは、家庭向けのVRと比べてリッチな体験が可能だ。特に、香港のように土地の高い都市ではその利点が顕著になる。

    香港は現代的な都市で、狭い土地に多くの人が暮らしている。そのため、広い部屋に住むには高額な家賃がかかってしまう。

    香港市民にとって、VRゲームのために自宅で十分なスペースを用意するのは難しい。移動せずにプレイするVRゲームならばともかく、無理にルームスケールのVRゲームを遊べば家具にぶつかったり、ペットを蹴ってしまったりする危険性もある。

    VR空間では現実に存在する家具が見えないので、常に気を使いながら遊ぶことになってしまう。この状態でゲームに夢中になるのは困難であり、同時に危険だ。

    プレイヤーの反応

    South China Morning Postは、体験者へのインタビューも行っている。

    既にNomadicのVRゲームを試した13歳のJonathan Yung Tak Yanは、そのゲームが気に入ったという。彼は

    「バーチャルリアリティを見るだけでなくものに触ったり、感じたりできればVR体験はずっといいものになります。

    初めてアトラクションの室内に入ったときは、あまりにもリアルで少し怖くなってしまいました」

    と応えている。

    マルチプレイへの期待

    VR体験の質そのものは高いようだが、モールで公開されたNomadicのVRはまだソロプレイにしか対応していない。

    同じく13歳のSonia Chan Sum Yinはマルチプレイを望んでおり、

    「友達と一緒になら遊びたいです。

    一人でしかできないなら、この技術には興味が持てません」

    と言っている。

    VRデバイスは個人で購入するには高価だが、VRアーケードならば気軽に複数台のVRヘッドセットをレンタルすることもできる。VRアーケードのゲームには、友人とのローカルマルチプレイを期待するユーザも多いのではないだろうか。

     

    バックパック型のPCを背負うことで、ケーブルを気にせずに自由に移動できるNomadicのVR。

    マルチプレイへの対応によってさらにゲームの幅も広がるはずだ。正式サービスが開始するのは来年なので、それまでにマルチプレイも可能になっていることを期待したい。

    宣伝されているように豊富なコンテンツが実現できれば、日本でもNomadicの技術を使ったVR施設が身近にある、という時代が来るかもしれない。

     

    参照元サイト名:South China Morning Post
    URL:http://www.scmp.com/tech/social-gadgets/article/2101007/li-ka-shing-invites-shoppers-touch-and-feel-their-way-through

    参照元サイト名:Nomadic
    URL:https://nomadicvr.net/

    ohiwa


    ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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