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難病の治療や介護に用いられるVR・ARまとめ。難病や障碍に苦しむ人のハンディキャップを埋めてくれる存在となるのか?

2017/05/21 17:30

    VRやARは、デジタルの人工的な世界を、現実として実感させてくれる。

    そのメリットは、現実であればその体験をするために必要となる空間や時間、さらには危険性といった制約を取っ払ってくれることだ。

    このことは、難病や障碍をもった人にとって非常に有益な結果をもたらしてくれる。

    この記事では、難病や障碍をもった人の治療や介護に用いられるVR・ARについて紹介したい。

     

    まだまだ指定されていないものもある!?難病とは

    難病 VR
    難病とは、原因がわからず、治療法も確立されていない病気のこと。

    このため、治療法の研究が進むのを待たざるを得ず、長期間療養が続くこととなり、患者は大きな負担を強いられることになる

    ニュースなどで「難病指定」という言葉を聞くことがあるが、難病の中には国によって指定された「指定難病」と、そうでない「難病」とがある。

    「指定難病」になると、国が治療法の研究のために助成を行ってくれる。

    難病の中で「指定難病」とされている疾患数は306

    新たに対象となる疾患の数は増えてはいるのだが、もちろん、まだまだ課題は残されている。

     

    視線によるコミュニケーションを可能にした分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」

    「OriHime(オリヒメ)」は、オリィ研究所が提供する遠隔でコミュニケーションをとることができる分身ロボット

    カメラ・マイク・スピーカーが搭載されていて、インターネット越しに操作することで周囲を見回したり、周囲の人と会話することが可能だ。

    「OriHime(オリヒメ)」は難病患者や障碍を持っていない人でも活用できる。

    しかし病や障碍によって行きたい場所に行けなかったり、コミュニケーション自体が取れなかったり…という人にとっては、非常に心強い味方となってくれる

    たとえば、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や脊髄性筋萎縮症といった神経難病は、筋力が低下することで体を満足に動かせなくなってしまう。

    さらに、呼吸器をつけることで会話もできなくなる。

    これに対しオリィ研究所の「OriHime eye(オリヒメアイ)」は、視線の動きのみで文字盤を操作し、文字を読み上げることが可能

    さらに「OriHime eye(オリヒメアイ)」と分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」が連動することで、頷いたり手を上げたりといったボディランゲージが可能になるだけでなく、「OriHime(オリヒメ)」の目を通して遠隔地の状況を見ることも可能となる

     

    Sergio Canavero氏による頭部移植手術に用いられるVR


    今年、2017年末には世界初となる頭部移植手術が実施される予定だ。

    患者はロシアのヴァレリー・スピルドノフ氏。

    ヴァレリー・スピルドノフ氏もまた、脊髄性筋萎縮症の一種に侵されており、全身の筋肉が動かなくなるという症状に苦しんでいる

    病が進行するとやがては心肺の筋肉まで動かなくなり、呼吸ができなくなって死ぬことになる。

    そんな彼が志願したのが、頭部移植手術

    健康なまま死んだドナーの頭部と身体を切り離すと同時に、ヴァレリー・スピルドノフ氏の頭部と身体も切り離し、ヴァレリー・スピルドノフ氏の頭部とドナーの身体とを縫合するという手術だ。

    世界初となるこの手術を担当するのは、神経外科医であるセルジオ・カナヴェーロ教授。

    VRシステム
    そして、この手術にあたってセルジオ・カナヴェーロ教授は、VRを用いてヴァレリー・スピルドノフ氏が新しい身体に慣れるためのシステムを用意した。

    このVRシステムの詳細は不明だが、装置の写真は公開されており、それによると、組み上げられたパイプの上面からから患者が着用するハーネスが吊り下げられている。

    ハーネスによって患者の身体をサポートするとともに、ヘッドマウントディスプレイによるVRコンテンツによってトレーニングを行う…というもののように見える。

    【関連記事】
    VRが世界初「頭部移植」の準備に役立つ。頭部移植手術患者が新しい身体に慣れる練習にVRを利用

     

    VRによる脳波コントロール。下半身不随患者のトレーニング


    難病のみならず、さまざまな理由によって下半身不随となってしまった患者のトレーニングにも、VRは用いられている。

    アメリカ、デューク大学のミゲル・ニコレリス博士らの研究チームは脊髄に障害を負って下半身不随となった患者8任に対して、VRヘッドセットを使った脳波コントロールのトレーニングを実施。

    脳波を読み取って、患者が装着するパワードスーツを操作、歩行を実現する…というのが目的で、このトレーニングは成功を収めたという。

    仮想現実の影響力の強さを物語る事例だ。

     

    VR・ARによってバリアフリー化の進んだ未来へ

    今回の事例の中で筆者が特に注目したのは分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」。

    神経難病患者のみならず、身体が満足に動かせないという問題を抱えた人すべてにとって、コミュニケーションのハンディキャップを埋めた上で孤独感から解放してくれる存在だ。

    今ハンディキャップに苦しんでいる人であっても、今後さらに進化した「OriHime(オリヒメ)」や、そのほかのVR・ARデバイスが登場することで、やがてはハンディキャップから解き放たれる未来が来るのではないか

    そんな希望を感じさせてくれる。

    どんなハンディキャップを抱えていたとしても、自由にコミュニケーションが取れ、やりたいことが実現できる…そんな極限までバリアフリーが進んだ世界も、ゆくゆくは実現できるかもしれない。


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