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VRでのリハビリには脳卒中からの回復に従来のメソッドと同程度の効果がある

2017/11/24 14:39

アバターの身体とユーザの身体が繋がる

消費者向けのVRデバイスが登場したことで、視覚化技術はごく一部の大企業や特別な研究施設でしか利用できないものではなくなっている。一般のクリニックや個人の自宅でVRを使うことも可能になり、恐怖症治療の一環としてVR空間で恐怖の対象に慣れることが効果的なことを示す研究結果も出てきた。

どうやら、VRを使ったリハビリによって身体の機能を回復させることもできるようだ。脳卒中からの回復に関して言えば、その効果は従来のリハビリと同程度だという。

適切なコンテンツが開発されれば、ゲーム感覚で身体を動かしながら身体機能を取り戻すことも可能になるかもしれない。VRによって、リハビリは単調で辛いものから楽しいものへと変化するのだろうか?

VRリハビリの効果

VRでゲームをしながらリハビリができる

VRでゲームをしながらリハビリができる

モチベーションの維持

VRを使ったリハビリの優れた点は、単調になりがちなリハビリに新しい目標をもたらしてくれるところだ。通常のリハビリで患者の目標となるのは「◯◯メートル歩く」「自分でボタンをとめて服を着る」といったことだが、VRゲームを使ったリハビリならばゲームでハイスコアを目指しているうちに自然と身体が動くようになっていくだろう。

患者自身がリハビリに取り組むモチベーションを維持することができれば、その効果も大きくなるはずだ。毎日きちんとリハビリを行えば、その分回復も早くなる。

この利点に着目している企業は既に存在しており、イスラエルのスタートアップ企業VRPhysioなどがVRを使ったリハビリサポート・システムを構築している。現在はVRHealthグループの1製品となったVRPhysioは病院やリハビリ施設で利用されるだけでなく、患者の自宅でも利用可能なVRPhysioホームの開発が進んでいるという。

アプリを使ったリハビリなので、患者が自宅で行っているリハビリの状況を医師や理学療法士がチェックできるのもポイントだ。専門家の指示に従ってVRを使ったリハビリプログラムを進めることで、患者ごとの状況に合わせたリハビリが可能になる。

代替手段としてのVRリハビリ

『Neurology』誌上で発表された研究によれば、VRを使った脳卒中患者のリハビリは従来のリハビリと同程度の効果が得られたという。最新技術を使うことで劇的に改善したという結果ではないが、少なくともこれまでの方法に比べて劣ることはないようだ。

VRを使うことでモチベーションを保てるのならば、従来のリハビリの代わりにVRリハビリプログラムを取り入れるのも有効だと思われる。自宅でVRリハビリを行いつつ、定期的に専門施設を訪れて従来のリハビリメソッドを受けるという形も効果的だろう。

研究の内容

この研究が対象としたのは、120人の脳卒中を経験した患者だ。彼らの平均年齢は62歳で、研究開始の1ヶ月ほど前に脳卒中に見舞われた人々である。

程度の差こそあれ、被験者たちは筋肉が弱ってしまっていた。彼らは1週間に4時間から5時間のトレーニングを4週間に渡って受け、トレーニングの終了時とそれから3ヶ月後に筋力のテストが行われた。

参加者の半数は、一般的な作業療法を受けた人々だ。残りの半数は、個人の状態に合わせてカスタマイズが可能なVRを使ったリハビリを行った。

研究結果

研究の結果、従来のリハビリに取り組んだグループにも、VRを使ったリハビリに取り組んだグループにも、大きな筋力の回復が見られたという。そして、両グループの結果に差はなかった。

論文を発表したデンマークにあるオーフス大学のIrish Brunnerはこの結果について

「患者の好みに応じて、どちらのリハビリ方法も使うことができることを示唆するものだ」

としている。

VRリハビリへの希望

VRリハビリで脳機能が回復する

VRを使ったリハビリが従来の方法と同様に有効であることを示す結果が出ているが、残念ながら今回の調査の範囲では特別回復が早くなるような効果が出ることはなかった。

ただ、今回の実験で使われたVRを使ったリハビリシステムには改善の余地がありそうだ。

没入感のアップ

Brunnerは、この実験で使われたVRシステムが没入型ではない点を指摘している。

スクリーンの映像を見ながらリハビリをするだけであれば、一般的なリハビリと同じ効果しか出ないのも頷ける。VRヘッドセットを使った臨場感あるリハビリプログラムを開発すれば、VRリハビリならではの強みを活かすことになるのではないだろうか。

セッション時間

また、実験のために被験者が規則正しくリハビリプログラムを受講することになった点も結果に影響を与えている可能性がある。

VRゲームを取り入れたリハビリのメリットは患者が楽しみながらリハビリを続けられることだが、ここではどちらのグループも同じ時間のリハビリセッションを受けさせられている。これではモチベーション上昇の効果が現れにくくなるだろう。

一般の患者であれば、気分が乗らなくてリハビリをサボってしまう日もある。自由にプログラムを利用できる環境で比較することで、その差が見えてくるのではないだろうか。

 

VRを使ったリハビリに特別大きな効果があるわけではないが、VRを使わない方法と同じくらいの効果があることを示唆する今回の研究。将来は患者の好みに応じて、ゲーム好きな患者ならばVRを使う方法を選ぶこともできるようになるかもしれない。

 

参照元サイト:The Journal.ie

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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