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VRが脳卒中患者の回復を助ける可能性の研究が進む

2017/10/17 10:14

VRが脳機能を回復させる可能性がある
VRが脳機能を回復させる可能性がある

VRが脳機能を回復させる可能性がある

日本では、医療技術の発展や栄養状態の改善によって平均寿命が伸び続けている。そんな日本で最も死因となる率が高いのはがんだ。次いで心臓病が2位に入り、3番目に脳卒中が挙げられる。

脳卒中は他の二つに比べると死因としての脅威度が低いことになるが、厄介なのは命が助かっても脳のダメージによって後遺症が残る可能性があることだ。特定部位の血管にトラブルが起きることで、身体を動かしにくくなる・動かせなくなることも考えられる。

VRを使って脳卒中そのものを防ぐことはできなくても、後遺症のリハビリにVRが活用できる可能性が指摘されている。

VR空間のキャラクターになりきる

Skyrim

自分自身が冒険している感覚を得られるVR(Skyrimの戦闘シーン)

プレイヤーキャラクターとプレイヤー

VRコンテンツは、他の娯楽と比べてもプレイヤー自身とゲーム内のプレイヤーキャラクターやアバターとの距離が近いことが特徴だ。一人称視点や身体を動かして操作する感覚によって、ゲーム内の身体と自分の身体との境界が曖昧になっていく。

映画や小説でも登場人物に感情移入することはできる。あるいは、憧れのスポーツ選手に自己投影することも可能だろう。しかし、こうしたコンテンツにおける消費者の立場は傍観者でしかない。行動する主体は彼らであって視聴者・読者ではないのだ。

テレビゲームならば、映画と違ってキャラクターを自分の意思で動かすことができる。だが、アナログスティックやボタンを使った操作はあくまでも彼らをコントロールしているだけだ。

VRでは、自分自身が操作キャラクターになったかのような感覚でアバターを操作できる。VR空間ではアバターの身体がそのままユーザの身体となるのだ。この特徴のために、VR空間で操作するアバターの特性によってユーザの行動傾向が変化することまで指摘されているほどだ。

アバターが行動を変える

非VRのテレビゲームでも、操作するキャラクターによって行動が変わることはあるだろう。スーパーヒーローを操作するゲームならば、なるべく登場人物を助けるような選択肢を選ぶプレイヤーが多そうだ。

そうした意識的な変化だけでなく、無意識レベルでも与えられたアバターによってユーザの行動は変化するという。背が高く身体の大きいアバターを操作していると自己効力感を得やすい、子供のアバターを操作していると子供っぽい振る舞いをしやすいといった傾向が現れる。

こうした行動の変化にはユーザ自身の意思によるロールプレイ(演技)的な要素が関係している可能性もあるが、興味深いのはその傾向がVR体験の終了後にも続く点だ。脳が持つ「振る舞い方の癖」をVR体験が変化させているのかもしれない。

脳卒中からの回復

アバターとユーザの身体を繋ぐ

技術がアバターとユーザの身体を繋ぐ

上記のようなVR体験者の行動の変化は、脳の構造が変化したことによって起きると考えられている。脳神経の接続は固定されたものではなく、必要に応じて柔軟に組み替えることのできる可塑性を持っているのだ。

脳神経の回復

脳卒中の後遺症で身体が動かなくなる場合、手や足に問題があるわけではない。身体の各部は正常な状態にも関わらず、脳が正しく身体を動かすための機能や経路が失われてしまうために動かしにくい・動かない状態になる。

脳は使っているうちに自分自身を組み替えることができるため、脳卒中によって身体が上手く動かせなくなってしまった患者もVR空間でバーチャルな身体を動かしているうちに本物の身体を動かせるようになる可能性がある。脳卒中によって使えなくなってしまった部分に新しい細胞が生まれたり、そこを迂回する新たなルートが強化されることがあるのだ。

神経の活動をアバターに伝える

VRを使った脳卒中のリハビリでは、脳波や運動神経に流れる信号、あるいは筋肉から直接読み取れる電気信号を元にアバターを操作する方法が考えられている。たとえ患者が全く身体を動かせない状態だとしても、脳波を検出できればアバターを操作することが可能だ。

実際に身体が動くほど強い電気信号である必要はない。アプリケーションの設定と脳波を読み取る装置の精度によっては、非常に弱い信号であってもアバターの動きに変換できる。

脳が「身体の動かし方を忘れてしまった」ようになっていても、アバターを動かしているうちに回復がみられるかもしれない。フィードバックが無いと脳の働きをコントロールするのは難しいが、VRアバターはそのフィードバックとして働く可能性がある。

未解明の技術

医療の世界でVRを利用しようという動きは盛んになりつつあるが、まだVR技術の効果については分かっていないことが多いのも事実だ。

早期にVR技術と結びついたゲームやエンターテイメントについてさえ、研究が不足している。医療におけるVRの効果やその限界については、参考になる情報が非常に少ない。

南カリフォルニア大学のSook-Lei LiewはVRを使った脳卒中治療のポテンシャルに期待しつつも、過大評価することがないよう慎重に研究を続けているという。

 

参照元サイト:Cnet
参照元サイト:VR Room


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