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VRよりARのほうが成長する、と考え始めている開発者もいる。が、「VRとARの差」って何?

2017/05/23 16:22

海外メディアDigital Trendsは、ARとVRの市場を比較した記事を掲載した。

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AR開発者は実感している

同メディアによると、今月はじめにアメリカ・ロサンゼルスで開催されたUnity主催の開発者会議Vision VR and AR summitでは、「ARとVRのどちらがより成長するか」という話題について、激しい議論が重ねられた。

ARはディスプレイを一掃する

同イベントにおいて、もっともARを擁護したのはARプラットフォームを提供するVuforiaのプレジデントであるJay Wrightであった。Vuforia社は、2009年よりARサービスの開発を支援しており、クライアントにはIKEAにいた。

同氏は、今後のAR市場に関して、以下のように発言した。

VRは多くの投資を呼び寄せたまさに「大きな嵐」でした。そして、ゲームを次の世代に導いたことはご存知のことと思います。対して、ARはまだ「大きな嵐」となっておりません。

AR市場は、まだくつかのセグメントに分けられています。つまり、スマホを使ったAR体験と、HololensのようなARグラスによるそれに別れているのです、それにまだARの業務利用は発展途上です。

しかし、やがてそうしたセグメントがひとつとなって、ARが大きく成長する時は必ず来るのです。

さらに同氏は、ARが普及した未来に関する以下のような展望も披露した。

ARが普及すれば、現在のテレビ画面、ノートPC、ミーティング・ルームでプロジェクターによって投影されるパワーポイントの資料、こういったもの全てがARデバイスを使って閲覧するものとなります。

...結局、ARは私たちがコンテンツに求める全てのものとなります。それは全てのプラットフォームになり得るのです。

ARは誰でも参加できる

今年の4月にAR玩具「SwapBots」の開発資金をクラウド・ファンディングサイトIndiegogoで調達したJack Brewittも、ARの未来を信じているひとりだ。同氏は、SwapBotsの開発にあたり、Vuforiaの技術支援を受けている。

同氏は、VRに対するARの優位性を以下のように説明する。

私は、VRが世界に「次のステップ」をもたらすテクノロジーだと思っておりません。VRは確かに「ひとつの前進」ではあります。しかし、本当の「次のステップ」はARがもたらすのです。なぜならば、ARはVRが開けることができない可能性をも開くからです。

ARは、リアルな世界に開かれています。そのため、子供も含めた全てのヒトが簡単にARの世界に参加することができます。この万人に開かれていることこそが、ARがVRに勝る点です。

確かに、現在のVRヘッドセットは、主に視力に対する影響を考慮して子供の利用を制限している。対して、ARは「ポケモンGO」に代表されるように、確かに子供から大人まで楽しめるものとなっている。

AR市場の予測

実のところ、ARはその市場の勃興時期こそVRより遅いものも、いずれVRを凌駕する市場規模となるとする予測は多数ある。

三菱総合研究所の予測

そうしたAR市場予測で有名なのは、本メディアでも以前に紹介した三菱総合研究所によるものである。

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2016年5月に発表された同研究所作成の予測によると、VRとARの世界市場規模は、2020年にはVRが60億ドル・ARが420億ドル、2025年にはVRが80億ドル・ARが800億ドルほどに成長する。つまり、2020年にはARはVRの7倍、2025年には実に10倍の市場規模になるのだ。

ARがVRを大きく凌駕する理由には、ARデバイスはスマホやタブレット、さらにはHololensのようなメガネ型デバイスにも実装できるという広範な普及領域を持っていること、さらには街頭に表示するAR広告のようにリアルな世界に広大な潜在的市場を有していること、といったことが挙げられている。このことは、まさにVuforia社のJay Wright氏が指摘したことでもある。

eMarketerの予測

またアメリカの調査会社eMarketerは、2017年5月22日、ARとVRのユーザー数増加予測を発表した。

アメリカのARユーザー数の予測推移。赤線は増加率

アメリカのARユーザー数の予測推移。赤線は増加率

同社の調査における「ARユーザー」とは、SnapchatのようなARカメラアプリを1ヶ月に1回は使っているスマホユーザーを意味している。この定義に従えば、アメリカのARユーザーは2017年時点において、すでに4,000万人いることになり、2019年には5,440万人に増加する。

ARユーザー増加を牽引するのは、Snapchat、Instagram、そしてFacebookのような「ARカメラアプリ」メーカー/プラットフォーマーだ。

アメリカのVRユーザー数の予測推移。赤線は増加率

アメリカのVRユーザー数の予測推移。赤線は増加率

対してVRユーザーとは、VRゲームあるいは360°動画を1ヶ月に1回は体験しているユーザーを意味する。この定義には、Google Cardboardのようなモバイル型VRヘッドセットを使っているユーザーも含まれる。

同社の調査結果によれば、アメリカのVRユーザーは2017年にはARユーザーの約半分強の2,240万人となり、2019年には4,920万人に増えると予想される。結局、VRユーザー数はARユーザー数を超えることはないのだ。

ARとVRの未来

ところで、果たしてARとVRは互いにユーザーを奪い合うようなライバルなのだろうか?さらに言えば、決して交わることのない「水と油」のような対立するテクノロジーなのだろうか。

最近では、短期的には異なったものであることは事実だけれども、長期的にはVRとARはひとつのものとなる、という考え方が次第に有力となっている。

サンダンス映画祭に「HEROES」を出品したThomas Westerは、以上のような「VR・AR一元論者」である。「HEROES」はかなり特異な作品で、故デヴィッド・ボウイの楽曲「HEROES」を題材としたダンス・パフォーマンス作品なのだが、2D動画、VRヘッドセット、そしてHololensも使っている(トップ画像および下の画像参照)。

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Thomas Westerは、VRとARの関係について以下のようにコメントしている。

私が思うに、ARは知らず知らずのうちにVRとひとつのものになっていくでしょう。というより、コンテンツを制作する方法論から見ると、VRとARは(他のメディアと比べたら)似たものどうしなのです。

結局のところ、ARとVRを分けて考えることが求められるのは、短期的な利益を計算する場合に限られるのではなかろうか。反対に「ヒトと社会を豊かにするメディア・テクノロジー」という大きな視野に立てば、VRとARの差など気にならないのではなかろうか。

ARとVRの市場を比較したDigital Trendsの記事
https://www.digitaltrends.com/gaming/ar-will-be-bigger-than-vr-according-to-developers/

ARとVRの市場成長予測を発表した調査会社eMarterのウェブページ
https://www.emarketer.com/Article/Snapchat-Facebook-Fuel-AR-Growth/1015892


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