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VRで手術患者のストレスを軽減!脳外科手術を受けたある女性のケース

2019/01/20 22:00

手術医療の中でも、脳外科手術は特に複雑なスキルが必要となり、また患者にもたらす心的ストレスも重大なものになります。

ですが、VRを活用することで患者のストレスを軽減することができます。VR内で患者の体内の様子を再現することで、容態や手術プランをより効果的に伝えることができます。


VRで患者のストレスを軽減!ある女性が受けた脳外科手術の場合

脳外科手術においてVRが活用された例として、海外VRメディアのVRScoutは、Catherine Kumpitschさんという女性のケースを取り上げています。

彼女はある日突然の頭痛に悩まされ、その他にも眩暈などの症状に苦しみ医者に相談しましたが、検査によって彼女の脳に腫瘍があることが分かりました。

この腫瘍は500人に1人の割合で発症するタイプのもので、手術で腫瘍を取り除くことが決定しました。

手術を受ける患者が感じるストレス

Kumpitschさん曰く、最初に診断結果を聞いた時にはショックのあまり茫然自失になったとのことです。

そして手術が近づくにつれて次第に神経質になり、大きなストレスを感じるようになったと述べています。

恐怖心に苛まれて夜もろくに眠れず、手術で脳をいじることで人格に影響が出たり、もしくは手術中に死ぬのでは、といった様々な妄想にかられたといいます。

VRで患者のストレスを軽減

このように、手術を前にすると多くの患者が恐怖心やストレスを感じることはよく知られていますが、こういった問題の解決にはVRが有効であると考えられています。

こうした医療向けのVRソリューションの開発を行っているのが、米国オハイオ州にある医療系VR企業のSurgical Theaterです。

同社ではVRで患者のストレスを軽減するための「Precision VR」というソフトウェアを開発しています。

これは手術を受ける患者の体内をVRで再現して、患者が自身の容態や医師の説明をより理解しやすくするものです。

VRで、より直感的な理解が可能に

通常、医師が容態や手術プランなどを説明する際、プラスチックのモデルや図、2D画像や紙に書いて説明するのが通例ですが、多くの患者は医療知識を持っておらず、説明を受けても混乱する場合が多いです。

ですがVRであれば、患者は立体空間に再現された自分の身体の様子を、歩き回ったり様々な角度から見ることで、より直感的に理解しやすくなります。

それによって、専門用語を用いた説明よりも理解が進みやすく、それが患者のストレス軽減にもつながります。

患者の体内の様子を正確に再現

Precision VRで使用する3Dモデルは、実際に患者の患部をCTスキャンやMRIで撮影した画像を使用します。

これをSurgical Theater独自のソフトを用いて、VR用の3Dデータに起こします。

こうして作成した3Dデータは、まず医師がヘッドマウントディスプレイ(HMD)を着けて閲覧し、様々な角度から調査して手術のプランニングに役立てます。

その後、患者やその家族がHMDを着けて3Dデータを閲覧しながら、医師の説明を加えて病状や手術プランについて詳しく知ることができます。

こうしたVR体験を通して、患者に関する様々な情報、例えば診断内容や手術のプラン、起こり得るリスクや手術のメリットなどをより効果的に伝えられます。

口頭や図示だけでは理解の難しかった専門的な説明が、VRを通してより分かりやすく提示できるわけですね。



医学生のトレーニングでも活用

そして、Precision VRは患者と医師の他にも、医学を学ぶ学生もターゲットにしています。

VR内で複雑な手術過程を学ぶことが可能で、実際の手術時に起こり得る様々なリスクや状況を、VRで体験的に学習できます。

このような、VRで実際の状況に近い環境を再現するアプリの例は他にもあり、こうしたアプリを使用することで従来は高いコストがかかっていた医療教育のコストの削減にもなります。

また、Precision VRはOculus Rift、HTC Vive、その他のPCVR機器にも対応しているとのことで、様々な病院や施設で導入しやすいのもメリットです。

VRが患者にもたらす効果

ですが、Precision VRのような医療用アプリが最も恩恵をもたらすのは、やはり治療を受ける患者であると言えます。

冒頭で述べたKumpitschさんは、手術前のストレスを紛らわすためにネット上の動画を漁り、実際の手術の映像を片っ端から見ていたそうです。

手術のプロセスや実際の状況を疑似的に体験することで、気を紛らわせようとしていました。

ですが、自身の身体の様子を没入感のあるVRで閲覧すれば、VRが持つディストラクション(気晴らし)効果があるだけでなく、必要な情報も吸収しやすくなります。

こうしてKumpitschさんの手術は無事成功し、今では自宅で好きな音楽を聴くなど、手術前と変わらない健康な生活を送っているとのことです。

既に6,000人もの患者が使用

このようなVRのユースケースは増えており、Precision VRは既に6,000人もの患者を対象に使用されています。

また、様々な病院や研究機関が本アプリを導入しており、スタンフォード大学やニューヨーク大学、その他米国内の多数の病院がVRを活用しています。

VRはエンターテイメント以外にも、トレーニングや教育などの様々な分野で活用が進んでいます。医療もVR普及の重要な分野として、今後の動向に注目されます。

まとめ

医療分野でのVR活用のケースが増えています。Precision VRというアプリは、CTスキャンやMRIで撮影したデータを基に患者の患部の様子をVR内で正確に再現します。

これによって、医師がVRで3Dデータを見ながら手術のプランニングができるだけでなく、患者自身が自らの患部の様子を没入感のあるVRで体験することで、容態や手術プランがより直感的に理解しやすくなります。

また、手術前の患者はストレスや恐怖心を感じやすく、VRの活用がこうしたストレスや恐怖心の軽減につながります。

VRは医療分野でも普及が進んでおり、医学生のトレーニングだけでなく、患者の治療を含めた様々なユースケースが登場しています。

参考サイト:VRScout









Daisuke


フリーランスの翻訳ライター。XR、VTuber、人工知能を専門に各種メディアに寄稿しています。 Twitter: https://twitter.com/dsiwmr

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