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独大手ゲーム&ゲームエンジン会社「Crytek」がVRゲーム開発ノウハウ大公開 - NGC2016特集

2017/10/19 14:19

ドイツに本社を置くCrytek社はゲームの製作及びゲームエンジンの開発を中心に事業を展開しています。 Crytek社は今年、初のVRタイトル「The Climb」を4月28日にリリースしました(Ocu ...

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ドイツに本社を置くCrytek社はゲームの製作及びゲームエンジンの開発を中心に事業を展開しています。

Crytek社は今年、初のVRタイトル「The Climb」を4月28日にリリースしました(Oculus対応)。壮大な風景の中で新鮮な空気を吸ってクライミングする雰囲気をどのように作り出したのでしょうか。

今回はNordic Game ConferenceでCrytek社の首席エンジンニアのDario Luis Sancho Pradelさんの話をご紹介します。

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Crytek社の首席エンジンニアのDario Luis Sancho Pradelさん

<講演内容摘録>

今日は弊社Crytekがどのように初めてのVRゲーム「The Climb」の開発を進めてきたかの話をさせて頂きます。

最初に、なぜVRゲームを始めたかについて、もちろんVRの体験はあり得ないほどすごいですが、我々はそれ以上にVRの開発に興味ある人々を支え、コミュニティ全体の活性化を図りたいと思っています。

我々のVRコンテンツの開発に3段階があり、それぞれの製品があります。

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VR開発の3段階とそれぞれ製品の概要

最初はVR初期デモ用の「恐竜島へ戻る(1)」で、次にVR体験を深めた「恐竜島へ戻る(2)」とゲームとして開発した現在の「The Climb」です。

開発の中で我々が注意していることはいくつあります。

一つ目は、プレイヤーからコントロールを奪わないことです。できるだけプレイヤーに自由に操作してもらえるようにしています。

二つ目は、我々が現在開発しているゲームがもしかしたら多くのVRプレイヤーにとって初めてもしくは早期に触るコンテンツになるかもしれません。その意味でも彼らが優れたVR体験を得られるように細部まで注意して開発しています。彼らがVRの世界に失望せず、何度もVRの世界に戻ってきたいと思ってほしいからです。

三つ目はできるだけプレイヤーにVR環境に居続けてもらえるようにすることです。

そのためにゲーム内にある程度ルールを設けています。例えば両手のみを使って登ることがそのルールの一つです。プレイヤーがこのルールを理解していてプレイしていれば、おかしく感じずに優れたVR体験を継続にできます。

とは言え、ルールは複雑すぎないことです。複雑すぎると逆効果をもたらす可能性があります。

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「The Climb」のコンセプト画像

弊社のVR開発歴史の話に戻りますと、VRの前に3Dテレビにもゲームをリリースしていました。Crysisというゲームですが、このゲームのコンテンツを3DテレビからVRヘッドセットに移植してテストしてみました。

テストの結果は悪くなかったのですが、音声効果が足りないことに気づき、次の「恐竜島へ戻る」の製作で音声効果を強化しました。

「恐竜島へ戻る(1)」で目指したのは、主に基本技術の開発、基本世界の構築とスケール感の調整です。最初のVRデモ版なので、ハードウェアとの連携や調整が重要な課題でした。

スケール感に関しては、例えば遠くにいた鳥との距離と自分と周りの木の距離が合わなくなってしまうと、たまに違和感を感じます。このような空間、距離に関する調整を多くしていました。

 

「恐竜島へ戻る(2)」では技術的な調整はほぼ完成し、コンテンツの開発のレベルを上げました。一つは物語が見れるような内容にし、プレイヤーが中で動けるようになり、その世界のものに触れることができました。社内組織体制の調整時期でもあったので、暫定的な試作品でもありますが。

これらの技術基礎や繰り返したテスト経験・ノウハウを積み重ねた上、我々はそろそろVRゲームが開発できるのではないかと思い、「The Climb」の製作を始めました。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=ppc7HHliOA8&w=560&h=315]

「The Climb」デモビデオ

それでは少し「The Climb」の開発技術の話をいくつかのトピックに分けて詳しく説明していきます。

一つはプレイヤーの擬似骨格の構築です。

「The Climb」では、プレイヤーは自分の両手しか見れないので、骨格を作る必要がないじゃないかと人に言われていますが、そうではありません。骨格があるほうがプレイヤーの両手の動きが明らかに自然になります。

