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マイクロソフトと米国陸軍が契約!軍事利用に特化したARデバイスを10万台提供

マイクロソフトのMRデバイス「HoloLens」は、建築や医療などの様々な分野での活用が進められていますが、防衛・軍事分野でも大きなニーズがあります。

先日、米国陸軍とマイクロソフトは契約を交わし、今後同社による軍事利用に特化したARデバイスを10万台以上提供する計画が明らかになりました。


マイクロソフト、米陸軍に10万台ものARデバイスを提供

米メディアのBloombergによると、マイクロソフトが米国陸軍と結んだ契約の金額は4億8,000万ドル(約544億円)にも及びます。

この契約によって同社は米陸軍の兵士が使用する「ARシステム用のプロトタイプ」を開発・提供するとのことで、兵士の訓練や実戦での使用を想定しています。

軍事利用に特化したARデバイスに

このARデバイスは、おそらく既存のHoloLensの技術を改良したものになると考えられます。

また、米陸軍が要求するARデバイスには様々な要件があり、例えばナイトビジョン(夜間暗視)やサーマル(熱感知)、呼吸や身体状態などの生体情報、振動モニターやイヤープロテクターの実装が求められています。

ウクライナ軍が開発したHoloLens付きのヘルメット

米陸軍は現在、「Integrated Visual Augmentation System(IVAS)」というプログラムを実施しており、これは市販の製品を含めた革新的な技術を活用して、兵士が危険からの防御や、攻撃能力を拡張することを目的にしています。

ちなみに、2018年8月に米陸軍が開いた会合で、軍事利用目的に特化したARデバイスを開発する企業の募集を行っており、合計25社が参加しています。

その中には、HoloLensのライバル機種である「Magic Leap One」を開発するMagic Leapも参加しましたが、最終的に契約先として残ったのはマイクロソフトでした。

10万台ものARデバイスを導入

米陸軍は、マイクロソフトが開発したARデバイスを10万台以上導入する計画で、同社は今後2年の間に2,500台のARデバイスを陸軍に引き渡す予定です。

欧州特許庁によると、HoloLensが2016年のリリース以来販売した台数は約5万台とのことで、米陸軍が採用するARデバイスの数はその2倍にも及びます。

マイクロソフトにとって、防衛・軍事分野が大きな得意先になることが分かります。

マイクロソフトのスポークスマンがTechCrunchに語ったところでは、

AR技術によって、兵士はより多くの、かつ良質な情報を得ることが可能になり、判断の決定がしやすくなるでしょう。この取り組みは、これまでマイクロソフトと国防総省が築き上げてきた長期的な信頼関係を強化するものです。

と、述べています。

マイクロソフトは現時点で契約の詳細に言及していませんが、同社のCEOであるサティア・ナデラ氏は2018年10月のブログにて、

米国の防衛能力は高く、それに携わる人々は、マイクロソフトも含めてわが国で最高のテクノロジーを取り入れるべきだ。

と語っており、同社が防衛・軍事分野に積極的に参入する姿勢を見せています。



軍事分野への参入には反対の声も

ですが、同社のこうした取り組みには社内でも反対の意見が多く、2018年始めには同社の数百人の従業員によって、マイクロソフトと合衆国移民・関税執行局との契約を批判する署名が行われています。

また同年10には同社の従業員がブログにて、

マイクロソフトの従業員の多くは、我々が作るものが戦争に利用されることを望まないと考えている。

との声明を発表して、多額の資金を用いた軍事分野との契約を批判しています。

ですが、同月にはマイクロソフトのプレジデント・最高法務責任者のBrad Smith氏が、同社は今後も継続して米国の防衛・軍事分野に製品を提供することを発表しており、この取り組みに対して倫理的に抵抗感を感じる従業員は、社内での転属を許可するなどの対策を打ち出しています。

VR/ARだけでなく、AIやドローンなどの最新技術は軍事分野でも大いに活用できますが、それを開発する民間企業はこうした倫理的な問題に対処する必要があります。

マイクロソフトのAR開発だけでなく、こうした倫理的な問題にどう対処していくのかに関しても注目されます。

まとめ

マイクロソフトは米国陸軍と契約して、兵士が訓練や実戦で使用するARデバイスを開発・提供することになりました。

このARデバイスは、おそらく同社のMRデバイスのHoloLensを改良したものになると考えられ、ナイトビジョンやサーマルなどの軍事目的での利用に必要な様々な機能が求められています。

米国陸軍は、こうしたARデバイスを10万台導入する計画とのことで、デバイスの開発・提供を行うマイクロソフトにとっては大きなマーケットを得たと言えるでしょう。

ですが、こうした軍事分野との密接な関係は同社内でも批判の声が多く、技術的な開発だけでなく倫理的な問題にも対処する必要性があります。VR/ARなどの先端技術の軍事利用に関しては、倫理的な側面も含めて考えていく必要がありますね。

【参考リンク】
Road to VR
Bloomberg










フリーランスの翻訳ライター。XR、VTuber、人工知能を専門に各種メディアに寄稿しています。 Twitter: https://twitter.com/dsiwmr

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