VR Inside

VR/AR/MRの未来を創るビジネスニュースメディア

南カリフォルニア大学研究チーム、共感できる「イマーシブ・ジャーナリズム」動画の条件を特定。「オフの声」「ヒトの声」「環境音」がカギ

2017/09/18 18:01

海外メディアMediumは、南カリフォルニア大学研究チームが発表した共感できる360°ドキュメンタリー動画に関する研究結果を報じた。

6つのイマーシブ・ジャーナリズム動画を視聴し比較検証

同メディアによると、南カリフォルニア大学のVRをはじめとした最先端テクノロジーを活用したジャーナリズムを研究するチームは、同大学の学生を被験者としてVRを活用したジャーナリズム・コンテンツが共感される条件を特定する実験を行った。

VRを活用したジャーナリズム・コンテンツは「イマーシブ・ジャーナリズム」と呼ばれ、すでに動画のジャンルとして認知されている。このジャンルの動画の特徴は、映像化した出来事を「見せる」のではなく「体験させる」ことで、視聴者に(より正確には体験者に)強い共感を引き起こすことが知られている。

ところで、どのような特徴をもったイマーシブ・ジャーナリズム・コンテンツが「より共感される」のかに関しては、まだよくわかっていない。そこで、同研究チームは現在すでに一定の評価を得ているコンテンツを被験者に見せることで、「共感の条件」を特定する実験を実施した。

実験方法は、各コンテンツをGear VRを使って被験者に見せた時の反応を計測し比較するという方法がとられた。計測するデータは、コンテンツ視聴後に行う被験者へのアンケート、さらには視聴中の被験者の脈拍、脳波といった脳科学・生理学的データも収集した。

なお、実験に使われたコンテンツは6作品あり、以下にトレーラー動画または動画本編を示す。

Project Syria

シリアの戦禍を伝える360°動画。同動画ではシリアの市街地で起こった爆弾テロをCGで再現して、視聴者がまさに爆弾テロの現場に居合わせたような演出をしている。

Clouds Over Sidra

シリア内戦により避難生活を余儀なくされた少女Sidraの日常を追う360°動画。Sidra自身がナレーターを務めている。

The Fight for Falluja

イラクの都市ファルージャにおけるイラク軍とイスラム国の戦いをリアルに伝える360°動画。

Zambia: Gift of Mobility

ザンビア共和国では、車イスが必要な障がい者は2輪の車イスには乗れない。というのも、同国のほとんどの土地は舗装されていないからだ。そのため、舗装されていなくても乗れる3輪の車イスを普及させる必要がある。その普及の様子を報じた360°動画。

6x9: a virtual experience of solitary confinement

アメリカの独房の環境を体験する360°動画。タイトルの「6x9」は独房の大きさの「6 x 9フィート(約1.8 x 2.7メートル)」を意味する。

VR Pearl Harbor attack reenactment

太平洋戦争におけるパールハーバーの奇襲を再現した360°動画。本物のプロペラ機にカメラを付けて撮影している。

共感できるイマーシブ・ジャーナリズム動画の条件

被験者に以上の6作品を体験してもらって、まずわかったことは同一コンテンツでもVRヘッドセットとディスプレイ上で見るのとでは、全く違う体験だということである。視野いっぱいに画像が広がるVRヘッドセットは、視聴者への影響力が既存メディアの比ではないのだ。

実験の結果、さらに以下のようなことが判明した。

真実味を与える「オフの声」

イマーシブ・ジャーナリズム動画においては、「オフの声」(映像には写っていないナレーターの声)を使った説明が、動画に共感するうえで最も真実味が感じられ、重要である。

視聴者は、動画を見ただけではその意味を完全には理解できない。動画に関する「客観的な」説明を必要としているのだ。

「ヒトの声」は感情を高め、「環境音」は感情を生む

「ヒトの声」を聴くと、視聴者の感情は高ぶる。

脳波および生理的データの測定の結果、「ヒトの声」に聞き入っている時、視聴者の感情はもっとも高ぶるということがわかった。実験に使われた作品では、主人公の少女が自分の生活を切々と語る「Clouds Over Sidra」を視聴した時、被験者の感情は高ぶった。

リアルな環境音は、視聴者を動画に没入させる。

環境音がリアルな動画では、視聴者が平常心を保てなくなることが観察された。「平常心を保てない」とは、平静な脳波および生理的データが乱れることを意味している。なお、「ヒトの声」を聞いた時の感情の高ぶりは「1から100への変化」だとすると、「環境音」による変化は「0から1への変化」に該当する。

視聴者の平常心をもっとも乱したのは、爆弾テロをリアルに再現した「Project Syria」であった。

被験者たちの感想

以上のような脳波と生理的データに基づいた知見のほかに、被験者のアンケート結果から以下のようなことがわかった。

もっとも共感できたのは「Clouds Over Sidra」
・CGを活用した「Project Syria」は、ドキュメンタリー作品というよりゲームのように感じられた。
・「VR Pearl Harbor attack reenactment」は、2Dのドキュメンタリー映画のようであまり共感できなかった。
・「Zambia: Gift of Mobility」は、テレビのドキュメンタリー映像のように感じあまり共感できなかった。

もっとも共感できた作品が「「Clouds Over Sidra」であったのは、次のように説明できるのではないだろうか。同動画では、主人公の少女によるナレーションがあり、かつ動画では絶えず非難している子供の声が聞こえる。つまり「オフの声」と「ヒトの声」の両方があるため、真実味がありかつ感情が高まるので共感を呼んだのではなかろうか。

反対に「VR Pearl Harbor attack reenactment」があまり共感されなかったのは、同動画では多くの時間をプロペラ機から撮影した映像に充てており、「オフの声」も「ヒトの声」にも乏しいから共感できないのかも知れない。

以上の研究結果は、イマーシブ・ジャーナリズムのほんの一端しか明らかにしていない。今後、さらなる実験を重ねてイマーシブ・ジャーナリズムの光を影を明らかにしていく必要があるだろう。

南カリフォルニア大学研究チームが発表した共感できる360°ドキュメンタリー動画に関する研究結果を報じたMediumの記事
https://medium.com/@ebreilly/headspace-vr-study-examines-audience-and-empathy-61407605ae60

VRInside~VR/AR/MRの未来を創るビジネスニュースメディア~


VR・AR・MRからVTuberまでXRに関連した最新情報を配信します。

最新ニュースを読む