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VRはメンタルヘルスを維持する役に立つか

2017/02/09 17:52

精神疾患の治療にVRが利用できる可能性について、研究が進められている。効果を示すデータも揃いつつあり、既にVRを治療に取り入れている施設も存在する。

ヘッドセットを付けた人物

PC & Tech Authorityがメンタルヘルスの問題に対するVRを用いたアプローチについて取り上げた。

現代人とメンタルヘルス

精神疾患と診断される患者の数は過去数十年で大幅に増えている。

WHO(世界保健機関)によると、うつ病と不安障害で悩む人は1990年に4億1,600万人だった。それが2013年には1.5倍の6億1,500万人にまで膨れ上がった。

必要とされる医療費が増えている一方で、精神疾患や精神科に対する古くて誤った認識を持っているために受診できずにいる人も居る。

日本の状況

日本では様々な啓発運動でメンタルヘルスへの関心が高まったこともあり、通院する患者が多くなったようだ。自殺予防キャンペーンなどの影響が大きいかもしれない。

また、日本は諸外国と比べても向精神薬の処方が多いという。カウンセリングや認知行動療法よりも、投薬治療への依存度が高いとも言えるだろう。

VRによる治療が有効となれば、多すぎる投薬を減らす一助となるかもしれない。

南カリフォルニア大学の取り組み

Skip Rizzo博士とBravemindシステム

Skip Rizzo博士とBravemind VRシステム。クレジット:Branimir Kvartuc

南カリフォルニア大学では、精神疾患に苦しむ人々のためにBravemindというアプリケーションを開発している。Bravemindは、VRを使って伝統的な曝露療法を行うアプリだ。

患者が過去に経験してトラウマの原因となった、あるいは苦手としている環境をVRで再現し、少しずつそれに慣らしていくのが目的となる。VRを使わずに曝露療法を行うのは、難しいか、ときに不可能だ。しかし、VRであればPTSD患者のために大災害や戦争を再現することもできる。

研究中ではあるが、VRがしばしば求められるニーズに応えるツールであることが明らかになってきているという。PTSD、うつ病、摂食障害の治療や各種リハビリへの利用、疼痛の管理といった医療に関わる幅広い分野でVRの有効性が示されつつある。

また、VR機器が普及しつつあることも注目に値するという。まだ医療の専門家は新しい技術を使いこなしていない。一方で、VR機器は高性能で低価格になっていくだろう。

数年後には、VRデバイスを所有しているのが普通になるかもしれない。そうなれば、医療関係者もさらにVRの有用性を活かす取り組みを進めるようになるはずだ。

The Behavioral Associatesからの声

The Behavioral Associatesによる治療イメージ

クレジット:The Behavioral Associates

ニューヨークの外来治療施設The Behavioral Associatesでは、各種恐怖症、うつ病、不安障害の治療にVRを活用している。

VRの出現は精神保健の世界にとって大きな変化だという。VRを使えば、これまでのように患者自身が恐怖や不安を覚える状況を想像する必要がないからだ。内容も自由にコントロールできるので、無理のない範囲で少しずつ慣れていける。

The Behavioral Associatesのソーシャルワーカーは、
「VRは、曝露療法の標準として考えられるべきです。その効果は研究によって裏付けられていますし、登場時は容易に手に入らなかったデバイスも安価になりました。600ドルのSamsung Gear VRと同社のスマートフォンであれば、どこの開業医でも導入できるでしょう」
とVRによる治療に積極的だ。

ただ、VRを用いた治療には二つの問題もあるという。

一つは、医療者の側がVR治療を学んでいないことだ。新しい機器の操作技術や治療を学ぶのは、簡単ではないかもしれない。

もう一つは、患者が治療の効果に疑問を持つことだ。VR機器で病気を治せるというイメージはまだ薄いだろう。もっとも、患者がVR機器に治療のイメージを持たないのは悪いことばかりでもない。VRトレーニングならば、患者の抵抗感が少ないという利点もあるのだ。

医療用VRへの期待

まだ登場したばかりの方法なので、VRによる治療を積極的に行っている医療機関は少ない。しかし研究は進められており、効果を裏付けるデータも出てきているようだ。現在は「リラックス」程度のコンテンツしかないが、本格的な精神疾患の治療がVRで行えるようになる日は近そうだ。

記事中で取り上げたのはいずれもアメリカの大学と施設だったが、日本でも最新の治療法が導入されることを期待したい。

 

参照元サイト名:PC & Tech Authority
URL:http://www.pcauthority.com.au/News/450236,can-vr-help-cure-mental-health-issues.aspx

     

     

ohiwa


ライター兼システムエンジニア。VR・ARには、「SFっぽい!」というシンプルな理由で興味を持つ。仕事以外ではボードゲームやTRPGで遊び、本を読んで花を育てるアナログ人間。万年筆と着物・和菓子が好き。