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VR普及に必要なのは「ファッション性」?デザイン重視のVRヘッドセットが登場

最近ではOculus Goなどの一体型VRヘッドセットの登場によって、ゲーム以外にもNetflixなどのコンテンツ視聴を目的としたVRのユースケースが増えてきました。

一体型デバイスではVR内の大画面で、映画などを手軽に視聴できるという利点がありますが、様々な場所に持ち運んで使用できるという特性ゆえ、デバイスの重量やサイズなどの携帯性が重要になります。

こうした要素に加えて、デバイスの「見た目」を重視することで、より消費者にアピールしやすい製品を生み出そうとする取り組みが行われています。


VRの未来形?デザイン重視のHMD「Immers」とは?

VRヘッドセットにデザイン性を持ち込むという発想は従来にない新しいものですが、この取り組みを進めているのは米国のLUCIというメーカーです。

カリフォルニア州サンタクララに拠点を置く同社は「Immers」という一体型VRヘッドセットを開発中で、2018年のCESにて本デバイスを初披露しています。

Immersは主にNetflixやYouTubeなどのコンテンツ視聴に特化したデバイスですが、他社製品と比べても携帯性やデザイン性を追求している姿勢は、これからVRヘッドセットがどのように進化していくかを考える上で参考になりそうです。

軽量、携帯性に優れている

Oculus RiftやHTC Viveなど、現行のVRヘッドセットはPC接続して使用する有線型が主流ですが、その点でImmersはよりウェアラブル端末としての使用に重点を置いています。

そのため、重量は185グラムと極めて軽く、これはOculus Goの重量468グラムの1/2以下の軽さで、iPhone X(174グラム)よりも少し重い程度です。

ディスプレイにはマイクロOLEDを使用して消費電力と重量を抑えており、視野角は50度とやや狭めですが、表示できるスクリーンサイズは1,023インチ、つまり映画館の大画面スクリーンのサイズに相当します。

LUCIのバイスプレジデント、マーケティング・セールス担当であるJosh Littlefield氏によると、Immersは日々様々な場所に持ち運んで手軽に使えることにフォーカスしており、サングラス感覚で使える携帯性がある、と述べています。

デバイスの脱着も簡単に出来るように、メガネ型のフレームでサッと取り外しできるので、脱着時に髪型が乱れることもありません。また付属のヘッドストラップを付ければPlayStation VRのように頭部を覆う形で固定できるので、より安定した状態での使用が可能です。

超高解像度の映像表示

現行のVRハードウェアの改善点の一つが映像の解像度ですが、Immersでは市販中のどのVRヘッドセットよりも高解像度の映像が表示できます。

例えば、Oculus製品で最も解像度が高いのはOculus Goで、ピクセル密度は538ppiですが、Immersでは3,147ppiと約6倍、レイテンシー(遅延速度)は1ミリ秒以下と他社製品に比べて若干の遅延はあるものの、4Kの3D映像を表示するには問題ないレベルとのことです。

CESにてImmersをハンズオンしたVentureBeatの記者によると、デバイスは極めて軽量で装着感も快適で、映画やテレビ番組、スポーツ観戦やゲーム画面(おそらく2D)のストリーミングには十分適している、と述べています。

ですが、Immersは外部デバイスを一切必要としない完全なスタンドアロンではなく、使用時にはPCやiPad、スマートフォンをデバイスに接続する必要があり、HDMIとType-Cコネクタ両方に対応しています。

またNintendo Switchの画面を出力することも可能で、先日発表されたNintendo LaboのVRキットと比べて、どちらが映像が綺麗なのかが気になります。



コンテンツ視聴に特化

上記でレイテンシーについて少し言及しましたが、Immersは主に映像視聴に特化したデバイスなので、VRヘッドセットというよりは「VRグラス」と形容するほうが適切でしょう。

Immersはゲームや、VRを用いた制作などのヘビーユーザー向けのデバイスではなく、家でくつろぐ時や、旅行中のちょっとした隙間時間に使用するライトユーザー向けの使用を想定しています。

ゲーム目的の使用には残念ですが対応しておらず、リフレッシュレートも60Hzと若干低めなので、高速の映像表示が求められるゲーミングには不向きでしょう。

というのも、VRのゲーミングには最低でも90~120Hz程度のリフレッシュレートが必要になり、それ以下になるとユーザーの気になるレベルの遅延が発生して、VR酔いを引き起こしてしまうからです。