単純に腕時計を見るという動きだけでも骨格がないと動きが不自然になります。

岩壁を登っていく時も骨格をベースにデザインするとリーチできる範囲もわかりやすいです。

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ゲーム制作技術:擬似骨格

もう一つは自然な動きです。これは「The Climb」において非常に重要です。特に体の物理的な動きですね。

例えば、プレイヤーが両手で壁を掴んでいて、片手を離すと体が自然と少し後ろにのけ反りますよね。或いは、両手を交互に使って上に登っていくと体の重心が常に移動していますよね。

そのような時に、うまく設計して重力・重心・骨格システムを構築しないとプレイヤーが不自然に感じたりする可能性もあります。そのため、両手や体の動きに関する設計に結構気を付けています。

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ゲーム制作技術:自然な動き

クライミングの進行ルートは事前にデザインされています。

プレイヤーが進められない時にヒントを与えたり、複数プレイヤーがスピード競争する時に、マーカーを使ってルートに沿って相手の位置が表示できたりする機能があります。

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ゲーム制作技術:クライミングリートのデザイン

そして、「The Climb」が幅広いプレイヤーたちに楽しんでもらえるように到達性を難易度として設定しました。手を伸ばして次の掴むところがいくつもあり、それぞれ簡単なところ、難しいところや到達できないところなどが設計されています。

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ゲーム制作技術:ステップごとの到達性

更に、他のプレイヤーとタイムアタックもできます。リアルタイムではないですが、他のプレイヤーの残したルート記録を再現して競争する形です。他に記録再生や登るルートを映し出して確認することもできます。

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ゲーム制作技術:他のプレヤーとのタイム競争

言うまでもないですが、グラフィックが非常に大事です。

我々のグラフィックデザイナーはゲーム開発の1日目から細かくチェックしています。

VRだからこそ、プレイヤーが近づいて見ても、おかしくないように入念にチェックしてテストする必要があります。

あとは何回も繰り返しますが、最適化を何回も何回も繰り返してやっていくことですね。

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ゲーム制作技術:真実性の高いグラフィック

もちろん物もVR体験のカギを握っています。

飛んでいる鳥、植物、雲、触れるもの、曲げれるものなどなどがあります。

ゲーム道具としても鐘やフラグや登山道具なども。

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ゲーム制作技術:真実性の高いものとその特性

そして、音声。音源は固定した位置だけではなく、動物など動いている音源もあり、もちろん縦軸で移動する音源もあります。

自然環境にいるので多くの音源を想定しなければいけません。

「The Climb」ではプレイヤーのVR体験を高めてもらうために、できるだけ多くの音源を用意していますが、コストがかなり重なるので最適な数量を想定する必要があります。

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ゲーム制作技術:音声効果と音源

ユーザーインターフェースに関してはARのようなスタイルで、プレイヤーが仮想空間でメニューを切り替えたり、機能を選んだりすることができます。

ストアで購入したグリップも箱に入った状態で届き、自分で箱を開けて取り出すようなデザインをしています。

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ゲーム制作技術:ユーザーインターフェース

もちろん、開発の中で何回試して調整してもなかなかうまくいかないこともたくさんあります。

例えば、一つは頭の回転をVR世界内でより早く回転するようにすることです。

頭が10度回転してVR世界内で1.5倍にして15度回転をさせるとやはりVR体験が悪くなります。

もう一つはVR世界で全身のモデルを作ることです。

これもうまくいかず、手が伸びたりして不自然になってしまいます。

<以上講演内容摘録>

 

技術中心のお話ですが、世界のどこまでも一瞬に行けてその大自然の中でクライミングができると想像するだけでわくわくします。

普段はあまり技術の話を聞くチャンスがないので、製作の裏側を少し理解することができたのではないでしょうか。

 

KenCheng


Sidora Marketing株式会社CEO。台湾生まれ台湾育ちの台湾人。2006年に来日し、8年間に渡り、留学や就職を経験したのち、2014年にフィンランドに移り、2015年に創業。現在多国を跨ぐゲーム関係ビジネスを運営しながら、なかなか日本に入らない海外現地の最新情報をお届けします。

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