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VRでは鳥や昆虫に「なりきれる」?ドイツの大学で行われた実験結果

2019/08/04 18:00

バーチャルユーチューバーでは、男性がアバターを通して美少女の姿になる「バ美肉」が定着していますが、VRでは本来の自分と異なる外見になったかのような感覚を得られます。

ですが、これは異性のアバターに限った話ではなく、動物や昆虫などの人間以外のアバターでも同様で、こうした他の生物のアバターのほうが、より自分が別の存在になったかのような感覚になります。


VRで動物や昆虫に「なりきる」?心理学実験によって証明

VRで非人間の姿になることが、人間にどれほどの心理的影響をもたらすかを調査する実験が、先日ドイツのデュースブルク=エッセン大学にて行われました。

実験結果をまとめた論文では、人間は他の生物のアバターに扮したほうが、人間のアバターと比べてよりその対象になり切ったかのような感覚になると報告しており、こうした性質はゲームや動物の生態調査などで役立つと述べています。

VRではアバターを自分自身と思い込む

バーチャル空間で別の外見(キャラクター)になり切ることは、ゲームなどを通して誰もが経験のあることですが、VRではアバターを自分自身と思い込む心理的効果が飛躍的に向上します。

VR内の仮想の身体を自分自身と錯覚することを、専門用語で「身体転移」と呼びます。

VRChatなどでミラーに映る自分のアバターをしばらく見ながら、手や身体を動かしているうちに、自分がその外見になりきったような感覚になります。

今回の実験は、仮想アバターとユーザーとの外見上の差異を拡大することで、この身体範囲が起きる範囲を調査することが目的でした。

VR空間で鳥や昆虫になる

実験には37人の被験者が参加し、それぞれがVR空間で様々な生物のアバター姿になります。

使用したアバターはサソリ、サイ、鳥などが含まれています。

それぞれのアバターは各々の骨格や動作までが再現されており、鳥であれば空を飛び回ることが出来ます。

そして、被験者はVRでこれらの動物になり切り、その時に感じた心理的変化や感覚をフィードバックする、という方法を取りました。

非人間のアバターのほうが「なりきった感」が強まる

実験の結果、ユーザーは人間のアバターよりも、他の生物のアバターのほうが、より身体転移感を強く感じ、被験者は(仮想の)身体を動かすのを楽しく感じたとのことです。

使用したアバターのうち、特にクモとコウモリが「なりきった感」を強く感じたとのことで、実験に参加した被験者の一人は、

コウモリ(のアバター)は自分の期待通りに動いた。(中略)羽の動きを正確にコントロールできるのは興味深く、現実的に感じられた。

と述べています。

また、この実験を主催したプロジェクトメンバーであるAndrey Krekhov氏は論文にて、

我々の実験では、クモなどの人間とはまったく異なる骨格を持つ場合であっても、人間のアバターよりもそれを自分自身であるかのような錯覚を得られることを示している。

と述べています。

人間以外のアバターを着けると、かえって没入感が損なわれるのではないかと思いますが、結果は真逆だったというのが面白いですね。



動物になり切るVRゲームが流行る?

今回の調査結果の具体的な応用例として、論文ではゲームを挙げています。

現在発売されているVRゲームの大半は、VR内でも人間(もしくは人間とほぼ同じ骨格を持つロボットなど)である場合が殆どですが、今後新たなVRゲームのジャンルに「バーチャルで動物になる」タイトルが登場するかもしれません。

Krekhov氏は論文にて、

(VR内で)動物になって、鳥として空を飛んだり、クモになって地上をはい回る機能は、非VRゲームよりも多くのプレゼンス(存在感)が増す。これを活用して、より幅広いVRの活用が可能になりそうだ。

と結論しており、今回の実験結果が広く知られれば、今後登場するVRコンテンツに少なからず影響を与えるかもしれません。

動物の生態調査にも活用?

また、VRで自分と異なる対象(異性や他の人種、生物など)になることで、その対象に対してより強い共感性を得られるという特徴があります。

この特徴を活かして、今後は様々な動物の生態研究においてもVRが活用できると述べています。

様々な動物の習性や生態など、現時点でもまだ解明されていない疑問が多く、こうした疑問の解決にVRが役立つかもしれません。

まとめ

ドイツの大学で行われた実験では、人間が他の生物のアバターを身に着けることでどのような心理的影響があるかを調査しました。

実験の結果、VRでは人間のアバターよりも、クモや鳥などの他の生物のアバターのほうが、より自分自身になり切ったかのような没入感を得られることが分かりました。

この、新たに発見されたVRの性質は、今後ゲームや動物の生態調査などの様々な分野で活用できると述べており、今後VRで動物になり切るゲームが登場するかもしれません。

また、現在はバーチャルユーチューバーの大半が人間か、人間っぽい姿のキャラクターである場合が殆どですが、ひょっとすると今後、鳥や魚などの姿をしたキャラクターが登場するかもしれませんね。

【関連リンク】
VRScout









Daisuke


フリーランスの翻訳ライター。XR、VTuber、人工知能を専門に各種メディアに寄稿しています。 Twitter: https://twitter.com/dsiwmr

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