LUCIのバイスプレジデントのMinqin Tang氏いわく、同社は競合メーカーがまだ十分に手を付けていない分野にフォーカスするとのことで、よりライトユーザー向けの「VRをちょっとだけ使ってみたい」という顧客のニーズに応える製品開発を行っているとのことです。

「スタイリッシュさを意識した最初のVRヘッドセット」

このように、携帯性や高画質映像をウリにしているImmersですが、特筆すべきもう一つの特徴が、そのデザインです。

Immersでは従来のVRヘッドセットではあまり重要視されてこなかったデザイン性に着目しており、例えばデバイスを使っていない時はサングラスのようにシャツの襟に掛けて、ファッション感覚で使うことが出来ます。

VRハードウェアというと、往々にしてデバイスの視野角や解像度が話題になりますが、こうした要素はいわばオタク向けの知識になりがちで、こうした要素が一般のユーザーにとってはアピールしづらいのもまた事実でしょう。

現行のVRは「デカくてダサい」

デザインという、VRにとって新しい視点に関して独自の切り口で考察しているのが、プロダクトデザインを手がけるYANKO Designです。同社はブログにおいてImmersを取り上げ、現行のVRにはもっと「カッコよさ」が必要だと主張しています。

いわく、現在市販されているVRヘッドセットは見た目的なクールさに欠けており、

大勢が巨大な直方体(HMD)を顔に固定して、周囲の環境を忘れて仮想世界に引き込まれている様子はまるでディストピアだ。(中略)現行のVRヘッドセットはとにかくデカくて(enormous)、しかもダサい(ugly)という印象がある。

と述べており、Facebookの年次カンファレンスF8のワンシーンを引き合いに出しています。

またブログでは、多くの人が日常的にVRを使うようになるためには、スペック以外にも「外見の良さ」が重要な要素だ、と結論付けています。

確かに、Oculus Goをカフェや電車などの人目につきやすい場所で堂々と身に着けられる人は、おそらく殆どいないのではないでしょうか。また脱着時に髪型が乱れるので、特に女性には不便になりがちという点もあります。

次期モデル「alyx」について

ちなみに、LUCIはCES 2018にて同社の次期製品ラインナップである「alyx」というVRヘッドセットも公表しており、こちらも一体型デバイスとして開発が進められている模様です。

alyxの詳細なスペックは未公表ですが、Immersよりも視野角が広く、またリフレッシュレートも120Hzに向上するとのことで、同デバイスではゲーミングも可能になるかもしれません。

デザインは継ぎ目のない、シームレスで丸っこいデザインが可愛らしく、これならファッション好きや女性でも身に着けたいと思うかもしれません。

価格は10万円以下、年内に発売予定

予定では、Immersは2018年の第2四半期(7~9月)から既に生産体制に入っているとのことで、2019年秋辺りの発売を予定しています。

発売に先立ってクラウドファンディングで資金公募を行い、2019年3月19日からKickstarterでのキャンペーンが行われます。

デバイスの価格は、最初の100台が499ドル(約5万5,000円)で、それ以降は正式価格の1,000ドル(約11万円)以下での発売となります。

2019年初旬にはOculusの一体型デバイス「Oculus Quest」が400ドル(約4万5,000円)で発売されますが、こうしたライバル機種とは一線を画す存在として、消費者にどの程度アピールするかが気になるところです。

まとめ

LUCIというメーカーから、VRヘッドセット「Immers」が発売されます。

Immersはコンテンツ視聴に特化したデバイスで、主にライトユーザー向けの使用を想定しています。解像度がOculus Goの約6倍であるなど、スペック的にも優れた点を有しています。

とはいえ、コンテンツ視聴のみのデバイスで1,000ドルという価格は高い気もしますが、デザインやコンパクト性を徹底して重視した設計思想は、VRハードウェア界でも先進的な取り組みとして興味深いものがあります。

今後、ディスプレイ技術やチップの小型化が進んでいくにつれて、Immersのようなコンパクトなデバイスでも、ゲームなどの様々なアプリに対応する可能性もあり、VRの未来を垣間見せてくれる一例です。

【参考サイト】
SiliconAngle
Reddit
 









Daisuke


フリーランスの翻訳ライター。XR、VTuber、人工知能を専門に各種メディアに寄稿しています。 Twitter: https://twitter.com/dsiwmr

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