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VRヘッドセットのメーカーは殺人ゲームへの投資を避けるべき?

2017/11/07 17:05

Arizona Sunshine

ゾンビにヘッドショットを決める(Arizona Sunshine)

テレビゲームのジャンルは豊富にあり、テーマとなるものも様々だ。シミュレーションゲームでも、経営者としてレストランや会社を成長させていくもの、動物を育てるもの、国を発展させて世界の覇者になるものなど幅広い作品が作られている。特定のシリーズしか遊ばないようなゲーマーからあらゆるゲームを楽しむゲーマーまで、プレイヤーとゲームとの付き合い方も様々だ。

それでも比較的多くのゲーマーに好まれるタイトルは存在しており、そうした人気タイトルの多くには「敵と戦って勝つ」要素が含まれている。勝利の方法はゲームによって異なるが、特にメジャーなものは刀や銃を使って文字通り敵を倒す(殺す)ものだ。

VRでも襲ってくるゾンビやエイリアンを倒していくシューティングゲームが多数作られており、実際に高い評価を受けているタイトルも多い。だが、消費者がVRで本当に体験したいと思っているのは血みどろのシューティングゲームなのだろうか?

暴力的ゲームで得られる経験

ゲームを楽しむ

テレビゲームをする理由

一般的に、テレビゲームをするのは楽しむためだ。ゲームをクリアすることは義務ではないのだから、面白くないゲームを嫌々最後までプレイするということは少ないだろう。

ゲームのどの部分を面白いと感じるかは人によって異なり、一つの作品が面白いか面白くないかを評価するにも複数の要素が関係する。

プレイを続けさせるモチベーションとなるのはプレイそのものの楽しさ(敵を倒す、キャラクターが強くなる、操作が上達するといったことによる快感)や先の気になるストーリー、魅力的なキャラクターだろう。逆にテンポの悪さや単調なストーリー、理不尽すぎる難易度設定はプレイヤーの離脱を招く。

VRヘッドセットを売るための投資

VRヘッドセットのメーカーであるFacebook(Oculus)やソニーがVRゲームのデベロッパーに投資するのは、自社のVRデバイスを販売するためだ。多くの消費者が遊びたいと思うVRゲームを作れば、彼らがVRヘッドセットを購入してくれる。

敵を倒す快感の強さで言えば、多くのゲーマーに支持されているのが派手な流血表現のあるシューティングゲームだ。もちろん「暴力的なゲームは嫌い」「落ち着いて遊べるゲームが好き」というプレイヤーもいるが、激しい戦闘を求めるプレイヤーが多いことも事実である。

求めるユーザが存在する以上、VRヘッドセットのメーカーが暴力的なゲームのデベロッパーに投資するのは不思議なことではない。だが、こうしたゲームへの投資は不要ではないかという意見もある。

ユーザがVRに求める経験

VRの優れた特徴は、ユーザの感情移入を促すことだ。ユーザは物語を自分自身の体験として感じることができ、感動したり、知識を得たり、場合によっては恐怖症の改善や自己効力感の向上さえ期待できる。だが、この没入感の高さが良くない方向に働いてしまうこともあり得る。

Oculus Connect 4では、OculusとRespawn Entertainmentとのパートナーシップが発表された。Respawnは『コールオブデューティー』『タイタンフォール』といった人気タイトルを開発したデベロッパーであり、2019年には同社のVRタイトルが登場するという。

RespawnファンのVRユーザにとっては嬉しいニュースだ。そして、彼らがOculus Connect 4で語ったビジョンは次のようなものである。

「VRで戦争を体験するのは、(非VRゲームに比べて)本物の兵士が戦場で体験するのに近い感覚です。

緊張感はより強く、神経症的になるかもしれません。より本能的な恐ろしさ、そして湧き上がる怒りとアドレナリンを感じられるでしょう」

VRはまだ新しい技術であり、一般の消費者に浸透し始めたばかりだ。スリルのあるVRゲームに大きな需要があることは事実としても、消費者への普及を考えたときに求められているのは恐怖や怒りなのだろうか。

Facebookが人々にVRで感じてほしいのは、命を奪い合う戦場の恐ろしさよりもコミュニケーションアプリで友人とやり取りする楽しさなのではないだろうか。

暴力的ゲームがVRの普及を妨げる?

親子の標識

安心して楽しめるVRコンテンツとは?

戦争・人間同士の殺し合いというテーマ

テレビゲームに限らず、実在・架空の戦争をテーマにしたゲームや物語は少なくない。戦争は勝敗を決する方法として分かりやすく、それにまつわる群像劇が消費者の心を動かすからだ。

だが、VRゲームのリアリティを持って戦場を体験することで興奮した状態になってしまうことは考えられる。もちろん全てのゲーマーが暴力事件を起こすわけではないが、感受性の高い子供にそうしたゲームをさせたくないと考える保護者は多いだろう。

現時点で、VRデバイスはまだ子供たちに与えるには高価なおもちゃとなっている。自分用にVRデバイスを購入する大人が購入者の中心であるうちは暴力的なゲームがその売上を牽引してくれるが、より広範囲の消費者にVRを届けたいと考えたときにはそうしたタイトルの多さが障害となるかもしれない。

プラットフォーム運営企業の投資によってVRゲームの大半が暴力的な作品になってしまえば、子供を持つ親たちはVRデバイスを購入することを避けるだろう。

市場への供給

Upload VRに掲載されたのは、メーカーが資金を提供しなくても暴力的なVRゲームを作るデベロッパーはあるという意見だ。

戦争ゲームの需要は高く、もし品質の高い作品が開発できれば人気タイトルとなるかもしれない。VRユーザの増加によってVRゲームの開発で大金を得ることも可能となっているので、メーカーの支援に頼らずとも開発が可能な体力のあるデベロッパーがこうしたゲームの開発に参入しているのだ。

ストアからこうしたデベロッパーを締め出す必要はないが、あえて彼らに資金を提供する必要もないのではないだろうか。ゲームの販売を認めるだけであれば幅広いコンテンツの一つでしかないが、資金を提供していればFacebookやソニーが暴力的ゲームに注力しているとみなされてしまうかもしれない。

消費者が望むコンテンツとは?

一部のコンテンツは、表立って後押ししにくい。

暴力的な戦争ゲームやポルノ映像がその代表的な例だ。どちらもデバイスの命運を左右するだけのインパクトがありながら、嫌う消費者も多い。間違いなく需要はあるのだが、VRデバイスが戦争ゲームやアダルト映像のための道具だと認識されてしまえば業界の発展を妨げるだろう。

独立したサードパーティのタイトルはともかく、プラットフォームの提供企業が開発を支援するコンテンツについては内容を吟味することも必要だろう。家族で安心して遊べるカジュアルゲームや感動的なストーリーのVR映画を中心に据えた方が、業界全体を発展させるためには良いのかもしれない。

プラットフォームを運営する企業には、自社の短期的な利益だけでなくVR業界の将来を考えた投資コンテンツの検討をお願いしたい。

 

参照元サイト:Upload VR
参照元サイト:Venture Beat

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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