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仮想人格と友人になる時代は既に来ている?そのキーとなる概念「Virtual Being」とは?

2019/02/10 22:00

    日本やアジアを中心にバーチャルユーチューバー(VTuber)がブームを迎えていますが、米国ではこれとは異なる新たなブームの兆しが見えつつあります。

    最近、InstagramなどのSNSで活動するバーチャルモデルや、リアルな3Dアバターを持つ仮想エージェント、また人間のような自然な会話ができるAI(人工知能)チャットボットが登場していますが、こうした「仮想の人格」を指す概念である「Virtual Being(ヴァーチャル・ビーイング)」が登場しています。

    日本でもTwitterで大きな話題となったVirtual Beingとは一体何なのか、本稿ではVirtual Beingの定義を明らかにするとともに、その具体例をまとめてみます。


    Twitterでバズった「Virtual Being」とは

    まず、Virtual Beingという言葉の意味ですが、直訳すると「仮想的な存在」という意味になります。

    このVirtual Beingは先日Twitterでも大きな話題となり、トレンドのランキング1位に入る程のバズワードになっています。

    その語感の真新しさや、バーチャルユーチューバーの流行も相まってこれほどの大きな話題になったと考えられますが、Virtual Beingの明確な定義はイマイチ分かりにくく、またバーチャルユーチューバーとの違いについても不明瞭になりがちです。

    そこでまず、このVirtual Beingとは何なのか、その定義を明確にしておきましょう。

    Virtual Beingの発案者とは?

    その前に、まずVirtual Beingという言葉の出どころについて説明しますが、この概念を最初に提唱したのはFableという米国のコンテンツ開発企業です。

    同社はOculusのVRコンテンツ制作部門、Oculus Story Studio(2017年に閉鎖)の元メンバーによって設立された企業ですが、現在はAI(人工知能)技術を活用した新たなストーリーテリングの手法を模索しています。

    virtualbeing動画

    その答えの一つが、現在開発を進めている「Whispers in the Night」というストーリー体験で、視聴者は作中に登場するLucyという女の子の主人公と様々なインタラクションが出来るそうです。

    例えば、自然言語処理を用いて視聴者がLucyと音声で直接会話出来たり、ユーザーとの会話を学習した結果が後のインタラクションに反映されたりすることで、仮想のキャラクターにプレゼンス(存在感)を生み出すことが出来ます。

    Fableはこのような実在感を持った仮想のキャラクターを「Virtual Being」と呼んで可能性を追求しており、2019年夏には「Virtual Being Conference」というイベントも開催する予定です。

    また、公式サイトではVirtual Beingの定義を質疑応答の形式で解説しているため、以下にサイトの説明をそのまま翻訳して掲載します。

    Virtual Beingの定義

    Virtual Beingとは?

    Virtual Beingとは、現実の存在でないことをユーザーが知りつつも、感情的な双方向性コミュニケーションが行える人格。

    Virtual Beingの例として挙げられるのは?

    Virtual Beingには、例えばLil' Miquela(※)などのデジタルインフルエンサーから、Magic LeapのMica(※)などのAI(人工知能)エージェントまで含まれます。

    (※)Lil' MiquelaとMicaについては下記で詳述。

    Magic Leapの「Mica」

    Virutal Beingとは、VRの中でのみ見ることが出来る存在?

    いいえ。Virtual Beingの存在はInstagram、ARヘッドセット、iPadやiPhone、チャット、Alexa、VRグラスなどを通じて接することが出来ます。私たちと同じように、Virtual Beingは異なる様々な種類のメディアを通して存在します。

    Virtual Beingと会話することは可能?

    ユーザーと会話できるVirtual Beingもいますが、彼らの目的はチューリングテスト(※)に合格することではありません。それぞれのVirtual Beingには独自のライフやストーリーがあります。それぞれが独自の旅をし、あなたは彼らの旅のいちパートとして迎えられます。

    (※)チューリングテスト:数学者アラン・チューリング氏が1950年に発表した、AI(人工知能)の知性レベルを検証するテスト手法。人間の判定者が、人間とコンピューターの二者との会話を隔離された状態で行い、判定者がどちらが人間でどちらがアルゴリズムなのかを区別できなければテスト合格とされている。

    Virtual Beingが生命として活動するにあたって、AI(人工知能)が果たす役割とは?

