VR Inside

VR/AR/MRの未来を創るビジネスニュースメディア

【レポート】VR/ARの最先端が集結!国際カンファ「SIGGRAPH Asia 2018」に行ってきた!

2018年12月4日~7日にかけて、東京国際フォーラムにてCG系カンファレンス「SIGGRAPH Asia 2018」が開催されました。

国や地域を超えて、VR/ARを含む様々な先端技術の発表・展示が行われ、最新型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)やMR(複合現実)を用いたアトラクションの体験など、VR/ARの最先端に直接触れることができる貴重な機会でした。

そこで本稿では、実際にSIGGRAPH Asia 2018で体験した様々なVR/AR技術の紹介や、感想などを交えてレポートします。


SIGGRAPH / SIGGRAH Asiaとは

本題に移る前に、まずはSIGGRAPHという名前を初めて聞く方もいらっしゃると思うので、簡単に説明します。

SIGGRAPHは、1974年から毎年北米で開催している世界最大規模、そして最も権威のあるCG系の国際カンファレンスです。

CGに関する学術研究や芸術、教育などに関する最先端技術の発表、展示が行われており、2018年のSIGGRAPHはカナダのバンクーバーで開催されました。

そして、2008年からはアジア地域にてSIGGRAPH Asiaが毎年開催されており、日本での開催は2009年の横浜、2015年の神戸に続く3度目となります。2019年はオーストラリアのブリスベンで開催されます。

昨今、様々なVR機器やアプリが登場し、VRの認知度が高まりつつある2018年に、最先端のVR/AR技術が集まる国際カンファレンスが日本で開催されるというまたとないチャンス!

という訳で、早速行ってきました。

国際色豊かな会場

筆者が東京国際フォーラムを訪れたのはDay 3となる12月6日でしたが、12月4日のDay 1には非常に大勢の人が詰めかけ、会場に入るまでに1時間以上も並ぶという盛況ぶりがTwitterで報告されていました。

ですが、Day 3ともなると人も幾分減り、また当日は雨天だったこともあり、列に並ぶこともなくスムーズに会場にIN。

予約したパスを受け取って会場に入るとやはり賑やかで、国際カンファレンスだけあって様々な国の人たちが行き交っていました。

会場では多くの企業・大学がブース出展を行っていましたが、筆者が特に気になっていたのは、VR/ARに特化した「Virtual & Augmented Reality(VR/AR)」というプログラム。

この他にも「Emerging Technology」などの面白そうなプログラムもありましたが、先ずはVR/ARエリアに直行。

SIGGRAPHのパス。エリアの入場にはコレが必要になります。

同エリアに入るには専用の有料パスが必要となりますが、パスをスキャンして中に入ってみると、まず最初に驚いたのはその国際色の豊かさでした。

各国の企業・大学による出展が行われており、エリア内にいるお客さんも様々な人種の人たち。

エリア内は狭い通路で仕切られていたこともあって賑やかでしたが、そこら中から聴こえてくる会話はどれも英語(と中国語)で、日本語がどこからも聴こえてきません。

エリア内のポスターやチラシ、質疑応答も基本的に英語なので、最初は面食らいました。

お客さんや出展者にはアジア出身の方も多いので、たまに日本人が日本人に間違えて英語で話しかけるという珍事件も。

国際カンファレンスなので当然ではあるのですが、しかし、ここにいる人たちは紛れもなくVR/AR開発の最先端に関わっている人たち。

筆者もカタコトの英語を喋りながら、何とか彼らとコミュニケーションを図りました。

VR/ARの最先端が集結!

このVR/ARエリアの展示の多くが、まだ研究・開発段階、もしくは実験目的に制作されたものですが、どれもが刺激的で斬新な体験でした。

まずはこのVR/ARエリアの展示で特にユニークだったものや、印象に残ったものをお伝えします。

※本稿に掲載している画像は、すべて出展企業・団体様の許可を得て撮影したものです。

没入感を「香り」でブースト

筆者がまず最初に体験したのは、VR体験に香りを加えて没入感をブーストするという「Lotus」というシステム。

これは台湾の複数の大学が共同開発したもので、開発には台湾国立大学、国立台北科技大学、淡江大学、国立台南芸術大学が参加しています。

ブースの上部には巨大な装置が吊り下げられており、これには4つの水タンクが内蔵されており、これを使って香りの混ざったMist(霧)を放出します。

Lotusのブース。広いエリアをVR内で動けます。

Lotusの開発者によると、この装置を使って4種類の香りを発生させることが可能とのことで、雪原や野原、木などの状況に応じて様々な種類の香りを散布できるとのこと。

デモ体験ではHTC Viveを装着して、広いエリア内を自由に歩き回りましたが、VR空間の中にはドアがあり、コントローラーでドアを開けると、まるで「どこでもドア」のように別のVR環境へ。

