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VRを使えば「都市計画の失敗」を予防できるだろうか?

2017/05/29 17:54

海外メディアGuardianは都市計画におけるVRの活用事例を紹介した。「都市計画の失敗」による犠牲者への共感を呼び起こすプロジェクト「Palimpsest」がある一方、そうした失敗を招かないように事前に都市を観察できるシステム「Skywand」がある。

海外メディアGuardianは、VRを活用した都市計画の事例を紹介した。

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都市計画の犠牲者を蘇らせる「Palimpsest」

同メディアによると、かつてイギリスの高速鉄道HS2が建設されるに伴い、一部の近隣住民は立ち退きを要求されて住まいを追われた。現在では、かつての住まいは跡形もなくなり、その存在自体が立ち退きを要求された住民とともに忘れられたように思われた。

イギリス・ロンドンにある建築学校Bartlett School of Architectureは、こうした「都市計画の犠牲者」を蘇らせるプロジェクト「Palimpsest」を試みた。犠牲者を蘇らせる方法として選ばれたのが、VRだ。

具体的には、現実にはもはや住まいが存在しない場所に立ってVRヘッドセットを装着して眺めると、かつて存在した住まいが幻影のように現れるのだ。現れるのは住まいだけではなく、住民もまるで亡霊のような外見で見ることができ、住まいを追われたことに対する無念を吐露する。

ちなみにプロジェクト名「Palimpsest」は昔使われていた羊皮紙の名前を意味しており、この羊皮紙は書かれた文字を消しては上書きするように使われていた。つまり、VRヘッドセットから見える昔の光景が現在に上書きされることの暗喩として、命名されたプロジェクト名なのだろう。

同プロジェクトは、VRヘッドセットを共感を呼び起こす装置として活用した事例とみなすことができる。同プロジェクトの真の目的は、失われた住まいとその住人を亡霊のように見せることによって、「都市計画の失敗」という痛ましい事件への共感を喚起することにあるのだ。

バーチャルなドローンの視点から都市を見れる「Skywand」

ところで、すでに起こってしまった「失敗した都市計画」ではなく、これから実施する都市計画にVRを活用するほうが建設的ではないか、という疑問が当然生まれる。

アメリカ・シリコンバレーに拠点があるAmber Garageは、バーチャルな都市の景観を体験することがシステム「Skywand」を開発した。

同システムは、実際に撮影された都市の写真をもとに作成された都市の3DモデルをVRヘッドセットを使って見ることができるようになっている。VRヘッドセットから見える視野は、バーチャルな都市の上空を飛び回るドローンからの視野と一致している。つまり、都市のなかにドローンを飛ばして見ているような体験ができるのだ。ドローンから画像を撮影するバーチャル・スクリーンショット機能も実装されている。

同システムを使って都市を「空中散歩」するだけでも十分面白い体験ではあるが、同システムの活用シーンとしては普段は見ていない視点から都市を観察して都市計画に役立てることが考えられている。

市民とのコンセンサスを形成するツールとしての3Dモデリング

Skywandのように都市をバーチャルな3Dモデルで表現する利点は、実際に工事に着工する前に都市計画の全貌を理解し、その影響を推測することができることにある。バーチャルな都市計画の時点で問題点を洗い出しておけば、先に挙げたイギリスの高速鉄道HS2のような悲劇は回避できるだろう。

オランダの企業Tygron Engineは、実際にバーチャルな都市を作成して都市計画に活用している。同社が関わったアメリカ・マンハッタンの事例では、都市計画を立案した政府関係者と工事の影響を受ける市民が3Dモデル化された都市を見ながら議論を重ねたのだった。

オランダ企業Tygron Engineが作成したマンハッタンの3Dモデル

オランダ企業Tygron Engineが作成したマンハッタンの3Dモデル

VRの活用が進む建築業界

以上のような大規模な都市計画にVRを活用する事例はまだ少ないものも、一般住宅の建設にVRを活用した事例は日本にも存在する。

実寸大の表現強みとする株式会社コンピュータシステム研究所「ALTA」

VR 不動産・建築業界 ALTA for VR

出典元:「ALTA for VR」(https://www.cstnet.co.jp/archi/products/alta_vr/)

株式会社コンピュータシステム研究所が開発した「ALTA」は、新築住宅やリフォームの提案をVRでプレゼンテーション可能なツールである。

スマホVRゴーグルを使ったVR提案も可能な上、さらに3Dプロジェクターを使って実寸大のVR住宅を表現することも可能。VRだけでなく、パース画や提案書の作成、見積書の作成まで可能になっており、統合された営業ツールとして使うことができる。

空間的なモノをディスプレイよりはるかに直観的に理解させるVRテクノロジーは、空間的なモノである建築物を扱う建築業界と親和性が高いのは当然と言える。本記事で言及したような都市計画では、着工してしまうと修正が困難になることから考えても、事前に失敗を洗い出すことを可能とするVRの活用は不可欠になるのではなかろうか。

VRを活用した都市計画の事例を紹介したGuardianの記事
https://www.theguardian.com/cities/2017/may/26/empathy-machine-vr-bad-city-developments-virtual-reality

吉本幸記


千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com

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