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がんの治療と予防に使われるバーチャルリアリティ - VR Inside

がんの治療と予防に使われるバーチャルリアリティ

     

Matthew Stoudt

Applied VRのCEO、Matthew Stoudt

VRのリラックスコンテンツを提供することで入院患者のストレスを軽減したり、慢性的な痛みを和らげて鎮痛剤の使用を減らしたりといった効果が期待できる。

これはがんの治療と予防についても同様で、化学療法を受けている患者のストレスにもVRでのリラックスや気分転換が有効なようだ。

VR映像を見ることでがんが治るわけではないが、VRを上手く使って脳を騙すことはがんの治療や予防を変える可能性があるとApplied VRのCEO、Matthew Stoudtは考えている。

VRのリアルさ

バイオハザード7

最近のテレビゲームは画質が向上してリアルになっている。

廃墟に残された料理に蠢く虫や、床に溢れた正体不明の液体の質感は2Dのゲーム画面でも見ていて気分の良いものではなく、VRで見ればなおさらだ。

偽物だということは分かっているし気分が悪ければVRヘッドセットを外してしまえば良いのだが、それでも怖いものは怖い。

VRで飛び降りる

Stoudtは、VRの効果に懐疑的な人のためにちょっとしたテストを提供している。

そのテストで、被験者はVRヘッドセットを付けることになる。VR空間で500フィート(150メートル)の高い崖に連れて行かれた人々は、もう一歩踏み出すように求められる。

ゲームでは高いところから飛び降りるようなシーンも珍しくないが、VRでこれができる人はわずかだ。もちろん中には実行してしまう人もいるが、それはこれまでにテストを受けた3,000人の中でも多くないという。

VRの現実らしさは、単に映像がリアルなテレビゲームとは違うレベルに達しているのだ。

脳を乗っ取る

「被験者は、自分が会議室に居るということを知っている合理的な人々です。それでも、彼らはその一歩を踏み出すことができません。

人間の脳をオーバーライドして、『爬虫類の脳』を乗っ取ることができるのです」

Stoudtは、VRの持つ力をこう表現した。

テストの対象者は、自分がどこに居るか分かっていないわけではない。

「VRヘッドセットを付けるまでは安全な室内に居たのだから崖の上に立っているはずがない」と頭では分かっていても、高いところに居る感覚に足がすくんでしまうのだ。

恐怖や危険に対しては、考えるよりも早く脳の原始的な部分が反応する。

VRが患者の行動を変える

Joe DiMaggio小児病院

Applied VRの製品を取り入れるJoe DiMaggio小児病院

小児病院での利用

利用方法の一例として、Applied VRのVRコンテンツは小児がんで化学療法を受ける子供たちにも使われている。

がんの化学療法では週に2回、3回と頻繁に病院を訪れてベッドで治療を受けることになる。遊びたい子供たちにとって点滴を繋がれて自由に移動することもできない待ち時間は苦痛だが、VRが彼らの暇を潰してくれる。

VRコンテンツで遊んでいる間に治療が終わるなら、病院に行くのもこれまでより嫌な予定ではなくなるはずだ。

習慣を変えるVR

もちろん、VRは子供だけでなく大人にも効果的だ。VR技術は不安を軽減するだけでなく、患者の意識改革を行ってより健康的なライフスタイルを取り入れるためにも利用できるかもしれない。

喫煙が身体に良くないということはタバコのパッケージにも書かれているが、タバコの煙に含まれる成分がどのようにして身体に悪影響を及ぼすのかを詳しく知っている患者は多くない。

食道がんや肺がんの患者がVRコンテンツを使い、タバコを吸うことで身体に起きる反応を詳しく学べば禁煙のモチベーションを高められる可能性がある。

この方法は、低コストで実行できるのも特徴だ。

Applied VRのVRコンテンツはスマートフォンを使ったモバイルVRデバイスで再生できるので、病院や患者に大きな金銭的負担を強いることはない。

病院がVRを使った生活指導を取り入れれば、生活習慣によって起きる病気を減らすことができそうだ。

習慣を変えたVR

Applied VRは既に50の病院や医療機関で使用されており、過去の試験ではStoudtが言うように患者の意識を変えることができると確認されている。

同社が複数の機関と協力して行った実験では、約70人の高血圧の患者が対象となった。

患者は、VRを使って過剰な塩分摂取が心臓と欠陥にどのように影響を与えるのか、そして高血圧をもたらすのかを学んだ。

試験の結果、患者の血圧は全体として7ポイント降下したという。

 

医師が手術のシミュレーションや患者とのコミュニケーションの練習にVRを使うこともあれば、患者をリラックスさせるための道具としてVRを使うように指示することもある。

今回紹介された例のように病気について知る学習ツールとしての用途もあり、医療分野におけるVRの利用は技術の発展とともに拡大していきそうだ。

また、VRデバイスの価格を抑えることが医療機関での採用を進めるためにも重要になるだろう。

 

参照元サイト名:MedCity News
URL:http://medcitynews.com/2017/08/virtual-reality-role-play-cancer-treatment-prevention/

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ohiwa

Writer: ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。