こうして雪原や草原、木造の建物内など、様々なVR環境に行ったり来たり出来ます。

そして、それぞれのVR環境に入ると、それに連動してブース上部のタンクから、今いるVR環境に応じた香りが発生するという仕組みです。

香りを発生する巨大な装置。

筆者が体験した際、会場が広いこともあって最初は香りを感じませんでしたが、ドアを開けて雪原や草原のVR環境に入った時、甘くてツンとする雪っぽい香りや、草木感をイメージした青々しい香りをハッキリと感じました。

これによって、本物の雪原や野原にいるような感覚になったかと言うとちょっと違うと思いましたが、それでもVR体験に香りが加わることによって、VR体験そのものの刺激が増幅した感がありました。

VRに香りを加える取り組みは様々な研究が行われていますが、実際に体験してみると、香りとVR体験は密接に関係し得ると思いました。家でVRゲームをプレイする時にはお香を焚いてみるのもいいかもしれません。

HoloLensを被って「パックマン」をプレイ!

続いて体験したのが、バンダイナムコが開発したMRアトラクションの「PAC IN TOWN」で、VR/ARエリアでも多くの人が並ぶ人気コンテンツでした。

これは傑作ゲーム「パックマン」をMR環境でプレイできるというもので、デモ体験では一度に3人が参加可能。

プレイヤーは全員HoloLensを着けて、ホンダの一人乗り小型電動スクーター「UNI-CUB(ユニカブ)」に乗ってプレイします。

「PAC IN TOWN」プレイ中の様子。

ユニカブは直感的な操作で乗ることが可能で、足をペダルに載せて、身体を前に傾けると前進します。

身体の傾きが大きいほど速度が上がり、曲がるときは曲がりたい方向に身体を向けるだけで車体が向きを変えます。

プレイ前にスタッフからユニカブの操作方法を教わり、簡単な練習を行います。

初めて乗るので上手くコントロールできるか不安でしたが、操作が直感的なのですぐに慣れました。

ユニカブの操作を練習。

一連のブリーフィングを受けた後、参加者はHoloLensを被ってプレイ開始。

現実空間にAR表示された「パワーエサ」に近づくと、食べてポイントをGETできます。

途中から巨大なモンスターがエリア内に現れ、接触すると10秒間のペナルティが課されるというルール。

HoloLensは視野角が40度程度と狭いことが難点に挙げられますが、プレイ時は(熱中していたこともあり)視野角の狭さは気にならず、またモンスターなどのオブジェクトも視界の端っこが切れて表示されるといった問題もなく、快適なプレイを楽しめました。

五感をフルに使って没入感をアップ!

そしてVR/ARエリアの展示でも一際目を引いていたのが、首都東京大学のIKEI LABが開発した「FiveStar VR」。

こちらも長蛇の列が出来ていました。

大がかりな装置で没入感をアップする仕組みを用いており、体験者は専用の座席に座ります。座る際に「足をペダルに載せないように」との指示がありましたが、このペダルは可動式で、足の振動を再現します。

「FiveStar VR」の外観。8つのファンが目立ちます。

そして座席は3方向に揺れる設計になっており、両腕を専用の可動式の装置で固定し、これらがVR内の動作と連動して動きます。

前方には8つのファンがあり、風の強さや方向を調節しながら、よりリアルな「風」を再現します。

そして香りを発生する装置まであるという本格的な仕組み。

30分近く列に並んだあと、HTC Vive Proを装着してようやく体験開始!

VR内では8K画質の360度映像で、カナダのトロント市内を歩きます。

VR内を歩く動作に伴って腕と足に着けた装置が動き、身体が自ずと歩いている動作に誘導されます。

またVR内では3Dのアバターのキャラが前を歩いており、これによって「VR空間内を歩いている」感を増幅します。

VR体験の様子。トロント市内を歩いています。

そして映像はクライマックスとなり、ナイアガラの滝を至近距離で観覧するボートに乗っている場面に。

映像がボート上に切り替わった瞬間、前方から猛烈な風が吹きつけました。

この時ファンがフル回転していた訳ですが、映像内のナイアガラの滝から風が吹きつけてくるような感覚が確かにありました。

VRとAIによって、部屋の中が丸ごとゲームの舞台に

また、エリア内の展示でもユニークなものとして、ソニー・インタラクティブ・エンターテイメントが展示していた「Space Fusion」があります。

これは実世界の物体をそのままVR空間内に読み込み、かつ変身させるという技術。

デモで使用したのはPSVRですが、VR装置の横にはソファとテーブルがあり、その上にはペットボトルなどの小物が置かれています。

これらの物体をカメラで撮影して、映像を用いてトラッキングを行います。

部屋の様子をカメラ映像でトラッキングします。

このトラッキングは機械学習を用いており、画像内の物体の大きさや形、位置だけでなく、それらが何であるかも把握します。

コンピューターが「これはソファ」「これはテーブル」「これはボトル」などと、映ったオブジェクトを個別に識別・分類するので、部屋の中の様子がそのままVR空間内に反映されます。

