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VRが医師と患者に心臓の構造を示す

2017/04/20 17:06

Oculus Riftで心臓の構造を見せる

近代以降の西洋医学では人体の解剖学が基礎として取り入れられており、臓器が動く仕組みが分かったことで「切り貼りして」直せる疾患も多くなった。だが、患者に対して必要な手術を正しく行うためには臓器の構造について詳細な知識が必要となる。

医学生にとって、複雑な心臓の構造を空間的に理解することは難しい。解剖学の教科書や模型でも形は覚えられるが、動きまでは分からない。

生きた人間の心臓の動きを再現するにはVRが最適だ。

VRで心臓の内部を探検する

VRで心臓を操作する

以前、スタンフォード大学で研究されているVR利用の例を三つ取り上げた。STAT Newsではその中の一つ、Stanford Virtual Heartが詳しく紹介されている。

Stanford Virtual Heartの開発はさらに進んでおり、医学生が心臓について学ぶときに利用する、患者に対して現在の状態や手術の内容について説明するときに利用するといった使い方が考えられている。

このアプリでは、ユーザ自身がピーナッツくらいの大きさになってしまったかのような感覚を味わうこともできる。外から心臓の構造を眺めるだけではなく、動いている心臓の内側に入り込むことも可能なのだ。

先天性心疾患で患者の心臓がどうなっているのかを内部から見る経験は、VRなしでは考えられなかったものだ。

スタンフォードで小児心臓病について研究するChristopher Knollは、先週始めてこのアプリケーションを試してみたという。

「血液がどこから来てどこへ行くのかを、これまでにない形で見ることができます。単に理解するのではなく、『見られる』のです」

拡張の計画

既に有用なプログラムではあるが、開発者はさらに拡張することを考えている。

現在スタンフォード大学がこのプログラムで表示できるのは、心室中隔欠損症ともう一つのプロトタイプだけだ。近いうちに、頻度の高い25から30種類の心臓疾患をVR空間に表示できるように対象を拡張することが考えられている。

また、このVRアプリの開発に携わったDavid Axelrodは最終的には成人の心疾患にも対応し、肺や脳といった心臓以外の臓器のモデルも追加したいと語る。

医療の現場における最新技術の利用

医師が説明に用いた手書きの図

医師が説明に用いた手書きの図

人間の身体は長年に渡って同じ構造を保っている。だが、医療現場で用いられる器具は技術の進歩によって日々進化している。

研究の結果によってかつて効果的だとされていた処置が廃れたり、レントゲン検査やエコー検査のような従来では考えられなかったような検査方法が実用化されたりと、進歩を続けている。

現在では、多くのクリニックで上記のような検査を受けることができるし、大病院ではCTやMRIといった装置も用意されている。これらは診断や治療計画の作成に無くてはならない存在となった。

医師・医学生とVR

こうした検査方法がなくなることはないとしても、VRが医師にとって欠かせないツールになる可能性があると考えている専門家もいる。

VRによる人体構造の把握が、循環器を診る医師や手術を行う外科医の助けとなることは十分に考えられる。3Dイメージによって手術の内容を頭に入れておけば、現場に立ち会った学生や研修医も学べることが増えるに違いない。

医学生がVRを使って学ぶようになれば、人体解剖への依存も少なくなると言われている。人体解剖が一切不要になるわけではないが、それ以外の方法があることは歓迎すべきだろう。

患者とVR

現在のStanford  Virtual Heartでは、小児の心臓病がターゲットとなっている。そのため、患者の状態や手術の計画を保護者に対して説明するときのツールとしてVRを利用する。

成人の心臓病についてもこのアプリがカバーするようになれば、患者自身に対して現在の治療を行わなかった場合に予想されるリスクを説明するときにも利用できるようになる。もちろん状態や手術についての説明にも活用可能だ。

解剖学の知識を持たない患者に対して正しく説明するのは、医師にとっても難しい。こうした場面で説明に利用できるツールがあれば、双方にとって助けとなるはずだ。

 

このプログラムは、サンフランシスコに拠点を置くソフトウェア企業のLighthausがスタンフォード大学と共同開発したものだ。AxelrodはLighthausの株主であり、同社へのアドバイスを与えている。また、開発の資金はスタンフォードの小児心臓学部門とOculusから提供されている。

現在は一般的な疾患の状態を見せることしかできないが、Axelrodは5年以内に患者の検査結果に合わせた個別のVRプログラムが作成できるようになるという。そうなれば、患者自身が自分の心臓の状態を把握するのに大いに役立つだろう。

プログラムを残しておけば、患者が次に心臓の疾患で病院に行ったときにも治療記録として参考になるはずだ。

 

参照元サイト名:STAT News
URL:https://www.statnews.com/2017/04/13/virtual-reality-stanford/

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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