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VR教育は「教師の夢」だが、高くつく

2017/06/29 18:41

カナダ・トロントにあるSt. Michael Catholic学校の小学4年生のクラスには、VR教育が導入されている。しかし、同校のVR教育への投資額が年間$2,000に対し、導入した「Google Expeditions」の費用は$15,000だ。

海外メディアCBCNewsは、カナダのVR教育の現状を報じた。

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VR教育は「教師の夢」ではあるが...

カナダ・トロントにあるSt. Michael Catholic学校の小学4年生のクラスには、VR教育が導入されている。

VR教育が導入されたクラスでは、例えばエベレストに関する勉強をする時は、エベレストに関するテキストを読むだけではなく、モバイル型VRヘッドセットを使って「実際に」エベレストを見るのだ。VRヘッドセットを使ってにエベレストを見た生徒は、まるでヘリコプターに乗ってエベレストを見に行っているようだ、という。

海底のサンゴ礁を勉強する時も同様だ。サンゴ礁に関するテキストを読むだけではなく、バーチャルにサンゴ礁を見に行くのだ。こうした体験について、生徒はまるでスキューバダイビングをしているようだ、あるいは潜水艦に乗っているようだ、といって喜ぶ。

VRヘッドセットを使ってバーチャルに世界各地を見学する生徒たちを見るのは、同クラスの教師であるRebekah Henickにとって無上の喜びである。VR教育に関して、同女史は以下のようにコメントしている。

VRを使って生徒たちを普通では決していけない場所に連れて行ってあげることは、まさに教師の夢です。

教室でのRebekah Henick

教室でのRebekah Henick

だがしかし、この「教師の夢」は決して簡単には叶わないものでもある。

同校はVR教育に年間$2,000(約¥225,000)を投資している。ところで、同校が実施しているVR教育プログラム「Google Expeditions」の設備投資には、$15,000(約¥1,7000,000)が必要なのだ。年間投資額の7.5倍に相当する。

以上のような「現実」を前にして、トロントの小学校でGoogle Expeditionsを導入しているのは全体のわずか2%に留まっている。

VR教育は経験の民主化

カナダでVR教育アプリを開発するスタートアップを率いているJosh Maldonadoは、VR教育には多大な影響力があると信じている。同氏は自らの信念を以下のように述べている。

ちょうどインターネットの普及が「情報の民主化」を行ったように、VRは「経験の民主化」を実現するのです。

同氏が言う「経験の民主化」とは、VRを活用すれば誰でも貴重な体験を得ることができることを指しているのだろう。

カナダで活動していた同氏であったが、最近になって活動の拠点をサンフランシスコに移すことを決めた。というのも、「保守的な」カナダの教育界はVR教育におカネを出し渋るからだ。

どうやら一般消費者だけではなく企業や公共機関にとっても、その導入コストの高さからVRの導入には二の足を踏んでしまうのが現実なのだ。

VR教育の可能性

VRの教育への応用は、本メディアでも度々報じているように、豊富な事例がある。コストが高いのは事実ではあるが、教育コンテンツはVRの応用事例として非常に有望なのだ。

歴史を追体験する「Timelooper」

VR教育アプリ「Timelooper」は、「もしも歴史的出来事に立つ合うことができたのなら」という誰もが思うことをVR動画によって実現することを目指したアプリだ。

同教育アプリに収録されているVR動画には、ロンドン大空襲やアメリカ移民局の様子といったものがある。動画を制作するには当たっては、厳密な歴史考証を行っている。

教育研修への導入はわずか1%

企業における教育研修においては、株式会社デジタル・ナレッジが運営するeラーニング戦略研究所が、全国企業の教育研修担当者100名を対象にVRの教育利用の現状と課題についてアンケート調査を実施し、 その結果をまとめた調査報告書を4月7日に公開した。

アンケートの結果からは、「VRを教育研修に導入している」と答えたのはわずか1%だった。その一方で「導入したい」「導入を検討したい」という回答が6割を占め、「今後も導入するつもりはない」17%を大きく上回った。とくに飲食・宿泊、金融、情報通信業、大企業やeラーニング研修を実施している企業において、導入意欲が高い傾向がみられたとレポートでは公表されている(下の画像参照)。

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さらに、VRを研修に導入する際に懸念されることは何か、と尋ねたところ、「VRコンテンツ制作コストの負担」が53%、「初期費用の負担」が45%となり、やはりコストの問題が立ちはだかっていることが浮き彫りとなった(下の動画参照)。

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教育分野に限らず、多くの分野においてコストがVR普及の妨げとなっているのは間違いない。しかし、既存のテクノロジーが普及した歴史を振り返るとわかるように、魅力的なテクノロジーであれば必ずコストが安くなっていくので、VRもいずれコストの問題は克服するのではなかろうか。

カナダのVR教育の現状を報じたCBCNewsの記事
http://www.cbc.ca/news/entertainment/virtual-reality-education-1.4152384

eラーニング戦略研究所が発表した報告書「企業におけるVRの教育利用に関する調査報告書」掲載ページ
https://www.digital-knowledge.co.jp/archives/12204/

吉本幸記


千葉県在住のフリーライター。ITエンジニアとしてスマホアプリの開発等に携わった後、 フリーライターとして独立。VRをはじめとした最新テクノロジーがもつ社会変革の可能 性に注目している。 http://resume21century.blog.fc2.com

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