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VRとロボット工学が融合した「テレイグジスタンス」テクノロジーとは何か?

2017/06/21 18:18

2017年6月9日、オンライン旅行団体MIT Japanが開催したカンファフェンスにおいて、テレイグジステンスを活用したバーチャル・トリップについて討論された。テレイグジステンスとは、VRとロボット工学が融合した「心のテレポーテーション」の実現を目指す技術である。

オンライン旅行業界の団体WITは、テレイグジスタンスを応用したバーチャル・トリップに関する記事を公開した。

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身体性を伴うバーチャル・トリップの可能性

2017年6月9日、オンライン旅行業界の団体WIT(Web In Trip)の日本支部WIT JAPANが東京において開催したカンファレンスでは、未来の旅行について討論された。

発表者の深堀昴氏は、「グローバル時代」を迎えた現在に関して以下のように発言した。

現在わたしたちが考えている世界は、密接に繋がり合っています。ただしバーチャルな意味においてそうであって、物理的な意味ではつながっていません。

その一方で、物理的な現象こそが人間の経験の核となっています。例えば、リアルに顔を合わせる体験こそが共感や感動を生み出すのです。こうした個々の経験における「リアル」が占める割合は、6~100%だと見積もることができます。

こう述べたうえで、バーチャルに繋がっている世界においても、未経験なことや失われている体験があることを同氏は指摘するのであった。次いで、同氏は次のように問いかけた。

しかし、もし自分の意識をテレポートさせることができたら、どうなるでしょうか。現在進歩の著しいテクノロジーであるVR・ARを使えば、それができるのはないでしょうか?

同氏が言う「意識」の真意を理解するためには、若干の補足が必要だろう。同氏が言う「意識」とは、物理的な存在を伴わないバーチャルなモノを思い浮かべている時の「思考」を含んでいる。しかし、そうしたバーチャルなモノに対する「思考」だけではなく、まさに目の前の光景を「リアル」だと感じている「心」をも含んでいるのだ。同氏が言わんとしていることは、「リアル」を感じる「心」自体を自由に移動させることができたら、そのような体験は実質的に「テレポーテーション」と変わらないのではないか、ということである。

「視覚」と「聴覚」に限定したテレポーテーションならば、現在のVRテクノロジーでも可能である。だが、ヒトの「心」は触覚や味覚をも含む身体全体を通して「リアル」な体験を実現している。そうしたリアルを感じる心の移動など可能なのか?

こうした「心のテレポーテーション」に最も近い体験を実現する方法が、VR・ARテクノロジーとロボット工学を融合させた「テレイグジスタンス」である。テレイグジスタンスとは、ユーザーの分身であるアバターをロボットで作成後、そのロボットが受容した感覚情報をVRテクノロジーを使ってユーザーが追体験するテクノロジーである。

テレイグジスタンスの応用例を具体的に考えると、次のようになる。例えば、サハラ砂漠にユーザーのアバターロボットを置いておく。ニューヨークにいるユーザーはロボット・コックピットからアバターロボットを操作すれば、ニューヨークにいながらサハラ砂漠を散策しているような体験を味わえる(トップ画像参照)。ロボットが受容する感覚情報は、VRヘッドセット(理想的にはフルボディ・トラッキングシーツが望ましい)を使ってバーチャルに体験できる。

そして、アバターロボットを世界各地に用意しておけば、一瞬にして世界各地を旅することができるのだ。

心身のバーチャル体験を可能とする「テレイグジスタンス」とは?

空想上のテクノロジーのように思われるテレイグジスタンスであるが、実のところ、日本はこのテクノロジーの研究に関して30年以上の実績があるのだ。

現在、舘研究室を率いている舘 暲(たち すすむ)東京大学名誉教授はテレイグジステタンスを30年以上にわたって研究している。同研究室のYouTube公式チャンネルには、テレイグジスタンスの研究に関する動画が多数アップされている。その動画を見ると、近年のVRとロボット工学の進歩によって、テレイグジスタンスの実用化が絵空事ではなくなっていることが実感できる(以下の動画を参照)。

テレイグジスタンスのポテンシャル

以上の動画を見るとわかるように、テレイグジスタンス体験を具体的にイメージできる段階まで研究は進んでいるものも、文字通りの「心のテレポーテーション」の実現には程遠い。そうは言っても、同テクノロジーの将来的な応用例に関しては、思考可能であろう。

同テクノロジーの応用範囲として考えられるのは、まずは本記事のはじめで述べた「バーチャル・トリップ」であろう。この「テレイグジスタンス・トリップ」は、現在の360°動画を活用したものより「リアル」な体験ができるだろう。

危険な場所での作業にテレイグジスタンスが向いているのは言うまでもない。危険な場所での作業に使うアバターロボットは、作業が遂行できるだけの性能があればよく「ヒトに似ている」必要はないので、この分野での応用が早く実現するかも知れない。

ちなみに、本記事で紹介した深堀昴氏はテレイグジスタンスを活用したアイデアを競う国際的なコンペティション「ANA Avatar XPRIZE」を提唱しており、2017年秋ごろに同コンペティションはスタートする予定、とのこと。

テレイグジスタンスを応用したバーチャル・トリップに関するWITの記事
http://www.webintravel.com/imagine-future-travel-avatars-ana-wants-impact-7-5b-people-earth/

ANA Avatar XPRIZE公式サイト
http://www.xprize.org/visioneers/2016/teams/avatar

吉本幸記


千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com

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