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VR産業はハードを作るだけでなくソフトを育てる段階に到達している

2017/03/07 18:20

    VRはハードを売るだけでなく、ソフトを充実させる段階に来ている。各メーカーの投資の影で、小規模なインキュベータがデベロッパーコミュニティを築きつつある。

    イベント会場の人々

    新技術の発展と、その技術への期待度合いの変化を表したグラフとして「ガートナーのハイプ・サイクル」と呼ばれるものがある。

    技術が発明されると一気に期待が高まり、一度現実に失望してから徐々に安定していく…というのがこのグラフの簡単な説明だ。まあ、最初に夢を見すぎてがっかりするのはありがちである。やがて技術の実際が理想に追いついてくると、再び期待は高まっていくものだ。

    2016年のガートナーのハイプ・サイクルを見ると、VRはちょうど幻滅の谷と呼ばれる領域を超え、発展していくところに置かれている。実際に2016年から2017年にかけてのVRがどの段階だったのかがはっきりするのは、後から振り返ったときになるだろう。

    Venture Beatに、そんなVRのこれからを論じる記事が掲載された。

    VRのネックはコンテンツ

    2016年6月、東京で行われたスタートアップデモ

    様々な企業が、それぞれに特徴あるVRヘッドセットを販売している。まだ手頃な価格とは言いにくいところもあるが、それでも登場したばかりの頃よりも入手しやすくなっているのは事実だ。専用ヘッドセットの中では後発のPSVRが比較的安価だし、Riftは先日値下げされたばかりだ。Vive本体の価格は据え置きだが、VR対応PCの敷居が下がったことでVRシステム全体の導入コストはかなり軽減されている。

    そんな状況で、VRヘッドセット購入の障壁になっている(少なくとも後押しになっていない)のがコンテンツの物足りなさである。ヘッドセット本体を買ってまで遊びたいと思えるVRコンテンツがなければ、消費者は手を出さない。

    最近になってボリュームのあるタイトルも少しずつ増えてきているが、「プロトタイプとデモしかない」状況ではユーザが増えないのも仕方ないだろう。また、各種ゲームエンジンや支援ソフトウェアのおかげでVRコンテンツ開発の障壁が低くなったことも喜んでばかりはいられない。クオリティの低い、あるいは作りかけのようなコンテンツが増えても業界にとってプラスにはならないからだ。

    最初に触ってみるだけで、ユーザに「もう一度起動しよう」と思ってもらえるアプリが少ないのが最大の問題である。この状況を打開するため、各メーカーがコンテンツ開発を行うデベロッパーへの投資に力を入れている。例えば、Facebookは大規模な投資を行っている。

    スタートアップとしては、Boost VC、Tokyo VR Startups、Seoul VR Startups、UCCVR、HTCのViveXなどもVRコンテンツの開発を支援する企業だ。こうしたインキュベータの存在がリッチなVRコンテンツの開発を進めることに繋がるだろう。

    支援の方法

    Boost VCのオフィス

    大きく四つの方法で、インキュベータはVRコンテンツの開発を支援する。

    不確実性を減らす

    まず、分からないこと・不確実なことを減らす。VRでは、これまでのゲームや動画で当然だった手法が通用しない。UIもこれまでと同じでは使いにくくなってしまう。

    新しいメディアでのコンテンツ制作に当って、分からないことを減らすのは重要だ。ここで不確実なまま開発を進めれば、非常に酔いやすいコンテンツや使いにくくて嫌になるUIが生まれてしまうだろう。

    情報共有

    複数のチームが経験やテクノロジーの知識を共有して開発を進める。上の画像にあるようなオープンなスペースで作業することで、即座にフィードバックを得ることができるので開発の効率化に繋がる。

    もちろん、自分一人では気が付かないような欠点を見つけて修正することもできるはずだ。

    ハードウェアの利用

    VR/ARコンテンツを作るなら、PC上でエミュレーションするだけでなく実機で動作を確認したい。しかし、複数のメーカーが作っているヘッドセットを揃えるのは、体力の無いスタートアップ企業にとってかなりの負担だ。消費者向けの製品があるVRヘッドセットならともかく、HoloLensを用意するのは難しい。

    本体だけでなく、周辺機器も必要だ。追加センサーやトラッキングコントローラーを全て買っていたら、設備投資で開発資金が減っていく。

    そこで、開発を支援するインキュベータが代表してデバイスを購入する。常に実機テストをしているわけではないので、譲り合いながら複数のデベロッパーが利用できる。

    コミュニティの形成

    コンテンツの売上ではライバルになることがあっても、一つのオフィスで一緒に作業をしていれば仲間のようなものだ。インキュベータが媒介となって、デベロッパーとデベロッパー、デベロッパーと出資者といった企業同士の繋がりを形成する。新プロジェクトがここから生まれることもあるだろう。

    面白いコンテンツを作る最大の基盤となるのはやはり人であり、優秀な技術者が集まった活発なコミュニティは支援を行うインキュベータにとっても資産となる。

     

    ヘッドセットを作るメーカーによる自社プラットフォームへの囲い込みと、特定のプラットフォームとの結びつきが弱いインキュベータによる支援はまた異なる部分がある。投じられる資金の規模では前者に及ばなくとも、アイデアとフットワークで戦うことができるはずだ。

    大企業同士の縄張り争いに目が向きがちだが、実際にはこうした小規模なコミュニティこそがVRコンテンツ充実の要となるのかもしれない。世界中で生まれているインキュベータが育てているデベロッパーに注目してみると、ポテンシャルの高いコンテンツを流行の前に発掘できるのではないだろうか。

     

    参照元サイト名:Venture Beat
    URL:http://venturebeat.com/2017/03/04/the-vr-industry-needs-better-content-turns-to-accelerators/

         

         

    ohiwa


    ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。