この技術で特に凄いのはここからで、VR空間内に読み込んだ実世界の物体が様々なモノに「変身」します。

ちょうど人間がVR空間でアバターを着けてまったく別の存在になるように、たとえばテーブルはイカついデザインのロボットに変身したり、ソファは唸り声をあげるモンスターに、ペットボトルはレーザー砲になって上空めがけてレーザーを発射したりなど、部屋の中が丸ごとVRゲームの舞台と化します。

体験にはPSVRを使用。

開発者の方によると、現時点では部屋の様子をリアルタイムでトラッキングすることは難しく、デモ体験時のVR空間内の物体情報はその日の朝早くにトラッキングを行ったとのこと。

ですが、部屋の中の情報を直接VR空間に反映することによって、VR体験をよりパーソナライズしたものに出来るだけでなく、HMDを装着中に身体を家具などにぶつけてしまう、といったアクシデント回避にもなりますね。



その他、ARデバイスや最新型HMDなどが多数出展

こうして、当初の目標だったVR/ARエリアをあらかた探索した後、会場内に出展していた様々な企業を見て回りましたが、ここでも様々な発見がありました。

VTuber配信の裏側はどうなってる?

現在大ブーム中のバーチャルユーチューバーですが、配信を行う「中の人」は、一体どうやって身体の動きを3Dのアバターに反映しているのでしょうか?

こうしたバーチャルユーチューバー配信の裏側を見れる貴重なデモが行われていました。

デモを展示していたのはSPICE株式会社で、OptiTrackなどの最新のモーションキャプチャ機器を使用したリアルタイム配信を実演していました。

このシステムでは同時に2名の全身、指、顔の動きをリアルタイムでキャプチャ可能で、実演デモではバーチャルユーチューバーの「ナツ」と「メグ」の配信デモを行っていました。

ARヘッドセット「Meta 2」の実機デモも!

そして会場を歩き回っていると、ふと目に留まったのが・・・・

なんと、ARヘッドセット「Meta 2」の実機デモがデル株式会社のブースで行われていました。

早速装着して体験してみましたが、Meta 2はPC接続型のデバイスなので、PCから起動してデバイスのトラッキングを行います。

すると、目の前に巨大なシェルフが現れ、その中には地球の3Dモデルや音の出る球体などの様々なオブジェクトが収まっています。

これらを手を使って直接触れてインタラクションが可能で、手で掴んで動かしたり、大きさを変えたりできました。

また、PCのデスクトップ画面を空中に表示したり、WebブラウジングをARで行えるなどの実用的な機能もありましたが、オブジェクトが背景に透けて見えてしまい、プレゼンスが十分に感じられない、といった問題もありました。

また、Meta 2はPC接続が必要であるため、工場やオフィスの一区画などの限定的な場所での使用に向いていると思いました。

広視野角のVR体験は衝撃的!

そしてSIGGRAPH Asia 2018の展示で一番気になっていたのが、新型HMDの「StarVR One」。

StarVR Oneは視野角が210度と、人間の肉眼の視野角とほぼ同じ広さのディスプレイを備えており、またアイトラッキング機能によってIPD(瞳孔間距離)調節を自動で行ってくれるなどの画期的な機能を実装しています。

実機デモを行っていたのはStarVR One国内正規代理店の株式会社エルザジャパンで、デモでは約5分程度のロボットアクションの短編映画を体験できました。

そして感想ですが、視野角210度のVR体験は衝撃的でした。Oculus RiftやHTC ViveなどのVR機器の視野角は110度ですが、その倍のサイズのディスプレイが実現するVR体験は、(少なくとも視覚的には)VRデバイスの存在を殆ど感じないレベルでした。

※StarVR Oneは12月から開発者向けに販売する予定でしたが、12月7日に開発元のStarVR社が上場関係の問題によって開発者向けプログラムを一時停止するとの発表があり、今後の予定は未定です。

まとめ

当記事でご紹介したVR/AR技術の他にも、SIGGRAPH Asia 2018には様々な出展が行われており、1日では全てのブースを回り切れないほどでした。

今回は主要なブースのみをピンポイントで回りましたが、それでも現在のVR/ARの最先端を存分に体験できました。

これらの技術は現在はまだ開発・研究段階ですが、今後市場に出荷されるHMDやVRアトラクションの基盤になるもので、今後のVR/AR技術の発展を考える上で参考になります。

関連サイト:SIGGRAPH Asia 2018公式サイト









Daisuke


フリーランスの翻訳ライター。XR、VTuber、人工知能を専門に各種メディアに寄稿しています。 Twitter: https://twitter.com/dsiwmr

 

最新ニュースを読む