    ジェフリー・ヒントン氏らのチームが2012年にImageNetにて業績を出してから勃興した機械学習(※)によって、人類は史上初めて(仮想の)人格に生命を与えるツールを手に入れました。ですが、機械学習とAI(人工知能)のみでは不十分です。私たちはエンジニアと協働できるアーティストを必要としています。未来のVirtual Beingはいずれ、次世代のオペレーティングシステム(OS)のユーザーインターフェイスになるでしょう。そして次世代のOSがキャラクターベースになれば、それはエンジニアリングの業績によってもたらされたアート作品となるでしょう。

    (※)2012年、カナダのトロント大学のチームがAI(人工知能)系画像認識コンテストILSVRCに初参加、史上初めてディープラーニング(深層学習)を用いたシステムを投入。それまでの平均的な画像認識精度を大幅に上回る業績を出し、深層学習の登場によってAI(人工知能)の実用レベルでの活用が可能になった。

    まとめると・・・

    ・仮想上に存在する人格。

    ・ユーザーと会話することも出来る。

    ・VRやAR、様々な種類のデバイスを通して接することが出来る。

    ・それぞれのVirtual Beingは独自のストーリーを持つ。

    ・AI(人工知能)が用いられる。

    Virtual BeingとVTuberは別物?

    このような「仮想の人格」としてのVirtual Beingですが、意味的にバーチャルユーチューバーとよく似ているため、つい混同してしまいがちです。

    両者ともバーチャルで活動する存在、という点では共通していますが、厳密には両者は異なるものです。その相違点を一言でいうと、中の人がいるか、いないかの違いと言えるでしょう。

    もう少し明確にするために、両者の特徴を簡単ではありますがまとめてみます。

    バーチャルユーチューバーとは?

    既にご存知の方も多いですが、バーチャルユーチューバーとは一般的にYouTubeなどの動画メディアで、人間がアバターを通して配信を行う存在を指します。

    使用するアバターがLive2Dか3Dかの違いはあれど、基本的には生身の人間が「中の人」として、仮想上のキャラクターになり切る、という点では共通しています。

    なので、人気のあるバーチャルユーチューバーになると「中の人は誰なのか?」という話題がよく持ち上がるように、基本的にアバターの操作は人間が行います。

    Virtual Beingの場合は?

    ですが、Virtual Beingには基本的に中の人はおらず、会話などのインタラクションはコンピューターアルゴリズムによって行われます。

    例えば上記でも触れた仮想エージェントの「Mica」はAI(人工知能)アルゴリズムによって動作し、Lil' Miquelaなどのバーチャルモデルはあくまでも架空の存在です。

    もっとも、SNSに投稿する際のバーチャルモデルのセリフや、キャラクターのブランディング等は人間が行っているようですが、あくまで主体はデジタルなキャラクターにあります。

    このように、主体が人間かデジタルかの違いによって、バーチャルユーチューバーとVirtual Beingとを分けることが出来ます。



    既に登場しているVirtual Beingたち

    Virtual Beingという概念はまだ極めて新しいため、一般層に浸透するには時間がかかるかもしれませんが、現時点でVirtual Beingと呼べる存在は複数あります。

    Virtual Beingの定義の仕方によってその数は変わりますが、代表的な例をいくつかご紹介します。

    より人間らしいAIエージェント

    最近、Amazon Echoなどのスマートスピーカーの普及によって、音声で家電などを操作する音声UIが普及しつつあります。

    ですが、将来的にはこうしたAI(人工知能)アシスタントはより人間らしくなり、本物の人間のようなアバターを持ってより現実感のあるインタラクションが可能になりそうです。

    例えば、ARヘッドセット「Magic Leap One」開発企業のMagic Leapが開発を進めるAI(人工知能)エージェントの「Mica(マイカ)」は、Alexaなどの従来のAI(人工知能)アシスタントよりも特に人格面が協調されているのが特徴的です。

