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原子炉施設で働くエンジニアを守るVR技術

2017/06/06 15:49

    アメリカでは、冷戦時代に建設された原子炉の廃炉作業にVRが活用されている。VRを使って施設に入る前に内部の構造や設備について把握しておくことで、滞在時間を短縮することが可能だ。VRモデルで作業現場を再現する方法は、多くの労働環境を変えるかもしれない。

    施設内部の様子をVRで知る

    原子力を上手く使えば大きなエネルギーを生み出すことができるが、原子炉は扱いの難しい存在だ。不要になったからといって一般的な建物のように解体するわけにも行かず、きちんと処理しなければ危険な放射性廃棄物が流出する可能性もある。

    アメリカでは、冷戦時代にプルトニウムやトリチウムを生産するために建設された原子炉を廃炉にする作業で3D CADやVRが利用されている。最新の技術を利用することで、複数の図面を読み込んで頭の中に施設内部の立体イメージを組み立てる必要がなくなる。

    事前のブリーフィングで計画を立てることで、危険なエリアに近づく時間を抑えることも可能だ。

    困難な作業

    施設をレーザースキャンするエンジニア

    施設をレーザースキャンし、3Dデータを作成するエンジニア

    オフィスでの座ったまま働くのは単調で退屈で、長時間続ければ健康にも良くないかもしれない。VR技術によってオフィスの環境を変えようと考えるデベロッパーも居るほどだ。

    だが、すぐ近くを高圧電流が通っていたり、作業中に放射線を浴びたりといった危険は無い。現場での作業はときにそうした危険と隣合わせだ。

    冷戦の遺産

    最近建設された原子力発電所と違って、廃炉の対象となったのは1952年に建設された核兵器を生産するための施設だ。幸いにも冷戦で核兵器が使われることはなかったが、当時は米ソ双方が多くの核兵器を保有していた。

    冷戦の集結とともにプルトニウムを生産する必要もなくなった。サウスカロライナ州SRSにある5基の原子炉は、1992年を最後に使われていない。

    しかし、使わないからといって原子炉を放置しておくのも問題だ。手入れがされなければ施設は老朽化していき、大気中や地下水中に汚染物質が流出する危険がある。また、テロリストに悪用されることも考えられる。

    エンジニアたちは、今や役目を失った原子炉を安全に閉鎖しなければならなかった。

    内部の様子が分からない

    最近では、人間には危険な作業をするためにロボットが利用されることもある。だが、全ての作業をロボットに任せることができるわけではない。原子炉の廃炉作業のために、作業員が現場に行く必要があった。

    彼らの作業を困難にしたのは、建物内部の実際の状況を把握できる地図が存在しないことだった。施設が古いこともあり、利用できるのは整理されていない工事用のガイド類ばかりになってしまっていたのだ。

    複数の、不正確な図面を元に建物の立体イメージを組み立てる作業は骨が折れる。そこで彼らが活用したのが3D技術だ。

    3D技術の活用

    危険な機器の扱いを学ぶ

    3D CADと3Dプリント

    エンジニアたちが最初に取り入れたのが3D CADの技術だ。建物の構造を3Dデータとしてまとめることで、ひと目で予定されている作業の計画がイメージできるようになった。

    あわせて、主要施設の3Dプリントモデルも作られた。2Dの図面から立体的な建物や設備をイメージするのは熟練のエンジニアにとっても難しいことであり、この例のようにデータが分散してしまっているとより困難になる。

    この3Dモデルは彼らの安全にも貢献した。事前に十分な計画が立てられるようになったことで施設への滞在時間を最小にすることができ、熱や放射線に晒されることが少なくなったのだ。

    VRで効率化

    いくつもの平面図を見ながら作業の計画を立てるのに比べれば、3Dモデルを使う方法は効率的だ。だが、それでも図面から3Dモデルを作成するのに半年を要している。

    作業チームは、モデリングにかかる時間を短縮することで廃炉作業全体の時間を短縮できると考えた。そのために導入されたのがVR技術だ。

    画面上で3Dモデルを見る方法は、複数の平面図を見比べるよりも理解しやすい。それよりも効果的に施設内部の状況を理解できる方法は、VRを使って3Dで再現された施設の内部を探索することだ。

    VRを使えば、熱や放射線を浴びる危険の無い環境で施設の構造を熟知することも可能になる。

    レーザースキャンとVR

    平面図を元にした3DモデルをVR用のデータにすることも可能だが、その方法ではモデルの作成にかかる時間を短縮できない。そこで使用されたのがレーザースキャナだ。

    実際の建物をレーザースキャンすることで、図面を元に3Dモデルを作成する場合よりも短い時間でモデリングが可能となる。さらに、実物をスキャンしているので精度も高い。3D CADや3Dプリントされたモデルにはなかった細部までVRで再現することが可能だ。

    例えば図面からは分からない標識にも、機器の番号のような作業時に重要となる情報が記されていることがある。

    チームは200回以上のスキャンを行い、VR空間に一つの原子炉と施設を再現した。

     

    構造が分からなくなってしまった原子炉という特殊な施設でなくても、VR空間に建物を再現することで実際の作業を効率化することが可能だ。建築や製造の現場で3DデータからVR化する他に、レーザースキャナを使って坑道のモデリングを行うこともできるだろう。

    作業前のブリーフィングや工場の効率を改善するための会議などは、VRで現場を再現できればより有効になる。効率化と安全性の改善は、雇用者と労働者の双方にとってメリットとなるはずだ。

     

    参照元サイト名:Advantage Business Media
    URL:https://www.rdmag.com/article/2017/06/virtual-reality-decommissioning-nuclear-reactors

    ohiwa


    ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。

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