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近未来の戦場が実現する?米軍が開発中のARヘッドセットのプロトタイプが公開

ARは軍事・防衛分野でも活用が進んでおり、先日マイクロソフトが米陸軍の兵士向けにHoloLensをベースにした軍用ARヘッドセットを開発する契約を締結したことが話題になりました。

そして先日、米軍が開発中のARヘッドセットのプロトタイプが公開され、夜間暗視装置や武器の照準システムなど、軍用目的に特化した機能を搭載していることが明らかになりました。


米軍が開発中の軍用ARヘッドセット、プロトタイプが公開

米国の放送局であるCNBCは先日、米軍が開発中のARヘッドセットを直接体験する機会を得て、デバイスの性能や機能について報じています。

この軍用ARヘッドセットは、2019年2月に発表された「HoloLens 2」をベースにしており、兵士の訓練や実戦でも使用できるデバイスとして開発が進められています。

ですが、もっぱら産業用途などの民間利用を目的にしたHoloLensを軍事転用することについて、マイクロソフト社内では批判の声も挙がっており、今後も倫理に関する継続的な対話が必要になりそうです。

軍用に特化したARシステム

米陸軍は現在、「IVAS=Integrated Visual Augmentation System」というプログラムを実施しており、これは民間技術も取り入れた次世代テクノロジーを活用して、兵士が危険から身を防いだり、より強力な攻撃能力を獲得することを目的にしています。

2018年8月には、IVASに関する会合が開かれ、軍用ARデバイスを開発する企業を募集し、合計25社が参加しています。

Magic LeapなどのARデバイス開発企業も参加した中、最終的に契約先として選ばれたのがマイクロソフトでした。

同社は4億8,000万ドル(約544億円)の契約を米軍と結び、今後2年以内に2,500台のデバイスを陸軍に納入、最終的には10万台以上のデバイスを引き渡す計画が明らかになっています。

HoloLens 2がベース

開発中のARヘッドセットを体験したCNBCの記者、Todd Haselton氏によると、このデバイスはリアルタイムに収集した情報を視界に直接表示できるとのことで、兵士の現在地や味方の位置などを簡単に確認できます。

画像のように、ユーザーの位置が矢印として表示され、ユーザーが向きや位置を変えると、矢印もそれに応じて動きます。また、周囲にいる味方も小さな矢印として表示されるので、味方同士の誤射などを防ぐことが出来ます。

また、デバイスの写真撮影は許可されなかったので詳細は不明ですが、米軍が公開した画像を見ると、HoloLens 2の上部に小型のセンサーが取り付けられているのが確認できます。

このセンサーには、サーマル(熱感知)や夜間暗視装置を搭載しており、デバイスを被っていれば、暗闇や視界不良の時でも、目の前にある人や物体などを視認できます。

また、兵士が携行するライフル銃などの武器の照準ポイントが視界にAR表示されるので、ちょうどFPS(一人称シューティングゲーム)をプレイしているような感覚で、武器のスコープなどを覗かなくても正確な射撃が可能になります。

米軍関係者のRyan McCarthy氏によると、デバイスはまだ開発段階で、またサイズも巨大なので装着した状態でヘルメットを被ることが出来ないので、今後はより小型化・スリム化を行っていくとのことです。

兵士の訓練にも活用

この、IVASに特化したARヘッドセットは、実戦だけでなく訓練にも使用されます。

デバイスは兵士の心拍数やエイム率(武器の照準の正確さ)などをリアルタイムにデータ化して、訓練後に各兵士に個人データとしてフィードバック出来ます。

より個人レベルのデータを収集出来ることによって、従来よりも訓練の精度の向上が見込めます。

2028年ごろに実用化

CNBCによると、米軍は今後もARデバイスの開発を継続し、2022年ごろまで実地テストを行い、2028年には実戦配備する計画とのことです。

このARデバイスは、米軍の「数千人単位」の兵士に支給されるとのことで、近い将来、兵士がヘッドマウントディスプレイを着けて戦うという、SF映画のような光景が現実になりそうです。



反発の声も

ですが、民間技術として開発されたHoloLensを軍事転用するマイクロソフトの方針には、社内で反対意見も挙がっています。

2019年2月には、同社の社員が声明を発表し、HoloLensを軍事目的に使用する計画を撤回するよう訴えています。

これは、同社のCEOのサティア・ナデラ氏、および最高法務責任者のブラッド・スミス氏宛てに出されたもので、特定の国の「致死力の増強」に関わることには賛同出来ず、IVASへの取り組みを中止するように求めています。

ですが、ナデラ氏は声明に対して「わが社は自由を守るために選出した政府に対して、技術提供を拒むことはない」と述べ、同社の取り組みを一貫する姿勢を示しています。

また、ブラッド・スミス氏は、倫理的に賛同出来ない従業員は、配置換えの要望にも応じると述べており、同社が今後も米国の軍事技術に継続して開発協力していくことに賛同しています。

民間技術のARを軍事転用する際、どうしても倫理的な問題が発生しますが、一方でVR/ARは軍事・防衛分野にも大きく普及する技術なので、今後も同分野と、マイクロソフトの取り組みに注目されます。

まとめ

マイクロソフトと米軍が開発中の、軍用ARヘッドセットのプロトタイプが公開されました。

これは、従来のHoloLens 2に様々な機能を加えたもので、夜間暗視装置やサーマル、武器の照準システムなど、軍事利用に特化した機能を搭載しています。

予定では、デバイスの小型化などを進め、2020年代中には米軍で正式採用するとのことです。

この取り組みに対して、マイクロソフト社内では反対の意見も挙がっていますが、同社は今後も米軍との協力体制を継続する姿勢を見せており、今後の動向に注目されます。

【関連リンク】
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Daisuke


フリーランスの翻訳ライター。XR、VTuber、人工知能を専門に各種メディアに寄稿しています。 Twitter: https://twitter.com/dsiwmr

 

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