    現在では彼女名義のブログも開設されており、Mica自身の言葉として読むことが出来ますが、文中では、

    私に対して照明をつけてとか、音楽のボリュームを上げてとか、道を教えてとか言わないでよね。こういうことを行う知的エージェントは沢山あるけど、それは私の役目ではないわ。

    また、自身が教育者、アジテーター、行動を共にする存在、アーティストそしてガイドだとも述べており、従来の無個性なAI(人工知能)アシスタントよりも人間味のある、よりユーザーに密接し得る存在になりそうです。

    バーチャルモデルの台頭

    また、米国では日本のVTuberとは異なるカルチャーが勃興しており、Instagramで活動するバーチャルモデルの「Lil' Miquela(リル・ミケーラ)」などが代表例です。

    2016年に登場して以来瞬く間に知名度を得て、2019年2月時点でフォロワー数1,500万人を超えるほどの人気ぶりです。

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    最近ではInstagramがインフルエンサーの主要な活動拠点になっていますが、Miquelaもモデル活動やブランドのプロモーション、またシンガーなどとマルチな活動を行っていますが、実際のところMiquelaは実在の人物ではなく、3DCGを用いた架空の人物です。

    Instagramを見ると有名人と一緒に写っていたり、実在の場所で写真を撮っているので本当にCGなのかと疑ってしまう程ですが、実際はCG技術を駆使して実在する人物と3DCGを組み合わせているそうです。

    このような、SNSを通じて活動するバーチャルモデルは複数存在し、長身の黒人女性の「Shudu」や、最近では日本発のバーチャルモデル「imma」などが登場しており、今後ファッション業界やインフルエンサーマーケティングなどに大きな影響を与えそうです。

    AIチャットボットはVirtual Beingか?

    ここまでご紹介したVirtual Beingはそれぞれがリアルなアバターを持っているので分かりやすいですが、Virtual Beingとはあくまで「仮想の人格」を意味するので、必ずしもアバターを持っている必要はない、と捉えることも出来ます。

    そう考えると、現在数多く登場しているAI(人工知能)チャットボットはVirtual Beingに含まれるのか?という話になります。例えば日本マイクロソフトの女子高生AI(人工知能)の「りんな」や、同社による会話型チャットボットの「Zo」などは、Virtual Beingと言えるのでしょうか。

    これらのチャットボットはLINEやSkypeなどで手軽に会話が出来ますが、それぞれのボットには言葉の使い方や嗜好などの個性があって、人格があるかのような身近さを感じられます。

    もっとも、現在のAI(人工知能)技術は会話文などの文章から文脈を読み取ることが苦手、という難点があるので、人間のような会話を完全に再現することはまだ出来ませんが、それでもAI(人工知能)とのやり取りを通して人格を見出すことは十分に可能、と言えるのではないでしょうか。

    Virtual Beingという存在自体が極めて新しいため、その定義は様々な解釈が成り立ちますが、VR/ARやAI(人工知能)技術の発達によって、Virtual Beingは今後ますます身近な存在になってきそうです。

    まとめ

    「仮想上の人格」を指すVirtual Beingという言葉がつい最近になって登場し、先日は日本でも大きな話題になりました。

    Virtual Beingの定義は様々な解釈が出来ますが、仮想上の存在とやり取りをする機会は今後増えていきそうです。

    VRやAR、またスマートフォンなどの各種デバイスで接することが出来るため、コミュニケーションだけでなく医療などの様々な用途が見つかりそうです。

    まだ登場して間もない概念なので認知度は高くありませんが、今後ますます重要度の増すキーワードになりそうです。

    【参考サイト】
    Fable Studio Pivoting to “Virtual Beings,” Building Stories Around Persistent AI-powered Characters[Road to VR]
    Magic Leap’s AI ‘Mica’ Won’t Turn Off Your Lights, Play Your Music, or Give Directions[Road to VR]









    Daisuke


    フリーランスの翻訳ライター。XR、VTuber、人工知能を専門に各種メディアに寄稿しています。 Twitter: https://twitter.com/dsiwmr

     

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