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アメリカとメキシコの国境地帯をVRで訪れる

2017/09/22 16:42

国境を警備する様子

国境を警備する様子をVRで

VRコンテンツには、クリエイターの想像力で作られた架空の世界だけでなく現実を映したドキュメンタリー作品も存在する。難民問題を扱ったものや未開の地に暮らす動物を追ったものなど、実際に現地に行くのが難しい土地での出来事もVR技術によってバーチャルで体験できるようになっているのだ。

アメリカで初めて毎週更新のVRニュース番組を開始したUSA Today Networkは、この分野の先駆者だ。USA TodayのYouTubeアカウントでは、互いに接触してしまいそうな近さで編隊飛行するF/A-18ホーネットや太平洋上に浮かぶ空母に発着艦するジェット機からの360度映像が公開されている。

このUSA Todayの最新のVR作品では、アメリカとメキシコの国境地帯や周辺の様子を見ることができる。『The Wall』はYouTubeで視聴できる360度映像ではなく、HTC Viveを使ったより没入感の高い作品だ。作品は現在Viveportから無料でダウンロードできる。

アメリカとメキシコの国境へ

The Wall

The Wallのメニュー画面

日本は島国なので、日本に暮らしていて国境を意識する場面はほとんどない。基本的に海が国境となっているし、船や飛行機に乗った場合を除くと外国の土地が見える場所すら少ないからだ。

だが、多くの国で隣国との国境は陸続きだ。扱いも各国で異なっており、一般市民では近づくことすら難しい国境もあればうっかり入国してしまいそうな国境もある。The Wallで取り上げられたアメリカとメキシコの国境一つ取っても、地域によってその雰囲気は様々だ。

国境を巡る問題

アメリカとメキシコの国境周辺で問題になっているのは、メキシコからアメリカへ密かに入国する人々の存在だ。こうした不法入国者の多くは仕事を求めてアメリカに忍び込んでいるが、中には違法な薬物を売り捌くために入国する者もいる。

こうした問題へのシンプルな対策として国境に壁を建設するというアイデアもあるが、現実的には難しそうだ。The Wallでは、この国境で今どういったことが起きているのかを知ることができる。ただ国境地帯で不法入国や麻薬の密輸が問題になっているというだけでなくその地域の地形や周辺に住む人々の様子もアプリ内で示され、包括的な知識を得ることが可能だ。

The Wallのコンテンツ

The Wallでは、国境沿いに存在する3つの地点の様子を見ることができる。

  • ・テカテ近郊
    一箇所目は、メキシコバハ・カリフォルニア州テカテの近郊だ。このエリアでは、岩だらけの丘の中腹を国境が走っている。
    国境には鉄の柵が設置され、カリフォルニアとメキシコを隔てている。
  • ・ビッグベンド国立公園
    二箇所目は、テキサス州の南端にあるビッグベンド国立公園だ。国立公園内の岩山が国境となっている。
    1,000フィートの崖は、どんな人工の壁よりも高い。
  • ・クリストレイ山
    最後はクリストレイ山の麓だ。アメリカとメキシコ両方から巡礼者が訪れるエルパソにほど近い。

3つの地点を見るだけでなく、映像やスライドショーで示される国境にまつわる物語も含まれる。

人間が作った境界

国境について特に大きく取り上げられるのは不法入国や麻薬の問題だが、そもそも国境は人間が勝手に作ったものだ。国境が定まるよりも前からこの土地に暮らしてきた民族や野生動物もおり、壁の存在によって彼らの文化や宗教が変化したり動物の生息地が減ってしまったりといった問題も起きている。

The Wallでは、こうした種々の問題が扱われている。

The Wallの制作

The Wall

文字通り壁が存在するエリアもある

HTC Viveの利用

USA Todayはこれまでパソコンやスマートフォンで視聴できる360度動画コンテンツを制作していたが、今回は新しい試みとしてHTC Viveが利用されている。所有者の少ないハイエンドVRデバイスをハードウェアに選ぶことでアプリを利用できるユーザは減ってしまうが、体験の臨場感を高めることには繋がっているようだ。

HTC Viveにはハンドトラッキングコントローラーが付属しており、メニューの操作をコントローラーを使って行うことができる。また、YouTubeの360度動画と違って移動が可能だ。

360度動画では自由に視点の方向を変えることができるが、移動はできなかった。The WallではHTC Viveの採用によってルームスケールのVRに対応しているため、VR空間の中を歩き回ることができるようになっている。

再生するだけの360度動画では一方通行になってしまうが、The Wallではユーザがメニューから操作を選んだり、空間内を歩き回ったりと能動的に関わることができるようになっている。この変化によって、外部の観客としてではなく現場にいる感覚で体験することができるだろう。

地形の再現

The Wallには映像・写真や文字による情報も含まれているが、VRならではの情報伝達手段となっているのが3Dで再現された現地の地形だ。地形の再現には、ヘリコプターに装備されたカメラとLIDARテクノロジーが活用されているという。

LIDARは、レーザーによって距離の測定を行う技術の発展系だ。映像とLIDARによる距離情報を元に、国境地帯の地形がVR空間に再現されている。

 

日本に住んでいると遠い世界の問題という印象の国境問題だが、アメリカやメキシコに住む人でも国境近くの人でなければ実感しにくいだろう。このVRコンテンツを使えば、現地でどのような問題が起きているのかを知ることができそうだ。

実感しにくい問題を多くの人に伝えるメディアとしてのVR利用も、デバイスの普及とともに拡大していくだろう。

 

参照元サイト名:AZ Central
URL:http://www.azcentral.com/story/news/politics/border-issues/2017/09/19/border-wall-virtual-reality/618982001/

参照元サイト名:Viveport
URL:https://www.viveport.com/apps/3f16c881-0be2-475b-be59-7da4b1d0093f

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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