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中国でVRヘッドセットが子供の視力に与える影響を測定する実験が行われる。その結果は、むしろ視力が向上した

中国でVRヘッドセットが子供の視力に与える影響を検証する実験が行われた。4年生と6年生を対象に、Tilt Brushとタブレットのペインティングアプリをプレイしてもらった結果、Tilt Brushプレイ後に視力の向上が認められた。

海外メディアVRFocusは、中国で実施されたVRヘッドセットが子供の視力に与える影響に関する実験を紹介した。

科学的に測定されたVRヘッドセットの子供の視力に与える影響

ゲーム分野において発展が目覚ましいVRであるが、「VR元年」以降ひとつの懸念が抱かれ続けている。その懸念とは、子供がVRヘッドセットを長時間使用すると、視力に悪影響があるのではないか、というものである。こうした懸念は、直観的には非常に説得力があるように感じられる。しかし、実際のところはどうなのだろうか。

中国・北京にある先端イノベーション・センター(正式名称:The Beijing Advanced Innovation Center for Future Visual Entertainment)は、以上の懸念を科学的に測定する実験を実施した。

被験者と実験方法

実験の被験者には、日本における4年生と6年生の中国在中の子供が選ばれた。具体的には、4年生は13名の女児と12名の男児、6年生は11名の女児と14名の男児、各学年25名が実験に参加した。

実験は、まず各学年の参加児童にVIVEを使ってTilt Brushをプレイしてもらう。VIVEでの実験の後、各学年25名のなかから13名を選んで後日にタブレットを使ってペインティングアプリをプレイしてもらう。

Tilt Brushあるいはペインティングアプリ(以下、実験アプリと記す)をプレイする際には、以下のような測定を実施する。

  • 1.実験アプリをプレイする前に、視力測定を実施する。
  • 2.実験アプリを20分プレイした後、再度視力測定を実施する。
  • 3.さらにプレイ開始から40分後と60分後に視力測定を実施する。
  • 4.プレイ開始から60分経過した後の視力測定をもって、実験アプリのプレイを終了する。
  • 5.プレイ終了後、児童には実験アプリを一切見ないようにして休憩してもらう。
  • 6.休憩開始から10分後と20分後に視力測定を実施する。

以上の実験手順を実施するねらいは、VRヘッドセットとタブレット(タッチスクリーン)では、どちらがより子供の視力に(悪)影響を与えるか比較・検証することにある。

衝撃の実験結果

以上の実験を実施した結果、VRヘッドセットでVRコンテンツをプレイすると、むしろ視力が向上することが確かめられた。

まず、被験者のなかで視力が向上した人数の割合を示したのが以下のグラフである。

視力が向上した被験者の割合を示したグラフ

VRヘッドセットでTilt Brushをプレイした場合、全被験者の14%(つまり7名)に視力の向上が認められた。タブレットでのプレイに関しては、7.7%(つまり2名)に視力向上が確認された。

また、視力測定の平均を学年ごとにまとめると、VRヘッドセットでプレイした4年生はプレイ前に比べて平均0.048ポイント上昇した。同様にVRヘッドセットでプレイした6年生はプレイ前に比べて0.014ポイント上昇した。

対して、タブレットでプレイした4年生はプレイ前に比べて平均して0.033ポイント視力が低下した。同様のテストにおける6年生の結果は、0.001ポイントの上昇となった(下のグラフ参照)。

被験者の平均視力向上ポイントを示したグラフ

以上の測定結果から言えることは、次のようなことである。4年生・6年生ともVRヘッドセットでプレイした結果、全員に視力向上が認められたわけではないのに、視力測定の平均値が上昇したということは、上昇した児童は予想に反して大幅に視力が向上した(全体平均を上昇させるのに大きく寄与した)、と結論づけられる。

以上の実験結果から、VRヘッドセットは子供の視力に悪影響を与えるどころか、むしろ視力を矯正し向上させる効果があるのではないか、と考えられるのだ。

実験結果の再検証

もっとも、以上の実験結果からだけで、VRヘッドセットには子供の視力を向上させる効果がある、とは断定できない。

以上の実験では、高精細な画像が描画できるVIVEを使用した。同様の実験を、画素数が劣るスマホを活用するモバイル型VRヘッドセットで実施した場合、異なる結果となる可能性が否定できない。

また、実験ではVRコンテンツとしてTilt Brushがプレイされた。同コンテンツは、VRゲームに比べると画面の変化が穏やかである。同様の実験を「Raw Data」のようなVRFPSで実施した場合、同じ結果となるだろうか。

ともあれ、以上の実験は「VRヘッドセットは子供の目に悪い」という「常識」が必ずしも「真実」ではない、ということを示しただけでも大きな評価に値する。どうやら、VRテクノロジーに関しては、まだわからないことが多いようだ。

中国で実施されたVRヘッドセットが子供の視力に与える影響に関する実験を紹介したVRFocusの記事
https://www.vrfocus.com/2017/07/research-shows-vr-can-improve-vision-in-young-people/

上記記事のソースとなった実験報告
http://n3.sinaimg.cn/sina_vr/647a35e2/20170612/YingWenBaoGao.pdf

     

     

吉本幸記


千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com